犬の肥満の見分け方や肥満のリスク〔獣医師解説〕

目次:
1、犬の肥満の見分け方(判断基準)
2、肥満がもたらす犬への影響
3、食事管理で適正体重を維持しよう!

日本国内で飼われている犬に関して半数以上が肥満傾向にあり、犬の生活習慣病も増えていますが、病気を中心に肥満は犬の体にどのような影響を及ぼすのでしょう?今回は、病気の予備軍ともいわれる犬の肥満について、肥満の見分け方や病気リスク、対策などを中心に獣医師に解説していただきました。

1、犬の肥満の見分け方

ここでは、犬の肥満が及ぼすリスクや肥満度の見分け方についてご紹介致します。自宅で簡単に行える見分け方ですので、しっかりと愛犬が肥満、または肥満気味でないか確認しましょう。

1-1、肥満の見分け方

犬の肥満の見分け方の代表的なものは、① 犬種による適正体重を用いるもの ② ボディ・コンディション・スコア(BCS)を用いるものなどがあります。

前者は犬種による適正体重の15%を超えた場合に肥満と判断し、後者は外観や触診などによる痩せ~肥満の(一般的には)五段階で肥満を判断します。BCSの判定方法についてこれから説明しますが、BCSで見分ける方法は慣れれば家庭で簡単に行えるので、日々愛犬の肥満度を確認。肥満傾向にある場合は、病気予防のために食事管理方法の見直しを行ってください。

1-2、BCSの判定方法

BCSの見分け方では、以下の3点を基準にして判定を行います。

① 胸部を触ったときに肋骨がどの程度触れられるか?
②  犬を上からみたときに腰のくびれがどの程度あるか?
③ 犬を横からみたときお腹がどの程度へこんでいるか?

◇ BCSの判定フローチャート(簡易版) ◇

1)胸部を触ったとき脂肪の下に肋骨を感じる
YES→BCS4以下   NO→BCS5(肥満)

2)犬を上から見たとき腰のくびれが明らかにわかる。
犬を横から見たときお腹のへこみが明らかにわかる。
YES→BCS3以下   NO→BCS4(体重過多)

3)胸部を触ったとき肋骨の上の脂肪がほとんど感じられない。
YES→BCS2以下   NO→BCS3(適正体重)

4)胸部の肋骨と臀部の骨盤が外見からみてわかる(皮膚に骨が浮き出ている)。
YES→BCS1(痩せ)  NO→BCS2(やや痩せ)

1-3、犬の肥満状況

参照データによって多少異なるものの、日本では肥満の犬(BCS 5)が15.8%程度、体重過多の犬(BCS 4)が39.8%程度だという報告があります。恐ろしいことに、この結果をみると飼育されている犬の半数以上が肥満傾向であるということになります。

肥満は病気だけでなく犬の寿命にも関わっており、あるアメリカの研究では肥満の犬は、健康な犬と比較して2.5年程度寿命が短くなったと報告されています。ミニチュア・ダックスフンド、チワワ、ポメラニアンなどの犬種では肥満傾向になる犬が特に多く、驚くべきことに犬種によっては最大で90%近くの犬が肥満傾向にあると報告されています。

2、肥満がもたらす犬への影響

ここでは、肥満によって発症しうる病気リスクや犬の体への負担について説明致します。ついつい間食を与えてしまいがちですが、愛犬の病気リスクをしっかりと把握して体重管理に努めましょう。

2-1、肥満がもたらす病気リスク

犬の肥満によって引き起こされる病気は数多くあり、糖尿病や高脂血症、膵炎などの内分泌・代謝性疾患を思い浮かべる方が多いかと思いますが、内分泌・代謝性疾患に留まらず、血栓症や動脈硬化症、肺高血圧症などの循環器系疾患を引き起こすリスクがあります。

体重増によって四肢の負担が増え、骨関節性疾患のリスクも高めます。その他、腫瘍性疾患に関しては乳腺腫瘍、膀胱の移行上皮癌では肥満との関係性があるといわれています。皮膚疾患や泌尿器疾患リスクに関しても肥満が原因で引き起こされることがあり、肥満は数多くの犬の病気発症リスクを高める危険性があるので早めの対策が必要です。

2-2、体にかかる負荷リスク

肥満は病気を引き起こすだけではなく、犬の既存の病気の悪化リスクも高めます。例えば気管虚脱の犬では、肥満により気管周囲に脂肪が蓄積することで物理的に呼吸を阻害。病気を悪化させるリスクが高まると考えられています。

また、膝蓋骨脱臼などの骨関節性疾患では先天的に病気のリスクを持っている場合がありますが、脂肪による体重増が病気を悪化させることで病気を発症させてしまうこともあります。肥満により発症した病気が、ドミノ倒しのように既存の病気を悪化させるようなこともあるので犬の体重増加には注意が必要です。

先述で説明したように、肥満は犬の糖尿病などの内分泌・代謝性疾患を引き起こし、これらの疾患は高血糖や高脂血症、高血圧などの症状を引き起こし、さらに心臓や血管にダメージを与えるようなリスクを引き起こします。

2-3、肥満がもたらすその他の病気リスク

犬で多い循環器疾患として僧帽弁閉鎖不全症という病気があります。この病気は、心臓から全身へ血液を循環させるときに大きな負荷が発生する部位である「僧帽弁」の機能不全が原因で引き起こされるため、高血圧は心臓から全身へ血液を送る負荷の増加と言えます。僧帽弁閉鎖不全症は肥満による高血圧で、さらに病状が悪化するリスクを高めます。


3、食事管理で適正体重を維持しよう!

ここでは、犬の適正体重を維持するための食事管理や炭水化物についてご紹介致します。

3-1、食事管理におけるリスク低減

先述の通り、肥満は犬の寿命を2.5年程度短くします。肥満によって病気のリスクが上がるということからも、肥満が犬の健康を害するのは間違いないでしょう。そこで、最も肥満対策に効果的な方法は食事管理といわれています。

肥満と食事制限の関係を調べた研究では、ドックフードの量を2/3にした場合に16週間で体重は約18%、体脂肪は約43%減少したという報告があります。この体重の減少(約3.7kg)は、体脂肪量の減少(約3.1kg)とほぼ一致しており、筋肉量の減少などの食事療法の副作用は少ない可能性が高いといわれています。

素人の場合は極端な犬の食事量調整は危険ですので、獣医師に都度相談しながら食事量を調整することが大切ですが、いずれにせよ食事管理が肥満による様々なリスクを減少させる可能性は高いといえるでしょう。

3-2、食事管理と炭水化物

人においては一般的なダイエットとして、炭水化物の摂取量を減らす糖質オフダイエットなどの方法がありますが、犬の食事管理と炭水化物は関係があるのでしょうか?

肉食の犬には炭水化物は不要である、炭水化物によって犬が太る、犬は炭水化物を分解できないなどの様々な意見が散見されますが、食事管理に関して言えば炭水化物をはじめとした個々の栄養素の摂取量を考えることは、栄養学的な専門知識を駆使しないといけないので少し難しいことかもしれません。

ちなみに、犬は狩りをしていた時代から動物の胃などの消化器官に含まれる草や穀物を栄養源としていたといわれています。そのため、全食事量と比較して肉の摂取量が多いものの雑食性だと考えることができます。

このような背景から、犬の体に完全に炭水化物が不必要だというのは考えにくいといえるでしょう。また、犬の体の構造から考えると、唾液中には炭水化物を分解する酵素がほとんど含まれていないのが特徴ですが、犬の膵臓から分泌されている消化液にはその能力があります。そのため、犬は炭水化物の消化が苦手だとしても、少量であれば炭水化物を分解することはできます。

3-3、食事管理の方法

犬の食事管理における肥満対策では、一日に総合栄養食とおやつをどの程度与えているのか正確に把握することが大事です。また、犬は与えられた食事を一気に食べてしまうことが多い動物であり、一度にたくさんの食事を消化するためには必要以上の血糖値の上昇を招き、肥満の原因になることがあります。

そのため肥満気味の犬であれば1日の食事量を減らして、ごはんの回数を増やし、1週間後に体重を測定。体重に変化がない、または体重が増えてしまった場合は1回の食事量をさらに減らして再び1週間後に体重を測定をしながら、少しずつ減量対策を行うと良いでしょう。

気を付けておきたい点としては、お腹が空いて可哀想だからと間食としてのおやつを与えないということです。家族の方がこっそり与えるようなことがないよう、事前に家族全員が犬の肥満状況やそのリスク、食事量に関して把握しておかなければいけません。

まとめ

今回は、一獣医師としての観点から犬の肥満リスクや食事管理の重要性などをご紹介させていただきましたが、犬の肥満は様々な病気リスクを高めるだけでなく現状犬が発症している病気を悪化させ、ときに寿命にさえ影響することが分かりました。

私も個人的に一愛犬家として甘やかしてしまいがちですので、飼い主さんの気持ちはとても良く理解できます。最近では、種類は少ないものの総合栄養食基準を満たしたおやつもあるので、このようなおやつを活用したり、普段与えていないドッグフードをおやつとして与え、1回の食事量をその分減らすような工夫も必要です。

いずれにせよ、病気になったり体に負担がかかったりする方が犬にとってはデメリットが大きいので、おやつの量は1日の総合栄養食の2割以内(理想としては1割程度)で、犬の健康を第一に考えて調整してあげましょう。なお、犬の食事管理についての記事一覧は【犬の食事管理(リンク)】をご確認ください。




WRITER Profile

獣医師ライター:  若林 薫
子犬や子猫の治療、健康管理を得意分野とする。動物病院の獣医師と飼い主を繋ぐための専門的で分かりやすい記事を執筆。獣医師免許証保有。

サイト運営者:  望月 紗貴
犬たちの幸せ(=飼い主の意識の向上)を目的とし情報提供サイトを開設。犬の管理栄養士や看護師、介護士資格など保有。他社の記事監修・作成も多数請け負う。

犬にダニを見つけたら?対策や取り方など

目次

1、犬に寄生するダニとは?
2、ダニによって引き起こされる症状
3、犬にダニを見つけたら?
4、犬についたダニの取り方
5、効果的なダニ対策について

暖かくなってくると、愛犬の散歩や外出の際にダニが心配になりますよね。
犬に寄生するダニは種類が多く、種類によって引き起こされる症状も異なりますが、痒みを中心に犬のQOL低下の原因になるので早めに対策を行いたいものです。
今回は、犬に寄生するダニが引き起こす症状や対策などご紹介致します。

1、犬に寄生するダニとは?

犬に寄生するダニの種類は非常に多く、被毛や皮膚だけでなく外耳道や鼻腔に寄生することもあります。
ダニの種類は、フタトゲチマダニ、クリイロコイタマダニ、ツリガネチマダニ、キチマダニ、ニキビダニ、ツメダニ、ヒゼンダニなどで、多くの場合は皮膚に寄生しますが、疥癬という病気で知られているようにヒゼンダニの場合は耳に寄生することもあります。
その他、症状は出にくいものの犬肺ダニという鼻腔に寄生するダニもいるので注意が必要です。

2、ダニによって引き起こされる症状

ダニによって引き起こされる症状はダニの種類によって異なりますが、多くみられるのが痒みや炎症・脱毛などで、その他ダニの寄生部位によっては犬の歩行に支障をきたすものもあります。
また、二次感染による化膿が原因で、(※1)浮腫や出血を中心に皮膚病変が引き起こされるケースが多いのが特徴です。
症状の現れ方は犬の免疫力の状態によって左右されることもあるので、免疫力が低下傾向にある子犬やシニア犬、病中・病後の犬などは特に注意が必要です。

(※1)浮腫|皮下組織の間部分に水分が過剰に貯留している状態

3、犬にダニを見つけたら?

犬の被毛や皮膚にダニを見つけたら、動物病院で適切な処置をしてもらい、必要に応じて薬を処方をしてもらうのが一番です。数匹でれば、応急処置として取り除いてあげると良いでしょう。
この時に注意が必要なのがマダニの取り方で、犬の表皮にぴったりと張り付いているようなマダニに関しては無理に手で取ろうとすると、犬の皮膚内部にマダニの頭部(口器)が残ってしまい化膿などの原因になります。
その他、マダニは細菌やウイルスを中心に人に危害を与える危険性の高い虫ですので、見つけたら焦って対処せず早めに動物病院に連れていくことをおすすめします。

4、効果的なダニ対策について

愛犬のダニ対策で大切なことは、定期的に駆除薬を投与することです。
マダニに関しては春から発生すると思われがちですが、実は秋であってもたくさん発生するので、地域によっては年間を通じて定期的にダニ対策を行う必要があります。
主なダニの駆除薬には、(※2)スポットオンタイプと食べさせるタイプがあり、犬の健康状態などによって適したものが異なることがあります。自己判断せずに獣医師に相談することをおすすめします。また、商品によって効果が持続する期間、ダニ以外に対しての効果などが異なるので、事前に調べておくと良いでしょう。
その他の対策として、ダニが多く発生する時期は犬を草むらや森などに連れて行かずに、ダニ除けに効果的なスプレーや置くタイプのダニ除けなどを活用すると良いでしょう。

(※2)スポットオンタイプ|犬の肩甲骨の間(首筋周辺部)に垂らすタイプの駆除薬

犬にダニを見つけたら?まとめ

今回は、犬に寄生するダニが引き起こす症状や対策を中心にご紹介致しました。
犬にダニを見つけたら、焦って手で取り除こうとせず、まずは動物病院で適切な処置を行ってもらうのが一番です。
これからの季節はただでさえ暑くて犬のQOL低下を引き起こしやすいため、ダニによって痒みや皮膚病変などが生じるととても可哀想です。
駆除薬の投与を検討して、事前にできる対策はしっかりと行っておきましょう。

久々の晴れ、愛犬の熱中症対策開始!

静岡県は久々の晴れ。昨日までは、大雨・暴風で愛犬たちの散歩も大変でした。ゴールデンレトリバーのティラは、雨であっても「濡れること」が大好きなので、もちろんお散歩と庭ラン遊びは必須。
ボーダーコリーのラテは超神経質犬で、雨が降ると「体が濡れること」が嫌すぎてウンチを我慢。ひどい時は、おしっこも我慢してしまうという曲者。

そして今日、気づいたらお昼前には太陽が。梅雨に入ってから雨の降るタイミングがつかめず・・晴れたと思ったら急に雨が降るので、チャンスを逃さずお犬たちを放牧することに。
しかし、暑すぎて熱中症が心配になってしまう・・。室内は、既に熱中症対策でエアコン24時間フル稼働にしているが、外では短時間であっても心配になってしまう・・。

室内温度は除湿設定で20~21℃程度。熱中症は湿度も大きく関わるので、愛犬の様子を見ながら50~60%を維持。ちなみにバーニーズマウンテンドッグちょこが天使になる前は、ちょこ&ママ部屋は18℃~20℃程度でした。
それを考えると、今の室内温度は私にはこの上なく快適。365日、どんなに寒い思いをしてももっと一緒にいたかったけどね・・。

ともあれ、久々に晴れたせいかテンションマックスのラテ。彼の場合は、熱中症の心配だけでなく癲癇発作や股関節形成不全があるので、ほどほどに遊ばせ・・。
日陰でまったり気分転換する時間を主に、こまめな水分補給と遊ぶ時間の短縮で熱中症対策を。7月初めだからこの程度の対策で済むけど、これから梅雨が明けたら一気に暑くなるので、日中お庭で遊べるのは今のうちかな・・。


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犬に水分は大切!飲まないときの原因や対策〔管理栄養士監修〕

目次

1、犬にとって水分が大切な理由
2、1日に必要な犬の水分量は?
3、犬が水を飲まない理由
4、犬が水を飲まないときの対策
5、犬の管理栄養士が選ぶ!水分補給サポート商品5選
6、愛犬が脱水状態か確認する方法は?

犬に必要な1日の水分補給量を知っていますか?
犬によって個体差がありますが、一般的に健康体の犬の体の約60%前後が水分で構成されているといわれており、水分補給を行うことは犬の生命維持や健康維持に欠かせません。
今回は、1日に必要な犬の水分量や水を飲まない理由、対策など幅広くご紹介致しますので、是非ご活用ください。

犬にとって水分が大切な理由

犬の体の60%前後の水分のうち、約10%程度が失われると「脱水症状」になります。脱水症状になってしまうと体内の電解質のバランスが崩れ、様々な体の不調を引き起こします。
体の水分が不足すると必然的に排尿回数が低下するため、通常尿で排泄される体内の毒素が適切に排泄できなくなります。また、水分量が低下すると犬の体内で様々な物質を溶解して運搬する機能が低下することで、健康被害を与える危険性が高くなります。
10%を上回る水分が犬の体から失われるとショック状態になり、犬の命を奪う危険性もあるので犬の水分摂取量には十分気を付けなければいけません。

犬の脱水症状の原因は、単純に水分補給量の低下だけではなく、下痢などの消化器系症状が引き金になったり、急性胃炎、急性腎不全、熱中症や感染症などの病気が原因で脱水症状が引き起こされることもあります。

1日に必要な犬の水分量は?

1日に必要な犬の水分量は、犬の運動量や生活環境による差、年齢や個体差によって多少異なりますが、一般的な目安としては『体重 x 0.75 x 132(ml)』という計算式で、1日に必要な水分量目安が計算できます。その他、『体重1㎏に対して90ml程度』という考え方もあります。

<5kgの犬の場合の例>
『体重 x 0.75 x 132(ml)』の計算式を利用すると、5 x 0.75 x 132(ml)=1日に必要な犬の水分量は『495ml』程度。『体重1㎏に対して90ml程度』で考えると、5 x 90 =『450ml』程度になります。
水分摂取量に関しては、上記のような計算式で目安量を計算した上で、1日の食事に含まれる水分量(ドライフードであれば10%前後)を差し引いて考えましょう。ウェットフードを与えている場合は、1日の水分摂取量が過剰にならないよう注意が必要です。

犬が水を飲まない理由

犬が自ら水を飲まない理由は、老化によるもの、痛みや不快感を中心とした体調不良、気温の変化や単純に水飲みの場所や位置・飲みにくさなどが原因になっていることもあります。犬によっては、もともと水分補給をこまめに行わないことがあるので、適切に水分補給を行っているか日々確認してあげましょう。

・老化が原因で水を飲まない
犬も人間同様に老衰によって代謝機能が低下したり、喉の渇きに鈍感になることがあります。特に体が不自由な老犬の場合は、水飲み場が遠い、水飲み器が床置きになっているなど「飲みにくさ」が原因で水分補給量が減ることがあります。水飲み場を寝床の傍に設置したり、高さ調整ができる食事台を準備するなど水が飲みやすい環境を整えてあげましょう。
・痛みや不快感が原因で水を飲まない
犬は人間同様、体の痛みや不快感、ストレスなどで水分補給量が低下することがあります。何かしらの病気や老衰によって体に不調がある場合は、定期的に水分補給量の確認。関節に何かしらの疾患があったりヘルニアなどの持病がある場合は、水分補給時に水を飲みやすいようにサポートしてあげましょう。その他、口腔内の炎症や痛み、胃や腸の消化器官が不調の場合は動物病院でしっかりと検査しなければいけません。
・季節によって水を飲まない
夏など気温が高い時期は喉の渇きを感じやすく、運動の後など水分摂取量が増える傾向にありますが、気温が低い冬場などは運動量の低下や代謝能力の低下などが原因で、水を頻繁に飲まなくなることもあります。

犬が水を飲まないときの対策

日によって多少の水分摂取量の差は生じるので、一時的に水分摂取量が減ったり増えたりする場合は様子を見ることもできます。しかし、水分量が急激に低下した場合・継続して低下している場合は、体の不調が原因である可能性があるので、まずは動物病院でしっかりと検査を行いましょう。
病気が原因でない場合は、水に嗜好性が高まるもの(ヤギミルクや無調整豆乳、果汁や肉汁など)を追加する・食事をウェットフードに変更する・犬用の水分補給ゼリーなどを利用するなどして様子を見ましょう。こまめに新鮮な水に入れ替えて、食事台などを利用して飲みやすい環境を整えることも大切です。

犬の管理栄養士が選ぶ!水分補給サポート商品5選

1、嗜好性を高める「オランダ産ヤギフルミルクパウダー」
病気が原因でない場合は、嗜好性の高まるヤギミルクパウダーを水に加えてあげると効果的です。こちらのヤギミルクは、保存剤などが無添加・無調整で作られており、豊富なタウリンが含まれています。ヤギミルクは、牛乳のように乳糖が多く含まれておらず、下痢を引き起こしにくいのが特徴です。


2、犬の水分補給や熱中症対策に効果的な「バテない君」
こちらの商品は、無添加、無農薬で天然素材で作られているのが特徴です。水分たっぷりのチキンベースのスープで、水分補給対策や熱中症対策を中心に、犬の健康をサポートしてくれる飲料水です。そのまま飲ませたり、ドライフードに混ぜて与えたりすることで水分摂取を促します。お出かけの際も持ち歩きしやすいので、お散歩の休憩で水分補給をさせるのも良いですね。


3、ペットの体液に近い成分で作られた「ペットスエット」
ペットスエットは、犬の水分補給をサポートするペット用燃料系飲料です。カロリーが控えめで、体液に近い「電解質組成」で作られています。水分だけでなく、皮ふや被毛の健康サポートに効果的な「パントテン酸カルシウム」や糞尿の臭いを減らす効果が期待できる「オリゴ糖」も配合。保存料無添加です。


4、95%が水分の栄養満点ゼリー「パクッといきいき食欲ゼリー」
安心のDHCの犬用健康食品。水分摂取が苦手な犬だけでなく、食欲が低下している老犬などにも最適の栄養満点ゼリーです。健康維持に効果的なDHA・EPAやコエンザイムQ10などを配合しているチーズ風味のゼリーで、歯が弱い老犬にもおすすめです。安心の国産製品。食塩・砂糖不使用。香料・着色料・保存料が無添加です。


5、高い基準をクリアしたテラカニスの「鹿肉ウェットフード」
水分補給がこまめにできない犬におすすめのウェットフード缶詰です。テラカニスの缶詰は、人間用と同じ品質の原料だけを使用しています。こちらの缶詰は、ノロジカや赤鹿の筋肉が原材料の半分以上を占めており、その他にんじん、ズッキーニ、じゃがいも、パースニップやりんごなど犬の健康維持に役立つ食材が多く使用されています。水分量が80.1%と非常に高いのが特徴ですが、必ず新鮮な水も準備しましょう。


愛犬が脱水状態か確認する方法は?

愛犬が脱水状態にあるかどうかを判断するためには、一般的に皮膚や口、目、尿の回数や量を確認します。

・皮膚の状態で確認する
皮膚で脱水状態を確認する場合は、皮膚を軽くつまんで皮膚の戻る様子を観察します。腰部分や背中の皮膚を優しくつまんで離した際、健康体の犬であれば1秒~1.5秒以内には元の位置に皮膚が戻ります。皮膚が正常な位置に戻るまでに2秒以上経過する場合は、脱水症状を疑いましょう。
・口や目で確認する
口や目の粘膜の状態で脱水状態を確認します。健康体の犬であれば粘膜が潤っていますが、乾燥している場合は注意が必要です。口腔内で確認する場合は、唾液の分泌が少なすぎないか(乾燥していないか)、唾液に粘着性がないかも合わせて確認しましょう。
・尿の回数や量で確認する
水分摂取量が低下すると必然的に排尿回数や量も減るので、尿の回数や量は日々確認しましょう。また、排尿がスムーズに行われているか、尿の色が濃くないかにも注意が必要です。

愛犬に適切な水分補給を!

犬に水が大切な理由や1日に必要な水分量、飲まない時の原因や対策を中心にご紹介いたしましたが、犬の水分摂取量が適切でないと犬の健康に被害を及ぼすだけでなく、命に直結する危険性さえあります。
継続して水を飲まない場合、または急激に水分摂取量が低下した場合は、獣医師に相談しましょう。病気ではなく、もともと水をあまり飲まない犬や老衰、季節など何かしらの事情で水分摂取量が一時的に低下している場合は、水に嗜好性が高まる工夫をしたり水分補給ゼリーを利用する、ドライフードをウェットフードに変更するなど、しっかりとした水分補給対策を行いましょう。

犬の認知症対策、予防法やおすすめサプリ〔老犬介護士監修〕

目次

1、犬の認知症とは?原因や症状
2、犬の認知症の予防や対策は?
3、犬の管理栄養士が選ぶおすすめサプリ
4、認知症の犬の介護で大切なこと
5、ペットセラピストが選ぶおすすめアロマ

動物医療の発展やドッグフードの高品質化、室内飼育を中心に飼い主さんの犬に対する意識の向上など、様々な要因で犬の平均寿命が年々延びています。『アニコム家庭どうぶつ白書2019』では、ここ10年程度で犬の平均寿命が8.4ヶ月も延びていることが報告されています。
このように犬の平均寿命が延びることは非常に嬉しいことですが、それと同時に愛犬の認知症(痴呆)を中心とした老犬介護に悩む飼い主さんが増え続けているのも事実です。

犬の認知症とは?原因や症状

犬の認知症(痴呆)の原因は、残念ながら現段階で解明されていませんが、歳をとって脳に何かしらの変化が生じることで起こる脳神経系の病気であると考えられています。認知症の症状でよく現れるのが、夜泣きや徘徊、食事の過剰な催促や粗相などですが、中には飼い主さんのことを認識できなくなる犬もいます。
犬の脳の病気の一つに、脳が圧迫されることで様々な症状を引き起こす「水頭症」と呼ばれる病気がありますが、この病気で大脳皮質が圧迫された場合にも痴呆の症状は現れます。

犬の認知症の予防や対策は?

一言で認知症(痴呆)といっても、犬によって現れる症状や度合いは異なります。認知症は、対策を行ってもすぐに効果が見られるとは限らないので、根気よく愛犬のサポートをしてあげましょう。

・規則正しい生活を心がける

夜間の徘徊行動や夜泣きは昼夜逆転の生活が影響しているケースが多いため、規則正しい生活をさせることが認知症対策に効果的です。老犬は日中の睡眠時間が長くなる傾向にあるので、体に負担がかからないように適度に日中起こしてあげることが大切です。日光浴を20分~30分程度させてあげたり、知育おもちゃなど活用してコミュニケーションを図りながら遊んであげるもの良いでしょう。
長時間紫外線を浴びるのは皮膚がんリスクを高める原因になりますが、適度な日光浴は免疫力が低下しやすい老犬の健康維持に欠かせません。夏場などの暑い時期や暑い時間帯の日光浴に関しては、熱中症リスクが高まるので絶対にやめましょう。

・犬の生活環境を見直す

徘徊行為をする犬の場合、徘徊時に犬に危険が及ばないよう円形サークルを利用するなどの工夫が必要です。床を滑りにくい素材にするなど愛犬が安全に歩ける環境をつくってあげましょう。その他、夜間は安心してしっかりと眠れるように、静かで快適な寝床を準備。温度や湿度を快適に保つなど愛犬の様子を見ながら生活環境を見直してあげることが大切です。

・コミュニケーションの方法を変える

老犬は老衰や病気による体の不調、不快感で噛みついたり、目や耳の衰えが原因で触られることに恐怖を感じて噛みつくことがあります。認知症で飼い主さんを認識できない犬もいるので、噛みつきがひどい場合はグローブを着用するなどして穏やかに対処してあげなければいけません。コミュニケーションを図るときは声掛けを行い、老犬が聞こえていないようであれば、犬が飼い主さんを目で判断できるようにアイコンタクトをしましょう。
前触れもなしに触れると恐怖心で噛みつく危険性があるので、犬の後方から急に触るようなことはしてはいけません。

・生活に適度な刺激を加える

人間にも同じことがいえますが、認知症を中心に脳の老化予防、健康維持には適度な刺激も必要です。知育おもちゃで遊ばせて脳に刺激を与えたり、普段と違う場所でお散歩をさせるなど、日中に適度に刺激を与えることが認知症対策に効果的です。
犬は嗅覚で多くを判断する生き物なので、色々な匂いを嗅がせることで脳を活性化させることができます。普段とは違う場所で嗅いだことのない匂いを嗅がせる時間を作り、夜泣きや夜間の徘徊対策を試みると良いでしょう。

・薬剤やサプリメントを活用する

状況に応じて獣医師に脳細胞を活性化させるための薬を処方してもらったり、サプリメントで必要な栄養素の補給を行うことで認知症対策を行うことができます。しかし、これらはすぐに認知症状が治まるというものではありません。動物病院では一般的には不飽和脂肪酸が含まれたサプリが勧められ、DHAやEPAを犬に摂取させることで夜鳴きをはじめとした認知症状の改善を試みます。
これらの不飽和脂肪酸サプリは、認知症状の改善だけでなく症状の進行を緩やかにするためにも効果的です。

・アロマオイルやレメディを活用する

認知症の老犬のみならず、犬のメンタルケアでよく使用されているのがアロマオイルやレメディです。精神安定や睡眠を促すために効果が期待できるものがあるので、活用するのも良いでしょう。

・最悪の場合は睡眠導入剤を検討する

様々な対策を行っても夜泣きが改善されない場合は、獣医師に相談の上睡眠導入剤を処方してもらうこともできます。しかし、睡眠導入剤は犬によっては効果が期待できないことがあり、副作用リスクについても考慮しなければいけません。睡眠導入剤を検討する際は、しっかりと獣医師に副作用リスクや薬の危険性について確認してから検討しましょう。

・防音ケージを活用する

最近では、夜泣きがひどいときに利用する防音ケージも販売されています。飼い主さんの睡眠不足や近所とのトラブルも深刻な問題なので、犬が防音ケージの中でリラックスできる状況であれば、利用するのも良いでしょう。

犬の管理栄養士が選ぶおすすめサプリ

犬の認知症(痴呆)に関しては、残念ながら動物病院での投薬やサプリなどで根本的に治すということは出来ません。サプリに関しても与えたからといって確実に効果が出るような保証はありませんが、少なくとも認知症予防や既にでている認知症状の進行を遅らせる、症状を緩和するためには効果が期待できます。

・犬用認知症対策サプリ DHAやEPA、フェルラ酸などをバランスよく配合『毎日一緒』

脳内の抗酸化作用や神経細胞保護などに効果的な「DHA」、血管性の認知症予防に効果的だと考えられている「EPA」、強い抗酸化作用が期待できる「フェルラ酸」など、認知症予防や進行を遅らせるために有効な成分がバランスよく配合されているのが特徴です。配合主成分は、DHA、EPA、亜麻仁油、フェルラ酸、イチョウ葉エキス、ビタミンE、ビタミンB12、ビール酵母などです。

・オメガに特化した認知症対策国産サプリ『MEDICAL OMEGA3・6・9』

MEDICAL OMEGA3・6・9は動物病院でも取り扱っていることがあるサプリで、主な原材料はヒマワリ油やDHA含有精製魚油、亜麻仁油などです。脳の健康維持に役立つオメガ3(ドコサヘキサエン酸)を中心に、オメガ3との相乗効果が期待できるオメガ6をバランスよく配合。それに加えて悪玉コレステロールを減らす効果が期待できるオメガ9を配合した、老犬に優しいサプリです。

・脳神経の働きサポート成分やリラックス成分が配合された『DHC犬用国産サプリ おだやか』

DHC犬用国産サプリおだやかは、認知症対策サプリとして販売されている商品ではありませんが、脳内のリラックス成分であるギャバやギャバの働きをサポートするためのザイラリア、脳や神経の組織の働きをサポートするためのレシチンなど認知症の犬に効果が期待できる成分が含まれています。大手メーカーの犬用サプリで、愛犬に安心して与えることができます。

・夜泣きが激しい認知症の犬に最適のサプリ『meiji メイベットDC』

愛犬の夜泣きや夜の徘徊で悩んでいる飼い主さんにおすすめのサプリです。主成分にDHAとEPAのオメガ3脂肪酸が配合されているため、神経伝達サポートに効果が期待できます。老犬の不安やストレス緩和を促し、より快適な睡眠をサポートするために役立ちます。オメガ3脂肪酸はその他にも、老犬の関節痛緩和や毛ヅヤ対策にも効果的です。

認知症の犬の介護で大切なこと

認知症(痴呆)の犬の場合、他の病気とは少し異なり「犬の行動変化」が生じやすいため、飼い主さんが精神的にダメージを受けやすいのが特徴です。それに加えて夜泣きや深夜の徘徊行動で、眠れないという身体的なダメージも加わります。
愛情深く老犬と真剣に向き合うことはもちろん大切ですが、苛立ちなどの負の感情で愛犬のお世話をすることは、犬にとっても好ましい状態ではありません。介護ノイローゼになってしまう飼い主さんもいるので、一時的にペットシッターや老犬介護士にお世話をお願いして、休憩をとりながら老犬と向き合うことも大切です。
認知症の犬の介護では、何より飼い主さん自身が「精神的にも肉体的にも良いコンディションで介護できる状態」であることが重要なのではないでしょうか。

ペットセラピストが選ぶおすすめアロマ

近年では認知症に関わらず、愛犬のメンタルケアのために犬用アロマが活用されるようになりました。ここでは、認知症の犬におすすめのメンタルケア効果や快適な睡眠サポートに効果が期待できる、アロマやレメディをご紹介いたします。

・ストレス緩和におすすめ「犬用レスキューレメディ」

レスキューレメディは副作用や依存性の心配がないレメディで、愛犬の口の中に垂らしたり、体につける、生活空間にスプレーすることでストレスの緩和を促します。人間用も販売されているので、認知症介護などストレスのかかりやすい時期は愛犬と一緒に使用するのも良いですね。

快適な睡眠を促す『ジェモセラピー 犬用ライムツリー (神経用)』

神経の健康維持サポートが期待できる自然療法のハーバルサプリメントです。ストレス緩和やリラックス効果が期待できるため、快適な睡眠サポートに活用したいアイテムです。  

安定した睡眠サポートが期待できる『Azmira カーム&リラックス 1オンス犬用』

犬の神経の動揺や興奮状態を和らげることで、安定した睡眠を促します。スカルキャップハーブ、オトギリソウ(芽)、キンセンカ(花)、カモミール(花)などの原材料が使用されています。

愛犬に快適な老後生活を

老犬の認知症状に悩む飼い主さんが年々増加しており、老犬介護問題も深刻化してきました。
認知症に関しては、効果がすぐに期待できるような特効薬や治療法などは現段階ではありませんが、規則正しい生活や適度に刺激のある生活。それに加えてサプリなどを活用することで症状が改善したり症状の進行を緩やかにしたりすることができるケースもあります。
認知症の老犬介護は飼い主さんももちろん大変ですが、愛犬も精神的にも肉体的にもダメージを受けやすい状況下であることを忘れず、少しでも愛犬が快適な老後生活を送ることができるようにサポートしてあげましょう。