犬の抗がん剤による副作用や対処法など

目次:
1、腫瘍の発生と抗がん剤
2、抗がん剤の種類別副作用
3、抗がん剤の副作用に対する対処法
4、抗がん剤による副作用を減らすための治療法

愛犬の悪性腫瘍が発覚したとき抗がん剤治療も選択肢の一つになりますが、副作用リスクに関しても頭に入れておくことが大切です。私自身、愛犬の組織球肉腫の抗がん剤治療で胃腸障害や食欲不振などの副作用が引き起こされ、愛犬はもちろんですが見ている私もとても辛い経験をしました。

実際に副作用軽減のための対処を行うことができるのは獣医師ですが、日々の愛犬の様子を詳しく確認して獣医師に伝えることができるのは飼い主さん自身です。今回は、抗がん剤によって起こりやすい副作用や動物病院での一般的な対処法について獣医師に詳しく解説していただきました。

1、腫瘍の発生と抗がん剤

ここでは、腫瘍細胞の発生や抗がん剤による副作用の基本的内容を解説します。

1-1、腫瘍はどこから来るのか

多段階発癌説という仮説があり、これは正常な細胞が腫瘍細胞に変化するまでの3つの段階について述べたものになります。はじめの変化である「イニシエーション」では、正常細胞のDNAが変異し、次の変化である「プロモーション」では、DNAの変異を持つ細胞が新たな変異を蓄積させながら増殖。

最後の変化である「プログレッション」では、細胞は増殖能と転移能を獲得し、腫瘍細胞に変化します。このことから、腫瘍細胞というものは、そもそも犬の正常な細胞であったとも言えるのです。

1-2、薬の種類別副作用

一例として抗生物質は、動物細胞と細菌の生理学的な違いを利用して細菌を特異的に攻撃し、抗真菌薬は抗生物質と比較すると副作用が大きいのが特徴です。真菌は細菌より動物細胞に近い、つまりは進化的に近縁とも言える特徴を持つためです。

犬で使用される抗がん剤も、抗真菌薬よりさらに強い副作用を持ちます。腫瘍細胞と正常な細胞は同じ動物細胞であり、基本的な生理学的構造は共通しているからです。

2、抗がん剤の種類副作用

ここでは、犬に使用される抗がん剤の種類別で、一般的に引き起こされやすいといわれている副作用について紹介していきます。

2-1、種類と副作用

アルキル化剤|
アルキル化剤に関しては、シクロフォスファミド、ロムスチン、クロラムブシルなどが代表的です。DNAの複製を阻害し、副作用としては骨髄抑制(ロムスチンで重度)、出血性膀胱炎(シクロフォスファミド)などの副作用が生じる犬がいます。

代謝拮抗剤|
代謝拮抗剤に関しては、メトトレキサートや5FUなどが代表的です。DNAの合成に必須である物質に置き換わり合成を阻害しますが、骨髄抑制などの副作用が生じる犬がいます。

ビンカアルカロイド|
ビンカアルカロイドに関しては、ビンクリスチンやビンブラスチンなどが代表的です。細胞分裂や染色体分裂をつかさどる微小管と呼ばれる糸を機能不全にさせます。ビンカアルカロイドの副作用としては骨髄抑制と神経毒性(ビンクリスチン:末梢性の神経毒性で便秘が起こる)などの副作用が生じる犬がいます。

抗腫瘍抗生物質|
抗腫瘍抗生物質に関しては、ドキソルビシンなどが代表的です。DNAやRNAの合成を阻害します。ドキソルビシンの副作用としては、心毒性(心臓に悪影響な毒性)などが知られています。

白金製剤|
白金製剤に関しては、カルボプラチンやシスプラチンなどが代表的です。DNAの複製を阻害し、犬に起こりやすい副作用としてシスプラチンの場合は腎毒性、重度嘔吐、聴覚器毒性、骨髄抑制。カルボプラチンの場合は、骨髄抑制などが引き起こされる可能性があります。

抗腫瘍酵素製剤|
抗腫瘍酵素製剤に関しては、L-アスパラギナーゼなどが代表的です。特定の腫瘍が主な栄養素として利用するアスパラギン酸を分解します。L-アスパラギナーゼに関しては、急性膵炎などの副作用が知られています。

3、抗がん剤の副作用に対する対処法

ここでは、抗がん剤によってよく犬に起こる副作用や、動物病院で一般的に行われる対症療法についてご紹介致します。

3-1抗がん剤でよく起こる副作用

抗がん剤にはよく確認される副作用があり、吐き気や下痢、好中球(代表的な白血球)減少症がこれにあたります。癌細胞は正常な細胞より分裂速度が速く、その違いを標的にする薬が多く存在しますが、分裂速度が速い腸の上皮細胞や骨髄の血球系幹細胞(白血球の元になる細胞)は影響を強く受けます。

この結果として、下痢や好中球減少症などの抗がん剤副作用が引き起こされやすくなります。また、抗がん剤は毒性の高い異物なので、吐き気が副作用として現れることが多くあります。

3-2、副作用の症状に応じた対処法

動物病院で行われる下痢の対処法としては、メトロニダゾールやタイロシンなどの抗生物質やその他の下痢止めが使用されています。

好中球減少症への対処法としては、抗がん剤投与前に抗生物質を投与する方法と、「G-CSF(顆粒球コロニー形成刺激因子)」の投与によって好中球そのものを増やす方法があります。

吐き気に対処するためには、マロピタント、オンダンセトロン、メトクロプラミドなどの制吐剤が使用されるなど、副作用の症状に応じて獣医師が犬の状況に応じた薬を使用します。

その他、抗がん剤は腎臓から排出されるものと肝臓で代謝を受け胆汁を通して腸管に排出されるものがありますが、腎臓から排出されるものの場合、腎障害や泌尿器障害を引き起こすことがあります(シクロフォスファミドの出血性膀胱炎等)。

このようなケースでは、利尿剤の投与により腎・泌尿器を尿で洗い流し、抗がん剤代謝物の毒性を弱め対処するなどの方法があります。いずれの場合も、対症療法を行うためには愛犬の状況を飼い主さん自身が細かく確認して、獣医師に的確に犬の症状を伝えることが大切です。

3-3、モニタリングによる対処

抗がん剤の持つ副作用が犬が許容できる範囲内に収まるように、個々の犬のバイタルサインや血球数、血液生化学測定値をモニタリングしながら、抗がん剤の投与量を調節していく方法も一般的です。前述した薬剤による対症療法と組み合わせて行います。

4、抗がん剤による副作用を減らすための治療

現在に至るまでに、獣医療でも抗がん剤の持つ副作用を回避するために様々な方法が生み出されてきました。ここでは、いくつかご紹介していきますが、犬に発生している腫瘍の種類によっては使用できない方法や、本当に効果的か否かが不明瞭(現状実験段階)の方法もあります。

4-1、多剤併用療法

多剤併用療法とは、犬に複数の抗がん剤を組み合わせて投与することで単剤の投与量を低くして副作用を抑え、それに加えて異なる作用機序を組み合わせることで効果的に腫瘍を攻撃します。

多剤併用療法はリンパ腫の一般的な治療法として使用されており、科学的な根拠のあるいくつものプロトコールが存在します。なお、犬のリンパ腫の抗がん剤プロトコールに関しては【犬のリンパ腫|抗がん剤の種類や効果など】をご確認ください。

4-2、分子標的薬における副作用軽減

トセラニブ|
皮膚肥満細胞腫の治療に用いられるトセラニブという抗がん剤があり、これは分子標的薬と呼ばれる、腫瘍細胞が正常な細胞より多く持つ物質(トセラニブではKIT分子等)を標的にした薬剤です。

一般的な犬の抗がん剤よりさらにピンポイントで腫瘍細胞のみを攻撃でき、副作用の発現を抑えることができます。しかしながら、完全に副作用がないわけではありません。日本におけるトセラニブの副作用は、投与された犬のうち約60%で食欲不振、約20%で嘔吐、約40%で下痢、約10%で白血球減少症(免疫力低下)が起きたという報告があります。

これらの副作用は、多くは対症療法(根治を目的としない症状を抑えるための治療)で改善したとも述べられています。トセラニブは、皮膚肥満細胞腫のみに認可が下りている薬剤ですが、いくつかの腫瘍に対しても効果があると示唆されており、今後の研究によって新たに認可が下りる可能性があります。

ニボルマブ|
人の悪性メラノーマの治療に用いられる、ニボルマブという抗がん剤があります。メラノーマで多く発現するPD-1分子に対する分子標的薬ですが、ニボルマブは犬には効果がないといわれています。

しかしながら、犬に対してある程度の効果が報告された同じ作用機序を持つ分子標的薬が現在研究されているので、今後の獣医療においても使用される見込みがあります。

4-3、DNAワクチンにおける副作用軽減

DNAワクチンとは、癌細胞の遺伝子の欠片をワクチンとして注射することで、健康な細胞がその遺伝子を取りこみ、癌細胞の蛋白質等を分泌。それに対して免疫応答が起き、抗体が産生され癌細胞そのものを攻撃する、という複雑な作用機序を持つ薬剤です。

抗体は特異的に癌細胞に結合する為、DNAワクチンにおいては一般的な抗がん剤より副作用が少ないことが予想されます。犬の悪性メラノーマに対するDNAワクチン、特定のリンパ腫に対するDNAワクチンなどが知られており、悪性メラノーマに対するDNAワクチンの場合はアメリカでは認可が下りていますが、効果が疑問視されているため日本での認可はまだ下りていません。

ちなみに、特定の犬のリンパ腫に対するDNAワクチンに関しては、現在効果を確かめるための研究が行われています。

まとめ

今回は、犬の抗がん剤で引き起こされやすい副作用や動物病院で行われている対処法を中心に獣医師に解説していただきました。

抗がん剤副作用に対する対症療法は副作用の症状だけでなく、それぞれの犬の状況に合わせて行う必要がありますので、抗がん剤を使用している場合は、一層愛犬の日々の様子を細かく確認。

愛犬の状況や些細な変化などを詳しく説明して、副作用を減らしてあげられるよう獣医師と二人三脚で愛犬をサポートすることが大切です。

犬の悪性腫瘍に関連する記事一覧:https://true-dog-lover.com/malignancy/
愛犬の組織球性肉腫闘病ブログ:https://true-dog-lover.com/pet-dog-blog/cancer-dog/


WRITER Profile

獣医師ライター:  若林 薫

子犬や子猫の治療、健康管理を得意分野とする。動物病院の獣医師と飼い主を繋ぐための専門的で分かりやすい記事を執筆。獣医師免許証保有。


サイト運営者:  望月 紗貴

犬たちの幸せ(=飼い主の意識の向上)を目的とし情報提供サイトを開設。犬の管理栄養士や看護師、介護士資格など保有。他社の記事監修・作成も多数請け負う。

犬のリンパ腫|抗がん剤の種類や効果など〔獣医師解説〕

目次:
1、犬のリンパ腫とは?
2、リンパ腫の分類について
3、抗がん剤療法と多剤併用療法の治療プロトコール
4、抗がん剤の副作用

犬の腫瘍の中で比較的発生しやすいといわれているリンパ腫ですが、今回は犬のリンパ腫の種類や効果を示すと考えられている抗がん剤の概要を中心に、獣医師に詳しく解説していただきました。

1、犬のリンパ腫とは?

犬のリンパ腫は白血球の悪性腫瘍です。同じ白血球の悪性腫瘍として白血病などがありますが、リンパ腫は脾臓や肝臓、リンパ節などから腫瘍細胞が発生するのに対して、白血病は骨髄や脾臓などから腫瘍細胞が発生します。

リンパ腫は犬の腫瘍の中で3番目に発生率が高く、無治療での余命が2カ月前後、治療をしての余命が長くて1~2年と報告されています。約80%の犬は抗がん剤に反応し、腫瘍が確認できなくなる状態(寛解)になりますが、犬のリンパ腫は寛解と再発を繰り返す特徴があります。好発犬種があり、ゴールデンレトリバーで最も発生が多いと報告されています。

2、リンパ腫の分類について

リンパ腫は非常に多くの分類分けがなされるのが特徴ですが、ここでは、発生する場所による分類を中心に解説致します。

2-1、犬のリンパ腫の分類

犬のリンパ腫には、発生する場所による分類と癌細胞の特徴による分類などがあります。前者は多中心型、消化器型、皮膚型、縦隔型(胸腺型)、節外型に分類されます。

後者はB細胞型、T細胞型などの細胞的特徴で腫瘍を分類するものですが、リンパ腫が持つ細かく数多い種類をいくつかの型に分けて分類したものになります。ここでは発生する場所による分類について説明していきます。

2-2、多中心型リンパ腫

多中心型リンパ種は犬のリンパ腫の中で最も一般的なものであり、リンパ腫の約80%がこれに含まれます。全身のリンパ節から複数の腫瘍が発生し、肝臓や脾臓、骨髄に癌細胞がみられる場合もあります。

多中心型リンパ腫が発生する犬を100%とした場合、非特異的な症状(リンパ腫に特徴的にみられるとは限らない症状)が発生する犬が20~40%。それに対して、多中心型リンパ腫が発生する犬で無症状なものが残りの60~80%です。

2-3、消化器型リンパ腫

犬のリンパ腫のうち約7%が消化器型リンパ腫にあたります。消化器型リンパ腫は胃や腸などの消化器に存在するリンパ節から腫瘍が発生します。犬に嘔吐や下痢、血便・黒色便や便が出にくい(しぶり)などの症状が見られることがあります。

消化器症状と腫瘍の組織への侵入により栄養や水分の吸収が阻害されることで、削痩(著しく痩せた状態)や脱水が生じる犬がいます。

2-4、皮膚型リンパ腫

犬のリンパ種のうち約6%が皮膚型リンパ種にあたります。皮膚型リンパ腫では皮膚のしこり、潰瘍(穴)などが発生します。皮膚型リンパ腫は症状が進むと、犬の皮膚や四肢などの複数のリンパ節が腫れたように大きくなります。

2-5、縦隔型(胸腺型)リンパ腫

犬のリンパ種のうち約3%が縦隔型リンパ種にあたります。左右の肺に挟まれた心臓を包みこむ膜を縦隔といいます。縦隔型リンパ種では縦隔にあるリンパ節に腫瘍が発生します。縦隔内の腫瘍が大きくなることで犬の肺が圧迫され、圧迫された臓器から水分(胸水)が染み出します。

これが肺を収める肋骨に囲まれた空間(胸腔)に貯蓄されることで、呼吸を阻害します。咳や開口呼吸のような症状がみられる犬もいます。

2-6、節外型リンパ腫

リンパ腫が目・口腔・鼻腔、骨や心臓などのリンパ節ではないところから発生するものを節外型リンパ腫といいます。節外型リンパ腫に関しては、発生部位により犬に引き起こされる症状が異なります。


3、抗がん剤療法と多剤併用療法の治療プロトコール

ここでは、犬のリンパ腫における主な治療法である抗がん剤プロトコール(治療計画)について詳しくご紹介致します。

3-1、リンパ腫における抗がん剤療法

犬のリンパ腫は多中心型リンパ腫のように複数の臓器に発生するものがあり、また発見されたときには全身に転移しているケースが多いのが特徴です。そのため多くの犬の場合、外科的な治療方法を選択することが難しい腫瘍です。

猫における鼻腔内リンパ腫のように放射線療法を積極的に行うものもありますが、犬では放射線療法はQOL向上のために腫瘍をできるだけ小さくする目的で使用されます。犬のリンパ腫は以上の理由により、抗ガン剤療法が主な治療法なります。

リンパ腫の抗がん剤療法は単剤で行う場合もありますが、一般的には多剤併用療法を行います。これはリンパ腫が抗がん剤に耐性を持つことを防ぐ目的があり、また複数の薬の相乗効果で犬の体にできた腫瘍を攻撃する目的や、複数の薬を併用して使うことで個々の薬の量を減らして薬の副作用を減らすという目的もあります。多剤併用療法にはCHOP、COP、AC、UWなど多数のプロトコールがあります。

3-2、CHOPプロトコール

CHOPプロトコールは、多くのプロトコールのモデルとなったプロトコールになります。シクロフォスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスティン、プレドニゾロンの4種類の薬剤を使用します。このプロトコールを使用した場合、余命は12カ月程度と報告されています。

3-3、COPプロトコール

COPプロトコールは、副作用が強くでてしまう犬に対して使用されます。シクロフォスファミド、ビンクリスティン、プレドニゾロンの3種類の薬剤を使用します。副作用が少ない反面、他のプロトコールに比べると効果が弱くなる傾向にあります。2カ月の間、週に一度の治療を行い、その後は2週間に一度を目安に維持療法を行う必要があります。


3-4、ACプロトコール

ACプロトコールは、通院回数を抑えるためのプロトコールです。3週間に一回の強めの抗ガン剤(ドキソルビシン)の注射と、家庭での経口薬(シクロフォスファミド)の投与を組み合わせたものです。通院回数は減りますが、後述するUWプロトコールと比較すると効果が弱いのが特徴です。

3-5、UW(ウィスコンシン大学プロトコール)

UWプロトコールは、犬のリンパ腫における抗がん剤治療で最も一般的とされているプロトコールで、CHOPプロトコールで使う薬剤にL-アスパラギナーゼを追加した5種類の薬剤を使用します。2カ月の間、週に一度の治療を行い、その後は4カ月の間、2週間に一度治療を行います。このプロトコールを使用した場合、犬によって異なるものの余命は14カ月程度と報告されています。

3-6、抗がん剤療法の費用について

犬の抗がん剤療法の費用については、30kg前後(ゴールデン・レトリバーの平均体重)の大型犬でUWプロトコールを行った場合、6カ月間で35万円前後であるといわれています。COP、ACなどのプロトコールは比較的安価ではありますが、維持療法や再治療の必要を考慮するとUWプロトコールの費用と同程度とされています。

動物病院における治療費は国で一律に定められているものではありませんので、同じ薬剤を使用した動物用医薬品でも特性の異なるものがあり、薬価もそれぞれ異なります。動物病院で働く獣医師は日々の経験や最新の知見を駆使して、様々な特性を持つ薬の中から治療効果が高いと思われる薬を購入して使用しています。

犬や猫などの動物治療費を変動させる要因として薬価以外にも人件費などがあり、それらは全ての治療行為に必要な費用です。そのため、動物病院の治療費を個々の病院で比較することはできませんので、本記事で記述している治療費はあくまで一例としてご紹介しております。

4、抗がん剤の副作用

犬のリンパ腫の治療に使用される薬剤はシクロフォスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスティン、プレドニゾロン、L-アスパラギナーゼなどがあります。シクロフォスファミドには骨髄抑制、ドキソルビシンには心毒性、ビンクリスティンには骨髄抑制、神経毒性、L-アスパラギナーゼには肝障害、などの副作用がみられます。

また、プレドニゾロンには過剰投与による犬の医原性クッシング症候群、免疫抑制などの副作用がみられます。癌細胞はもともと体の中にある細胞ですので、抗がん剤は癌細胞にだけ毒性を持つわけではなく、他の正常な細胞にも影響します。抗がん剤に関しては「毒を持って毒を制す」と言われるのはこのためです。

治療においては、犬のリンパ腫の進行状況や転移状況、副作用リスクなど様々な視点から抗がん剤について獣医師としっかりと話し合い、検討することが大切です。


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獣医師ライター:  若林 薫
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抗がん剤断念、食欲と犬の嗜好性 day-7

ちょこの急激な食欲低下や嘔吐など、抗がん剤の副作用の可能性が高いため、獣医師さんと相談して飲むタイプの抗がん剤「エンドキサン」を断念・・。ちょこにとっての大切な1日を副作用でつぶしたくない。

抗がん剤の副作用じゃないかもしれないし、延命に関しても色々考えたが、やはり生き延びる期間の長さを重要視するのでなく、幸せに1日、1時間を生きてほしい・・。たった1度の抗がん剤でしたが、断念することにしました。

そして、今日はちょこが大好きなバァバのお家へ。お嬢の元気の源。案の定テンションが上がって、終始ニコニコ笑顔。途中で身体がだるくなったみたいで横になって休んでいたが、最高に幸せな時間だったね!

昨日の夜、ちょこを山ドライブに連れて行って「夕ご飯少しでも食べれたら、明日バァバのお家に連れて行ってあげる」。なんて話してたら、帰宅後ママのスクランブルエッグを卵1個分ほど食べてくれました。

シュークリーム、パン、チーズ、ウェットフードやドライフード、何種類も試したけど食べなかったのにね。「バァバに会いたいから食べるでしゅ~」。助手席から窓の外に顔を出して風を感じていたちょこ。

しっかりママのお話聞いていたんだね!「アタチの聴覚はすごいでしゅ~」。当日は朝ご飯も拒否して、バァバと一緒でも持参したウェットフードや手作りスクランブルエッグ、チーズなどを口にしない・・。

まさか食べないよね?なんて母と話しながら、実家にあったドライフードを与えたら・・。食べる!1食分には満たなかったけど、久々にガツガツ食べたのを見た。十分十分!少しでも食べてくれればママは嬉しいよ。

これまで、本当に何十種類も色々なご飯を試したが、どれもイマイチ。食べなかった食事の共通点を考えると、匂いが強いということ。ドライフードもウェットフードも、一般的に『嗜好性が高まる』ようなもの。

動物性タンパク質の香りがプンプンするものばかり試していたが、今回ガツガツ食べたのは香りが薄いARTEMISのドライフード。久しぶりにカリカリと音を立てて食べているのを見て、心から感激した。

先入観って本当にダメだね〜。反省・・。香りが強いものが良いとばかり思っていたが、人間が体調悪いときにサッパリしたものが食べたい感覚と同じなのか?理由はなんであれ、本当に良かった!

「アタチは病人じゃないでしゅ!カリカリご飯食べるでしゅ!」。そして、最近入院していた愛犬ボーダーコリーのラテも、昨日の夜退院。色々ありまして・・。いや、一気に色々ありすぎました。

ともあれ、とりあえず家族が揃う夜。皆が笑顔で過ごせた1日に感謝です。3頭のにこにこ笑顔がママの特効薬。色々な不幸が重なるとき、もがいたって良い方向に進まないこともある。どうせなら笑って乗り越えなきゃね!



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楽しい!で食欲改善。バーニーズマウンテンドッグちょこ day-5

昨日の夜は色々考えた挙げ句、ちょこの楽しい!パワーで食欲改善を試みる。お出かけ命犬ちょこには効果大。

お出かけの合図は車の鍵の音。案の定、「アタチを連れてけ!」と起きてきたので、作戦決行。行きたい!とちょこが言わなかったらやめよう、とパートナーと話を。

家から車ですぐのららぽーとへ。何かあっても大丈夫なよう、アシスタントバンド着用。似合ってるよ、とっても可愛い!オッドアイが再びキラキラ輝く。

ららぽーとの中まで歩けなそうだったので、ママが補助しながらちょこの歩きたい場所を歩く。ヨロヨロ、ゆっくりゆっくり。5分〜10分程度歩いたかな?

ソフトクリーム作戦。パートナーに買ってきてもらって、ママが美味しそうに食べてみる。でた!「ママばっかりずるいでしゅ!」。「アタチによこすでしゅ!」。まんまと罠に引っかかるお嬢。

家で同じことをしても、絶対食べない。帰りは補助しても歩けなそうだったので、車を近くにもってきてもらい元気に帰宅。この勢いで食べたりして?と思ってウェットフードあげたら、ゆっくりだけど夜ご飯完食!

今の状況だと外出するためには、万が一のときに車を持ってこれる場所だとか2人以上でだとか、万全の対策が必要だけど、これからも気力がある時は、安全に無理なくお出かけしようね。それにしても、お嬢の楽しい!パワーはすごかった。


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抗がん剤の副作用?嘔吐と食欲低下 day-4

昨日の夜、はじめての抗がん剤を飲んだちょこ。朝は、ご飯拒否したと思ったら黄色い液体を大量に吐いてグッタリ・・。抗がん剤の副作用か否かは確実じゃないけど、多分副作用な気が・・。

吐いたので午前中はゆっくりさせて、お昼にダメもとで缶詰と無糖ヨーグルトをあげると、ペロペロ。なんとか小さな缶詰1つとヨーグルトは食べた。良かった!少しずつ太らせて今のうちに体力貯えさせたいと思っていた矢先に、食欲低下・・。

「高山さんでしゅ〜」。午後はお友達の訪問。ちょこが鹿肉で長年お世話になっている「DEER BASE izu しかまる」さん。助かった!組織球肉腫がたくさん肺に転移しているので、肺ジャーキーなどお見舞いを持ってきてくれた!感謝感謝!!

「肺ジャーキーならいただきましゅ」。ちょこ、食べる食べる!こんなに嬉しいことはない。意識が朦朧としていることが多いが、お友達がいるせいかテンションが上がる瞬間が何度も。ちょこのキラキラと輝くオッドアイを見る瞬間が、心から幸せ。

皆でベランダにいたら「アタチもでましゅ」と言って、お庭でおしっこと立派なうんちを。些細なことに喜びが込み上げる。起き上がることもあるが、ほとんどダウンした体勢。「楽しい」とか「嬉しい」とか、+の精神力で何とか動いている感じ。

「頭皮マッサージお願いしましゅ」。気持ち良さそうに少し日向ぼっこ。ちょこは本当にたくさんの人に愛されて、幸せだね〜!本当に恵まれている。

休んでは甘え、休んでは甘える。撫でていないと、テーブルの下から犬パンチをして、もっと撫でろと催促。「こんな可愛いアタチを撫でるでしゅ〜」。パンチする余裕はまだある。

起き上がる元気も時折みせる。ニコニコ笑顔。「嬉しい!楽しい!」のパワーは最強だね!ちょこだけじゃなくママも沈みそうな気持ちを上げてもらい、本当に感謝感謝。今日は少し心細さが出てきたので、心の底から人の温もりを感じた1日でした。

そして高山さんたちが帰ったあとは、なにも受け付けない。食べない・・。副作用で薬が抜ければ改善するのか、はたまた組織球肉腫進行によるものか・・。

今日は、ちょこのマットレスがまた届いた。お嬢は時間帯によって寝場所が変わる。夜長時間寝るときは、この前設置した自分のベッド。

朝方はママのベッドで一緒に寝て、昼間は部屋の角(ままベッドの足元)だから、部屋の角用にセミシングルのマットレス購入。色々調べて、シングルより小さいセミシングルというサイズがあることを初めて知った。子供がいないからこうゆうことは疎い・・。

起きているとき体が辛いなら、せめて寝ているときは快適に眠ってほしい。苦しくて眠れない時間も、少しでも快適に過ごしてほしい。ママも皆もついてるからね!!本当に、お友達の皆さんにはありがとう!がいっぱい。高山さん、遠い中ありがとうございました。



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食欲低下と抗がん剤の選択 day-3

昨日の夜から、大好きなアカナのグラスフェッドラムフードを拒否するお嬢。困ったなぁ、と思って昨日姉が持ってきてくれたパウチのフードを。ウェットフードは頼んだが、まだ届かず・・。まさか食に貪欲なちょこに、こんな日が来るとは・・。急すぎて、気持ちが追いつかない。

「食べるでしゅ〜!」。姉がくれたフード、すごい勢いで3袋完食!助かったぁ!と思って見ていたら・・「やっぱり残すのはもったいないでしゅ」。え??結局、残したドライフードも食べた。安心したけど笑ってしまった・・。そして、ママは午前中にちょこの先生に抗がん剤の相談をしに。色々悩んだあげく、飲むタイプの「エンドキサン」を2日に一度。ごめん、少しでも可能性があるなら、やっぱりママは一時間でも長くちょこと一緒にいたい。

「アタチのお友達でしゅ」。この抗がん剤は、ガッと入れるタイプじゃなく、ゆっくり少しずつ体に入れていくもの。効果は現れにくい&現れないかもしれないけど、副作用が少ないから試すことに。ただし、出血性膀胱炎の症状がでたら中断・・。

そして午前中は、お昼寝して体力をためる。「たくさん寝て、午後はお友達と遊ぶでしゅ〜」。パパが首マッサージを始めたら、すぐに白目に・・。手を止めると起きるので、パパはひたすらお嬢の首マッサージ。「お仕事休んだなら、アタチに尽くすでしゅ~」。

お友達が教えてくれた「RAI4GATE」到着。近くにこんな素敵なカフェがあるとは!びっくりするくらい喜ぶちょこ。スーパー元気に復活。まるで以前のちょこのよう。念のためアシスタントバンド持ってきたが、全く必要なかった。やっぱり、お友達パワーは最強だね。こむちゃん、たまちゃん、ありがとう!

こむたまパワーのおかげで、食べる食べる。オヤツ食べて、ソフトクリームも3頭でバクバク。5分程度でダウンするかと思いきや、最後まで元気いっぱい。やっぱりお犬も人も気のもちよう?かな。ママも大好きなバニに囲まれて、テンション上がる。

「お散歩するでしゅ!」。カフェからすぐの公園。張り切ってママを引っ張って歩く。門池公園一周できるんじゃ?と一瞬思ったが、肺が心配だから早めに撤収。こんなニコニコ笑顔が見れて、ママは最高に幸せな時間。

そして昨日は、酸素濃縮器設置。想像以上に音がうるさいので、たまにスイッチ入れて少しずつ音に慣らしていこう。ハウスタイプの酸素室はちょこの場合はストレスになるので、寝ているとき顔付近に設置するものにした。

そして、万が一今飲んでいる「プレビコックス」が効かなくなった時のために、「トラマール」を処方してもらいました。苦しそうなときは併用・・。抗がん剤含め、全てにおいて説明が丁寧な獣医師さん。何よりちょこについて本当によく理解してくれているので、ちょこに負担がかからないよう考えてくれる。苦しそうなときのために、素早く対処できるよう次のステージでどう対応したらいいのかも含め、相談してきました。パニックにならないよう、予測できることは早めに策を練らないとね!

肺の組織球肉腫は呼吸に支障がでやすいので、温湿度計も設置。グラフで変化を確認できるものが安かったので、これにした。ちょこの場合は、湿度50~55%だと呼吸が楽そう。

今日はバニ友さんのおかげで、ちょこもママもhappyな1日!心配してメッセンジャーくれたりLineくれたり、みんなに感謝感謝の毎日です。帰宅後、スヤスヤ爆睡。しっかり体休めて、また笑顔見せてね!


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余命数ヶ月。バーニーズマウンテンドッグ、ちょこ day-1

昨日は急遽検査日を早めてもらい、動物病院へ。検査結果が悪く、余命を聞くか迷ったが心の準備のため聞いてしまった・・夏までは多分無理、余命数ヶ月程度。検査内容は、いつもと同じレントゲン&エコー、血液検査。

結果は、多発性の組織球肉腫が体の様々な部位に急激にでき、大きく成長・・。1年9ヶ月前に摘出した原発の組織球肉腫が転移。肺に5個以上、脾臓。前肢は不明だが、恐らく悪性腫瘍が悪さを・・。前回の検査では見えなかったのに、こんなはっきり大きなものが。

と言っても、実は情けないことに説明の最中に頭が真っ白になってしまい、獣医師さんが紙に書いてくれました。前回の肺原発のときも、丁寧に書いてくれた気が・・。

長年お世話になってますが、本当に心強い先生です。素晴らしい実績と優しい笑顔に今までどれだけ救われてきたか・・検査結果はいつも一人で聞くので、「私がしっかりしなきゃ!」と思いながら一生懸命聞こうとしてるが、頭にどうしても入らない。

ちょこは病院が嫌いだから、いつも検査前や検査後はパートナーと車で待機。昨日は検査するまでに少し時間あったので、皆で車待機していたが、不安だったらしく、運転席に来てママにベッタリ。可愛かったので写真を・・。

抗がん剤に関しては、数日考えることに・・ちょこの場合は、まず飲むタイプの抗がん剤じゃないと無理。その他、体の状況など色々なことを配慮すると「メトロノーム化学療法」が良いとのこと。この場合、ガッと一度に薬を入れるタイプじゃなく、少しずつ体に入れるタイプのもの。

体の状況からして、痛みやダルさがあるはず。昨日からお薬を飲んでいるが、どこまで薬でコントロールできるのだろう・・ちょこがお話してくれたらな・・そしたら、「どのくらい痛い?苦しい?あと数ヶ月長く生きてくれる?頑張りたい?休みたい?」だとか聞けるのに・・。とりあえず、月曜までに決めよう。ちょこは「可能性が少しでもあるなら、頑張ってママと1日でも長く一緒にいたい」って言ってくれるかな・・。

さすがに昨日の夜は精神的にキツく、眠れず・・。姉がそれを知ってか知らずか、夜中にLINEをくれて朝方まで付き合ってくれた。夕食は食べられなかったのに、姉との会話で安心したのか夜中におにぎりを。救世主だね。

そして、日が明るくなってきたらほぼ復活!我ながら復活が早いと思う・・。明け方からちょこの看護に必要なものをネットで頼んで、酸素濃縮器のレンタル手続き。太陽が出てきたので、ちょことお出かけがてら今欲しいものだけ買いに。

私が楽しく過ごさないと、ちょこだって楽しくないからね。これから先の不安で、今一緒にいられる幸せが見えなくなるのは絶対嫌だから・・。そして話は戻り、お散歩途中で歩けなくなる危険性が大きいので、キャンプキャリーと中に敷くもの。ベランダでまったりできるように、マットレス。ネットでは、ちょこの介助服や高反発マット。万が一のために、嗜好性が増すようなウェットフードと高栄養缶、その他色々。

「お買い物でしゅ〜!!」。嬉しそうなちょこ。お出かけが大好きだから笑顔だけど、体は辛いはず。疲れる前に素早くお買い物して、お昼寝をさせる。短い時間でも楽しかったね!ママもちょこの笑顔見れて、すごく幸せな時間だった。

昨夜ちょこの呼吸が荒くなって、2時間程度擦っていたらようやく寝た・・結局、ちょこがグッスリ寝たのは1時過ぎ。にこにこ笑顔でも体は疲れているはずだから、お出かけは休み休みにしようね。そして、明日には酸素濃縮器が届く予定。ちょこが快適に過ごせるように、色々考えていこう!

ちょことティラ、今日の写真は顔つきがそっくり。


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