腎臓サポートドッグフードの比較〔管理栄養士監修〕

目次:
1、ロイヤルカナン 腎臓サポートドッグフード
2、ヒルズ プリスクリプション・ダイエットドッグフード
3、ハッピードッグ スプリーム・ダイエット サノN 腎臓ケアドッグフード
4、ナチュラルハーベスト キドニア 腎臓ケアドッグフード

犬の腎臓サポートを目的としたドッグフードは数多く販売されていますが、一言で腎臓サポート用ドッグフードといっても、個々の犬の(腎臓の)状態によってたんぱく質やナトリウム、リンの含有量理想目安は異なります。

今回は、腎臓機能に大きく関わる栄養成分別の含有量を比較しながら、腎臓サポート用ドッグフードについてご紹介致します。なお、腎不全や腎臓病の犬のドッグフード選びの基本については、事前に【犬の腎不全における食事管理】をご確認ください。

1、ロイヤルカナンの腎臓サポートドッグフード

ロイヤルカナンの腎臓サポートドッグフードは、慢性腎臓病の犬の腎臓機能をサポートするために作られた特別療法食です。なお、「特別療法食」とは、個々の犬の病状に応じた食事であり、獣医師の判断のもと与えるドッグフードです。

1-1、ロイヤルカナンの腎臓サポートドッグフードの特徴

ロイヤルカナンの腎臓サポートドッグフードは、腎臓病によって起こりうるタンパク尿や尿毒症に配慮し、消化性の高いたんぱく質を配合。腎臓機能に障害を与える病気の改善や機能サポートを目的としたドッグフードです。

その他、腎臓病で犬に食欲低下がみられる場合の嗜好性にも配慮されており、犬が好む香りで食欲を上げるよう工夫されています。その他、動物性油脂や家禽類が配合されているため、アレルギーがある犬の場合は獣医師にアレルゲンについても事前に相談してから与えましょう。

1-2、ロイヤルカナンの腎臓サポートドッグフードの価格目安

3㎏ 5940円

1-3、ロイヤルカナンの腎臓サポートドッグフードの栄養素別含有量

たんぱく質:12.0 %以上
リンの含有量:0.05g(100kcalあたり)
ナトリウムの含有量:0.09g(100kcalあたり)
メガ3脂肪酸:明記なし


2、ヒルズのプリスクリプション・ダイエット ドッグフード k/d ケイディー チキン

ヒルズのプリスクリプション・ダイエット 犬用 k/d ケイディーは、栄養学者と獣医師が開発したドッグフードで、リンやナトリウムが調整されています。ロイヤルカナン同様、犬の腎臓機能をサポートするための特別療法食です。

2-1、ヒルズのプリスクリプション・ダイエット ドッグフード k/dの特徴

ヒルズの腎臓サポート用ドッグフードは、リンの調整やナトリウム含有量の低減、腎臓サポートに役立つオメガ3脂肪酸配合に重点をおいてつくられています。

その他、犬の腎臓に負担をかけにくいよう、たんぱく質も調整。高レベルのL-カルニチンも配合されているのが特徴です。チキンが配合されているので、アレルギーがある場合は獣医師に事前に相談しましょう。

2-2、ヒルズのプリスクリプション・ダイエット ドッグフード k/dの価格目安

3㎏ 4714円

2-3、ヒルズ プリスクリプション・ダイエット ドッグフード k/dの栄養素別含有量

たんぱく質:11.5%以上
リンの含有量:0.2%
ナトリウムの含有量:0.19%
オメガ3脂肪酸:含む(1.12%)


3、ハッピードッグのスプリーム・ダイエット サノN 腎臓ケアドッグフード

サノNのドッグフードは、人間が食べる食品レベルの高品質な原材料を使用しているのが特徴で、良質なたんぱく質を配合。化学合成添加物を使用しないなど、原材料にこだわりがあるドッグフードです。たんぱく質は腎臓に負担がかかりにくいよう量が調整されています。

3-1、ハッピードッグ スプリーム・ダイエット サノN 腎臓ケア ドッグフードの特徴

たんぱく質量が調整されていることはもちろん、たんぱく質の質にもこだわっているドッグフードです。その他、カルシウムとリンのバランスにも配慮されている犬の腎臓機能サポートを目指した療法食です。

腎不全の進行に関与するリンに関しては含有量が大幅にカットされており、慢性腎臓病にも配慮して塩分量がカットされています。注意点としては、原材料にトウモロコシや牛脂、ミートミールなどが配合されているということで、アレルギーがある場合はアレルギーに関しても獣医師に相談してから与えましょう。

3-2、ハッピードッグのスプリーム・ダイエット サノN 腎臓ケアドッグフードの価格目安

1㎏ 2420円

3-3、ハッピードッグ スプリーム・ダイエットの腎臓サポートドッグフードの栄養素別含有量

たんぱく質: 12.5 %
リンの含有量:0.40 %
ナトリウムの含有量:ナトリウム  0.10 %
オメガ3脂肪酸:明記なし

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

最大450円OFFクーポン★ハッピードッグ[HAPPY DOG] スプリーム サ…
価格:2420円(税込、送料無料) (2020/9/11時点)


4、ナチュラルハーベストの キドニア 腎臓ケア ドッグフード

ナチュラルハーベストのキドニア腎臓ケアドッグフードは、既に腎臓機能が低下している犬や腎臓に何かしらのトラブルを抱えた犬のための療法食で、内臓機能サポートに効果的です。

4-1、ナチュラルハーベスト (療法食) キドニア 腎臓ケア ドッグフードの特徴

獣医師と臨床栄養学の研究者である獣医師が共同開発したドッグフードです。主原料が白米であるため、下痢や軟便など消化器官に問題がある犬の場合は注意が必要。

腎不全や腎臓病による尿トラブルに配慮されており、腸内の善玉菌を増やすための「プレバイオティクス」や体内の老廃物をスムーズに排出するための「ゼオライト・キチンキトサン」が配合されているのが特徴です。

4-2、ナチュラルハーベスト (療法食) キドニア 腎臓ケア ドッグフードの価格目安

1.36㎏ 2970円

4-3、ナチュラルハーベスト (療法食) キドニア 腎臓ケアドッグフードの栄養素別含有量

たんぱく質:15.0%以上
リンの含有量:0.297%
ナトリウムの含有量:0.108%
オメガ3脂肪酸
EPA豊富な魚油やトルラ酵母、タウリン、メチオニンなどを配合


今回は、腎不全や腎臓病など、何かしらの病気が原因で腎臓機能に問題が生じている犬のためのドッグフードについてご紹介致しました。

【犬の腎不全における食事管理】でもご紹介させていただきましたが、一言で「腎臓機能が低下している」といっても病気の進行度合いや愛犬の状況によって適したドッグフードは異なります。必ず定期検査を行い、獣医師の指示に従って愛犬に適したドッグフードを与えましょう。


WRITER Profile

記事作成者:  大谷 幸代

ペット食育士や愛玩動物飼養管理士、トリマーなど多数のペット資格を保有。国内最大手のペット関連企業にてプロジェクトリーダーとして活躍。


記事監修・編集者:  望月 紗貴

犬たちの幸せ(=飼い主の意識の向上)を目的とし情報提供サイトを開設。犬の管理栄養士や看護師、介護士資格など保有。他社の記事監修・作成も多数請け負う。

犬の腎不全における食事管理〔管理栄養士解説〕

目次:
1、犬の腎不全と腎臓病
2、腎不全の犬の食事管理
3、腎不全の犬の食事管理
4、食欲が低下している場合の対処

犬の腎不全や腎臓病で悩む飼い主さんが多くいますが、犬の腎不全においては血液検査で早期に発見することが難しく、病気に気がついたときには既に食事管理が必要になっているケースが多いのが特徴です。今回は慢性腎不全の食事管理のポイントを中心にご紹介致しますので、愛犬の手作りご飯やドッグフード選びで参考にしてみてください。

なお、ドッグフード選びで悩んでいる方は【腎臓サポートドッグフードの比較】記事で腎臓に問題がある犬のためのドッグフード比較を行っておりますので、ご確認ください。


1、犬の腎不全と腎臓病

腎不全は何かしらの原因で腎機能が低下した状態を意味し、一般的には腎臓機能の70~75%程度が失われた段階で腎不全(高窒素血症)と呼ばれます。腎不全の犬に関しては、通常尿で排出されるべき不要な老廃物が体外に排出されなくなってしまい体の中に蓄積しやすくなります。

それに対して、腎臓病の犬は腎臓自体の病気であり、腎臓病であっても腎臓機能の70~75%以上が失われた状態でない限りは腎不全とは呼びません。そのため、犬の場合は腎不全になると血液検査でBUN(血中尿素窒素)が上昇しますが、腎臓病の犬であっても70%以上の腎臓機能が喪失されないと血液検査結果で発見できないということになります。

最近では、慢性腎臓病の早期発見のために IDEXX SDMAと呼ばれる検査を院内でできる動物病院も増えたので、手作りご飯やドッグフード選びの際は愛犬の腎機能評価のために血液検査(クレアチニンやBUN、リン)と尿検査(尿比重)に合わせて、SDMA検査も行うと尚良いでしょう。

2、腎不全の犬の食事管理

愛犬が腎不全になってしまった場合は、必ず獣医師に相談して腎臓に負担がかかりにくい食事管理を行いましょう。


2-1、まずは獣医師に相談

腎臓病や何かしらの原因によって慢性腎不全が生じている犬の場合、動物病院の治療に合わせて毎日の食事管理が大切になります。市販でも慢性腎臓病の療法食が販売されていますが、はじめは獣医師に療法食について相談して、愛犬の状況にあったものを処方してもらうと安心です。

2-2、腎不全のステージと食事管理

腎不全のステージは一般的に1~4の4つあり、ステージ1の場合であっても食事管理が大切。ステージ2(クレアチニン値が1.4~2.0㎎/dL)からステージ3(クレアチニン値が2.1~5.0㎎/dL)以上の場合(数値が2.0㎎/dL以上になってしまったら)必ず食事管理を徹底しなければいけません。

腎不全の場合、定期的に健康診断を行っていても、一般的な血液検査結果では病気が進行するまで分からないことが殆どですので、発見したときには既に食事管理が必須になるケースが多いのが特徴です。また、ステージ1~2では臨時症状がみられないことが多い(症状があっても徐々に進行する)ので、飼い主さんが病気に気がつくのが遅くなってしまいます。

3、腎不全の犬の食事管理|6つのポイント

3-1、低タンパク質の食事

慢性腎不全の犬の場合は、低タンパク質な食事が基本です。犬がタンパク質を食事で摂取した場合、腎臓はタンパク質に含まれる窒素化合物(老廃物)である尿素をろ過しますが、この過程で起こる腎臓への負担を軽減するためにタンパク質の制限が必要になります。

また、タンパク質に含まれる窒素化合物は慢性腎不全の犬においては尿毒症リスクを高めることから、食事で制限することによって老廃物が体内に蓄積しにくい環境をつくります。すでに尿毒症の犬の場合は、タンパク質を制限することによって嘔吐や下痢症状の軽減に役立つとも考えられています。

当たり前のことですが、制限はするもののタンパク質は慢性腎不全の犬にとっても重要なエネルギー源です。単純に制限するだけでなく、体重の大幅な減少や低アルブミン血症、貧血症状を引き起こさないように良質な動物性タンパク質を使用しているドッグフードを選ぶことが大切です。ちなみに、手作りご飯を与える場合は良質な赤身肉などを使用したり、リンの少ない肉や魚を調べて利用したりするなどの工夫が必要です。

ドッグフードのタンパク質量について考える場合、慢性腎不全であれば14~20%DM(乾物量)が一般的に推奨されていますが、腎機能の低下に応じて食事中のタンパク質の制限値を考えるため、検査結果をもとに獣医師に相談して決めましょう。海外の人気ドッグフードは全体的に食事に含まれるタンパク質量基準が高いので、慢性腎不全の犬については十分注意が必要です。


3-2、脂肪が多めの食事

腎不全の犬の場合、尿毒症性の悪液質によって食事で摂取した栄養素が正常に代謝されなくなることがあります。それに加えて重要なエネルギー源であるタンパク質を食事で制限しなければいけないので、犬の体に十分なエネルギーを補給するために高エネルギー、高脂質の食事を心がけます。

手作りご飯の場合は、タンパク質を制限しながらも脂質の多い肉や魚を使用することをおすすめしますが、いずれにせよ1回の食事量を減らして食事回数を3回以上に変更するなど、内容だけでなく食事の与え方にも配慮する必要があります。

3-3、リンの制限

腎不全の犬用療法食はリンが制限されていますが、これは慢性腎不全の進行を遅らせるためです。リンが多い食事は、腎臓にカルシウム塩が沈着させることから腎不全を進行させる原因になると考えられています。ドッグフードであればリン0.15~0.3 DM(乾物量)の範囲を目安にラベルを確認して選ぶとよいでしょう。

一概に腎臓ケア用ドッグフードといってもリンなどの含有量は異なりますので、ラベルに詳細が明記されていない場合はメーカーに問合せて事前に確認することをおすすめします。手作りご飯の場合は、玄米を中心にリンの多い食材の使用は避けましょう。同じタンパク質量の食材であっても、食材中のリンの量に差が生じるため、手作りご飯でタンパク質源の食材を選ぶときはリンが少ないものを選ぶことをおすすめします。

3-4、ナトリウムの微調整

多くのインターネットで腎不全の犬のナトリウム制限について紹介されていますが、ナトリウムに関しては特に注意が必要です。犬の体の脱水状態や血清Na濃度を検査で確認しながら、都度獣医師に相談して調整することをおすすめします。

ナトリウムを食事で制限するのは、重度の腎不全の犬における高血圧や高カリウム血症の回避などが主な理由ですが、状況によってはナトリウム量を制限しすぎることにより細胞外液量が減少。それによって脱水症状が引き起こされやすくなるので、腎不全の度合いによって都度獣医師にナトリウム制限の必要性や制限レベルなどを確認することをおすすめします。

ただし、いずれにせよ塩分量の多いおやつを犬に与えたり、手作りご飯で塩分量が極端に多い食材を使用したりしないよう注意しましょう。

3-5、オメガ3脂肪酸を取り入れる

オメガ3脂肪酸は健康体の犬であっても食事に取り入れることをおすすめする成分ですが、慢性腎不全の犬の場合は腎臓内の炎症緩和や高血圧軽減のために、EPAやα-リノレン酸が有効です。ドッグフードを与えている場合は犬用サプリメントを活用するのがおすすめ。手作りご飯の場合はサプリメントの代わりに青魚などを取り入れるのも良いでしょう。


3-6、抗酸化物質を取り入れる

抗酸化作用がある食材は、主にβカロテンやビタミンC、ビタミンEなどの成分です。愛犬の手作りご飯で役立つ抗酸化作用が期待できるに関しては、【おすすめ食材(2)】をご確認ください。また、最近のドッグフードは抗酸化作用がある成分を多めに含んでいるものがあります。

サプリメントを使用する際は特定の成分が過剰にならないよう注意しましょう。また、慢性腎不全の犬の場合、抗酸化作用が期待できる食材が腎臓に存在する細胞を保護。腎不全によって生じる症状を軽減するために効果を示すことがあります。

4、腎不全で食欲が低下している場合の対処

慢性腎不全を発症している犬の場合、ガスとリンと呼ばれるホルモンの血中濃度が高まることで胃炎が引き起こされやすく、犬の食欲が低下することが多くあります。慢性腎不全で食欲が安定しない場合は、早めに獣医師に相談して胃酸の分泌を制御するための薬など、何かしらの食欲改善に効果的な薬(治療)について考えるのも一つの選択肢です。

5、まとめ

今回は、腎臓病の犬の食事管理についてご紹介致しました。ドッグフード選びで悩んでいる方は【腎臓サポートドッグフードの比較】記事で腎臓に問題がある犬のためのドッグフード比較を行っておりますのでご確認ください。


参考文献:
・株式会社緑書房,犬と猫の栄養学,奈良なぎさ,2016.
・阿部又信,臨床栄養学―獣医学教育モデル・コア・カリキュラム,インターズー,2015.
・阿部又信,動物看護のための小動物栄養学(改訂版) 日本小動物獣医師会,ファームプレス,2003.
・動物臨床医学研究所 山根義久,イヌ+ネコ家庭動物の医学大百科,パイインタ-ナショナル,2012.
・田中茂男,犬の医学,時事通信社,2011.


WRITER Profile

記事作成者:  望月 紗貴
飼い主の意識の向上(=犬たちの幸せ)を目的とし情報提供サイトを開設。犬の管理栄養士、老犬介護士、ペット看護師を中心に多数ペット資格を保有。他社の記事監修・作成も数多く請け負う。

老犬の食事|切り替えるタイミングや注意点〔管理栄養士監修〕

目次:
1、何歳から老犬の食事に切り替える?
2、老犬の食事で注意したいこと
3、腎臓病(腎不全)の老犬の食事
4、それぞれの老犬に適した食事を!

老犬の食事に切り替えるタイミングについては、悩む飼い主さんも多いのではないでしょうか?
最近では老犬用の市販のドッグフードの種類も増えましたが、老犬用ドッグフードに「7才~」というように年齢が表記されているものを多く見かけ大変危険だと感じております。一概に老犬と言っても健康状態や運動量低下の有無は犬によって異なり、ましてや老犬年齢さえも犬によって大きく差が生じます。

今回は、老犬の食事に切り替えるタイミングや注意したいことを中心にご紹介致します。

1、老犬の食事に切り替えるタイミング

1-1、7才から老犬の食事に切り替える?

老犬と一言でいっても犬種によって老犬期が始まるライフステージは異なり、たとえ同じ犬種であっても生活環境や遺伝子的な背景から多かれ少なかれ個体差が生じるのが特徴です。基本的に犬は10才~(大型犬は8才~)が老犬であると考えられていますが、ペットフード業界では老犬用のドッグフードを「7才以上」と表記することも多くあります。

専門家によっても老犬年齢は見解が異なり、老犬になる年齢に関して個体差が大きい犬にとってはその定義はあまりに曖昧。そのため、老犬の食事に切り替えるタイミングは犬によって大きな差が生じます。

1-2、犬種平均寿命の75%を目安

老犬の食事について考えるときに、犬種別の平均寿命を調べてその年齢の75%を老犬年齢の目安にするという方法もあります。この場合も、愛犬の運動量が変わっておらず老犬特有の病気などの発症も見られない場合、大幅に食事内容を変更する必要はありません。しかし、関節の健康維持を中心に老化予防のために(※1)機能性成分を食事に取り入れる際、この老犬目安年齢は大いに役立ちます。

愛犬の老化予防を考えている飼い主さんは、犬種別の平均年齢から老犬年齢目安を割り出して、愛犬に老化症状がみられる前に対策を行うと良いでしょう。

(※1)機能性成分|基本的には犬の生命活動に必須ではないが、健康維持を目的とした機能的効果が期待される成分

【犬の食事管理の記事一覧】

1-3、愛犬の様子を見て切り替える

老犬の食事に変更するタイミングは、愛犬の様子を見ながら考慮するのが一番です。ときどき7才を超えた頃から老犬用の低カロリードッグフード・低タンパク質ドッグフードに切り替える飼い主さんを見かけますが、運動量に変化が見られない老犬にこのようなドッグフードを与えるのは危険です。

愛犬に老化のサインが見られたら老犬用のドッグフードや手作りご飯に切り替えましょう。

1-4、こんな変化が見られたら?

運動量の低下をはじめとし老衰症状が見られる・老犬に多い病気を発症するなどの変化がある場合は、老犬用の食事に切り替えましょう。

老化症状はゆっくりと進行するものも多く、飼い主さんが愛犬の変化や病気の兆候に気づきにくいので注意が必要です。また、病気の発症によってドライフードや手作りご飯などの食事を変更する場合、獣医師に相談してから愛犬に適した食事に切り替える必要があります。

・老化症状|睡眠時間が増える 運動量が低下する 食欲が低下する 食べても痩せる 白い被毛が増える 呼びかけに反応しない 口臭が目立つ 爪の伸びが速い 夜泣き 昼夜逆転 多飲多尿など
・老犬に多い病気|四肢・関節の病気 認知症 腎不全 すい臓炎 糖尿病 白内障 悪性腫瘍など

2、老犬の食事で注意したいこと

2-1、エネルギー量に注意する

運動量が低下している老犬の場合は基礎代謝が同時に低下します。そのことから、体に必要なエネルギー量(エネルギー要求量)が適切な運動をしていた成犬期と比較するとおおよそ20~30%程度減少するといわれています。この数値は老犬の状態によって多少異なりますが、いずれにせよ運動量が低下している犬の場合は過度なエネルギーを食事に含めないよう注意が必要です。

エネルギーを供給するための栄養素としては、炭水化物、脂肪、蛋白質の3つですが、老犬の食事に切り替える場合はこれら3つのうち、炭水化物と脂肪が調整されたものを選ぶと良いでしょう。

2-2、炭水化物の少ない食事

エネルギー量に配慮された老犬の食事に切り替える場合、単純にカロリーが低いものを選ぶのではなく、炭水化物の含有量が少ないものを選びましょう。手作り食の場合は、同じエネルギー量であるならば米類やイモ類などを使用せず、代わりに犬の消化能力に適した動物性タンパク質を与えることをおすすめします。

炭水化物に関しては犬の体への必要性が議論されることもありますが、エネルギー要求量が低下している犬の場合は極力炭水化物を使用していない(含有量が少ない)ドッグフードを選びましょう。犬のライフステージに関係なく、炭水化物の多い食事は犬の消化器官に負担をかけやすく肥満の原因にもなり得ます。

2-3、タンパク質は老犬にも大切

多くの老犬用ドッグフードで、動物性タンパク質量を大幅に減らしているのを見かけますが、運動量が低下した老犬であっても動物性タンパク質は重要な栄養素です。タンパク質はアミノ酸が多数結合した化合物で、犬の臓器や筋肉を中心に体を構成する上で大切です。

中でもアミノ酸は犬の骨格筋を形成するために重要な栄養素で、関節をまたぎ骨格につくことで体を支えたりしています。老犬の場合、運動量低下によって肢・関節の力が弱くなる傾向にあるため、適切な動物性タンパク質で骨格筋の消失を防ぐ必要があります。その他、アミノ酸は病気と闘う上でも大きな役割を果たします。免疫力が低下しやすい・老衰によって病気を発症しやすい老犬だからこそ、適切・良質な動物性タンパク質を食事に含めましょう。

2-4、消化吸収性に優れた食事

免疫力の向上を目的とし、老犬は特に消化吸収性に優れた食事に配慮する必要があります。犬の腸には免疫細胞が多数集まっており、腸を健康に維持するということは免疫力を上げるために役立ちます。老犬は免疫力低下によって病気と闘う力・対抗する力が衰えやすいので、ドライフードであれば腸内環境の健康維持に役立つ成分が含まれているものや良質な動物性タンパク質が豊富に含まれているものを選びましょう。

手作りご飯を与えている場合は、適度な食物繊維に加えて良質な生肉や魚を使用するなど消化吸収性に優れた食材を取り入れる必要があります。ヤギミルクやヨーグルトを少量活用するのも良いでしょう。

2-5、老犬の食事には機能性成分を追加

老犬の場合は、食事にサプリメントを始めとした機能性成分を追加することをおすすめします。犬も人間同様に老衰によって体の様々な機能に衰えが生じ、病気も発症しやすくなります。犬種ごと発症しやすい病気や体の構造上かかりやすい病気などに配慮して、サプリメントを活用するなど機能性成分を老犬の食事に取り入れることをおすすめします。

我が家の愛犬の場合(ゴールデンレトリバー6才4ヶ月)、股関節形成不全や悪性腫瘍が心配ですので股関節の健康維持に役立つサプリメントを活用。食事には免疫力を維持・向上するためのキノコ類(βグルカン)やブロッコリースプラウトなどを取り入れるようにしています。

3、腎臓病(腎不全)の老犬の食事

老犬の食事に動物性タンパク質が重要であると説明しましたが、腎臓病を発症している老犬や腎臓の機能低下(腎不全)がみられる老犬の場合はタンパク質の制限が必要です。腎臓病の犬用療法食ではタンパク質がカットされており、(※2)AAFCOの成犬に必要なタンパク質量を参考に考えると、腎臓の機能低下がみられる場合の療法食(制限食)としてはタンパク質量14~15%(※3)DMが目安です。
ちなみにAAFCOでは老犬に対する栄養基準を設定していませんが、一般的には腎臓に問題がない老犬の総合栄誉食基準としてはタンパク質19~22%DMを目安にすると良いでしょう。

老犬の場合は慢性の腎臓病が非常に多く、腎臓に負担がかかりにくい低タンパク質でナトリウムとリンが制限された療法食がおすすめです。手作りご飯のタンパク質源としては、新鮮な卵や赤身などの良質なものを選ぶと良いでしょう。その他、腎臓に問題がある犬に関しては、事前に獣医師に食事管理について相談して定期的に検査。検査結果をもとに健康状態を確認しながら食事内容を調整するのが一番です。

(※2)AAFCO(米国飼料検査官協会)|ペットフードの栄養基準・ラベル表示基準を制定している団体
(※3)DM|乾物量(栄養濃度を比較する上で乾燥させて水を除いた後の値)

4、それぞれの老犬に適した食事を!

今回は老犬の食事について、切り替えるタイミングや食事のポイント、腎臓に問題が生じている老犬の食事についてご紹介致しましたが、一言で老犬といっても適した食事は犬によって異なります。

老犬の食事管理で一番大切なことは、年齢や犬種、ドッグフードの品質を基準に食事を選ぶのではなく、その犬に適した食事であるか否かです。愛犬の体に合った高品質なドッグフードを与えることができるのが理想ではありますが、その前に定期的な健康診断や獣医師のアドバイスをもとに愛犬の体の状態をしっかりと把握。その犬に合った食事がどのようなものかを考えたうえでドッグフードを選びましょう。

【犬の食事管理の記事一覧】

参考文献:
日本小動物獣医師会,動物看護のための小動物栄養学,2006.
株式会社緑書房,犬と猫の栄養学,奈良なぎさ,2016.
パイインタ-ナショナル,イヌ+ネコ家庭動物の医学大百科,動物臨床医学研究所,2012.
株式会社矢沢事務所,もっともくわしいイヌの病気百科,学研プラス,2005.
老犬介護士育成専門講座教材,一般社団法人日本キャリア教育技能検定協会 学校法人つくば国際ペット専門学校

食事管理に関しての記事一覧↓

https://true-dog-lover.com/health-care-of-dogs/dietary-management/


お犬とシモベの生活 - にほんブログ村

バーニーズマウンテンドッグちょこ、SDMA検査を受ける

愛犬ちょこの血液検査でクレアチニン数値が安定せず、獣医師さんに勧めていただいた「SDMA検査」を受けました。腎臓病は犬の死因第3位に入ることが多いようなので、とても怖い&我が家は手作りご飯なので、もし腎臓の働きに異常があるなら早めに対処したいた思い・・・

SDMA検査とは?

SDMA検査は、慢性腎臓病の早期発見に役立つと言われている検査。例えばよく血液検査でCRE(血清クレアチニン)やBUN(血清尿素窒素)を指標にするが、これらの値が悪かったときには既に腎不全(腎臓の働きが75%以上失われている)が生じている状態なので、少しでも早く慢性腎臓病を発見するために有効な検査なのだとか。

「腎臓の75%以上が機能を失わなければ窒素化合物の濃度は上昇しないので、この検査で問題が明らかになったときにはかなり病気が進行している」

イヌの病気百科 矢沢サイエンスオフィス編より

対してSDMA検査の場合は、腎臓の働きがおおよそ40パーセント失われた時点で上昇すると言われているので、どうせ血液検査を受けるなら一緒にやっておきたい検査だと。

SDMA検査はどこで受けられる?

ちなみに、最近では検査機器を院内に置く動物病院も増えており、わざわざ外部検査結果を待たなくても良いらしい。検査キットも販売されるのではないか?なんて言われているが、現段階では不明。
愛犬ちょこの検査のときは検査機器は動物病院に届いていたが、ギリギリ設置していないタイミングだったので、外部検査に・・・

ちょこの結果は「8μg/dL」で参考基準値範囲内でした。良かった。一安心だけど、6才2か月なので定期的な健康診断の際、継続して一緒にSDMAも検査してもらおうと思っています。

参考文献:「家庭動物の医学大百科(山根義久 監修)」
引用・参考文献:「もっともくわしいイヌの病気百科(矢沢サイエンスオフィス編)」



ポイントが抑えられていて分かりやすい参考書。


人間の食材と同基準のものを使用。ドイツの「腎臓サポート」ドッグフード。


分かりやすく専門的な内容もしっかりと書いてある、お気に入りの参考書。


にほんブログ村 犬ブログ バーニーズマウンテンドッグへ
にほんブログ村

ペット(犬)ランキング