近年、犬のアレルギーが増えているといわれ、アレルギー性皮膚炎を中心に皮膚の弱い犬のドッグフード選びで悩む飼い主さんが多くいます。今回は、皮膚の弱い犬の食事管理法(ドッグフードの選び方)&おすすめのドッグフードを中心にご紹介致します。
皮膚の役割と食事管理の重要性
皮膚は主に、犬の体温を調整したり、内臓を守ったりするために、必要不可欠な臓器です。その他、外部から加わる刺激や細菌、ウイルスなどから体を守ったり、体内に存在する水分が無くならないようにするためなど、多くの働きを持ちます。そのため、皮膚はかなりの頻度で機能(代謝)し続けています。
このように、皮膚では絶え間なく栄養素が合成&分解されているため、食事に含まれるたんぱく質や脂肪、ビタミン類を始めとした栄養素がバランスよく含まれていないと、アトピー性皮膚炎や食物アレルギーを発症するなど、皮膚の健康維持が困難になります。
その他、十分な栄養が食事に含まれている場合であっても、何かしらの病気や老衰によって代謝異常が犬の体で生じている場合、皮膚への影響が出やすいため注意が必要です。
皮膚の弱い犬のドッグフード選びで重要なこと

ここでは、皮膚の弱い犬のドッグフードを選ぶ際に気をつけたいポイントをご紹介致します。
栄養バランスの整ったドッグフードを選ぶ
- 総合栄養食表記のあるドッグフードを選ぶ
皮膚が弱い犬は、AAFCO(ペットフードの栄養基準などの基準を設定している団体)の栄養基準を満たしている総合栄養食表記のあるドッグフードを選ぶことをおすすめします。
その他、病気によって皮膚に問題が生じている犬の場合は、動物病院で適切な治療を受けて獣医師に食事管理について相談しましょう。
たんぱく質の内容や質に注意してドッグフードを選ぶ
- 皮膚が弱い犬は、含硫アミノ酸が多く含まれるドッグフードを選ぶ
- コラーゲンの原料となる「アルギニン」などのアミノ酸が多く含まれたドッグフードを選ぶ
- 必要に応じて、コラーゲンが含まれているサプリメントを使用する
アミノ酸を犬の体に補給するために必要な「たんぱく質」の役割の一つは、皮膚のバリア機能を高めることです。
そのため、皮膚の弱い犬やアトピー性皮膚炎などの問題が生じている犬に関しては、皮膚の構成成分となる「含硫アミノ酸(メチオニンやシスチンなどのアミノ酸)」と呼ばれるたんぱく質が多く含まれるドッグフードを選ぶと良いでしょう。
メチオニンやシスチンなどの詳細に関しては、【犬に必要なたんぱく質と食材】をご確認ください。
その他、表皮の内側に存在する「真皮」にはコラーゲンが多く含まれていますが、このコラーゲンの原料となるアルギニンやシステイン、プロリンなどのアミノ酸が多く含まれたドッグフードを選ぶことも大切です。
ドッグフードに含まれていない場合は、サプリメントで補給。ラベルに表記されていない場合は、ドッグフードメーカーに問い合わせてみるのも良いでしょう。
機能性成分が含まれているドッグフードを選ぶ
- 皮膚が弱く炎症が生じている犬のドッグフードを選ぶ場合
「オメガ3脂肪酸(1):オメガ6脂肪酸(5)」配合のドッグフード - アトピー性皮膚炎緩和のためのドッグフードを選ぶ場合
「オメガ3脂肪酸(1):オメガ6脂肪酸(1~2)」配合のドッグフード - 真皮の構成成分となるコラーゲンが含まれたドッグフード
皮膚の弱い犬のドッグフード選びで重要となる機能性成分は、主に「オメガ3脂肪酸」と「オメガ6脂肪酸」です。
犬の場合、これら脂肪酸を体内で合成できないため、食事で摂取する必要があります。犬においては脂肪酸のうち、「aリノレン酸(オメガ3脂肪酸に属す)」と「リノール酸(オメガ6脂肪酸に属す)」は必須になります。
これら栄養素が不足してしまうと、表皮の最表面に存在する角層のバリア機能が低下してしまうという報告もあり、犬のアトピー性においては、特にリノール酸が低下することで皮膚のバリア機能が著しく低下する傾向にあります。
なお、皮膚が弱い犬で既に皮膚に炎症が生じている場合は、ドッグフードに含まれるオメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸の含有比率にも注意が必要。
この理想比率に関しては専門家によって見解が異なるものの、「オメガ3脂肪酸(1):オメガ6脂肪酸(5)」が炎症の緩和には効果的だと考えられています。
また、犬がアトピー性皮膚炎の場合は、「オメガ3脂肪酸(1):オメガ6脂肪酸(1~2)」で皮膚炎改善が認められているとの報告があり、犬の皮膚に生じている症状によってこの比率が変動することが分かります。
その他、皮膚が弱い犬には、真皮の構成成分となるコラーゲンが含まれたドッグフードを選ぶと尚良いでしょう。
添加物が含まれているドッグフードは極力避ける
- 食物アレルギーの犬に関しては、添加物が含まれていないドッグフードを選ぶ
ドッグフードに含まれる「(人工)添加物」や消化性の悪いたんぱく質原料は、アレルギーの原因になることもあるとの報告があります。
食物アレルギーによって皮膚に問題が生じている犬に関しては、添加物が含まれているドッグフードは極力避けると良いでしょう。
ビタミンの含有量に注意してドッグフードを選ぶ
- 皮膚が弱い犬は、ビタミンAの含有量に注意してドッグフードを選ぶ
- 皮膚が弱い犬は、ビタミンEの含有量に注意してドッグフードを選ぶ
犬の皮膚に関与する主なビタミンに関しては、ビタミンAとビタミンEです。ビタミンAには様々な役割がありますが、一例として、角化(表皮において細胞が変化していく過程)に大きく関与する栄養素です。
このビタミンAに関しては、多すぎても少なすぎても皮膚疾患の原因になるため、ドッグフードを選ぶときは十分注意が必要。
その他、ビタミンBに関しては抗酸化作用が高いので、皮膚が弱い犬には積極的に与えたい栄養素ですが、ビタミンA同様、過剰に多く与えることは避けなければいけません。
皮膚疾患に関わらずビタミンAやEのような「脂溶性ビタミン」に関しては、過剰症を引き起こしやすいので、手作りご飯を中心に食事管理では気をつけたい栄養素です。
ビタミンに関しての過剰症や欠乏症に関しては、【犬に必要なビタミンと食材】で詳しく説明しています。
質の良いドッグフードを与える
- 高温加熱したドッグフードは避ける
- 良質な動物性たんぱく質が主原料のドッグフードを選ぶ
- 必須脂肪酸の少ないドッグフードは避ける
皮膚が弱い犬に限らずドッグフードは質が良いに越したことはありませんが、特に皮膚が弱い犬の場合は栄養バランスの優れた食事を与える必要があります。
特に、消化吸収性の悪いたんぱく質(高温加熱したドッグフードや植物性たんぱく質が主原料のドッグフード)や、必須脂肪酸の含有量が少ないドッグフードは避けましょう。
なお、品質の低いドッグフードを長期間継続的に与えることで生じる皮膚疾患は、「ジェネリックドッグフード皮膚症」と呼ばれています。
食物アレルギーがある犬のドッグフード選び
食物アレルギーの犬の食事管理やドッグフード選びに関しては、本記事に合わせて【犬の食物アレルギーと食事管理】・【食物アレルギー 低アレルゲンドッグフードの選び方】をご確認ください。
皮膚が弱い犬におすすめのドッグフード

ここでは、皮膚が弱い犬におすすめのドッグフードをいくつかご紹介致しますが、皮膚に関連した何かしらの病気が原因の場合は、必ず獣医師に相談して適切な治療を受けましょう。
なお、食物アレルギーの犬のためのドッグフードに関しては、【食物アレルギー 低アレルゲンドッグフードの選び方】で紹介しております。
フォルツァディエチ デルモアクティブ
- オメガ脂肪酸が配合されている
(オメガ3脂肪酸 1.2%:オメガ6脂肪酸 3.5%) - たんぱく質の消化吸収性に配慮されている
・犬の管理栄養士としての個人的評価 ★★☆☆☆
※上記、皮膚の弱い犬に与える場合の個人的評価
フォルツァディエチ デルモアクティブドッグフードは、アレルギーに配慮した加水分解タンパクが使用されており、皮膚や被毛の健康を維持するための療法食です。
ただし、主原料にポテトを使用している点が個人的に気になります(加水分解タンパクにすることで、消化吸収性を上げている)。その他、療法食のため購入前に獣医師に相談が必要です。
ジウィピークエアドライ ニュージーランド マッカロー&ラム
- オメガ脂肪酸3&オメガ6脂肪酸が豊富な魚を使用
(成分値の詳細記載なし) - たんぱく質の吸収性に優れている
- 抗酸化成分(ビタミンE)が配合されている
- 高温加熱されていない
・犬の管理栄養士としての個人的評価 ★★★★☆
※上記、皮膚の弱い犬に与える場合の個人的評価
ジウィ(マッカロー&ラム)は、エアドライフードで生肉の栄養価値を生かしたドッグフードです。消化率が非常に高く(95%以上)、ドッグフードの殆どの栄養成分が体に吸収されるのが特徴。
ニュージーランド産で、防疫管理及び法規制によって非常に厳しい基準が守られているドッグフードで、オメガ脂肪酸3&オメガ6脂肪酸が豊富な魚を使用。関節の健康維持にも配慮して、グルコサミンやコンドロイチンが配合されています。
ヒルズ 犬用 z/d ultra 食物アレルギー&皮膚ケアドライ
- オメガ脂肪酸が配合されている
(オメガ3脂肪酸0.52%:オメガ6脂肪酸4.00%) - たんぱく質の消化吸収性に配慮されている
- 抗酸化成分が配合されている
・犬の管理栄養士としての個人的評価 ★★★☆☆
※上記、皮膚の弱い犬に与える場合の個人的評価
ヒルズ(z/d ultra 食物アレルギー&皮膚ケア)に関しては、食物アレルギーの犬だけでなく皮膚ケアが必要な犬のための療法食。消化性の高い加水分解たんぱく質が使用されており、オメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸が配合されています。
その他、抗酸化成分が含まれており、皮膚バリア機能を維持するためにも効果的な療法食です。
ヒルズのドッグフードは動物病院でも多く取り扱っている点では安心感がある商品ですが、療法食のため購入前に獣医師に相談が必要です。
オリジンオリジナルドッグフード
- 低温加熱処理に配慮
- 使用する原材料へのこだわり
- オメガ3脂肪酸・オメガ6脂肪酸配合
1 % オメガ6脂肪酸(以上) 3 % オメガ3脂肪酸(以上) 0.8 % DHA / EPA (以上) 0.2 %
・犬の管理栄養士としての個人的評価 ★★★★☆
※上記、皮膚の弱い犬に与える場合の個人的評価
オリジンオリジナルドッグフードは、犬に本来必要な栄養素(生物学的に必要であろう栄養素)について追及して作られたドッグフード。
原材料へのこだわりやオメガ脂肪酸配合に焦点を当てて考えると、皮膚の弱い犬にはおすすめ。動物性たんぱく質が豊富なため、免疫力を高めるためにも有効であると考えられる。
ただし、バラエティー豊富な動物性タンパク質が原料に使われているため、食物アレルギーの犬にはおすすめできません。
アーテミス フレッシュミックス (小型犬用)
- 抗酸化酵素(スーパーオキシドジムスターゼ)配合
- 使用する原材料へのこだわり
- 合成保存料(BHA,BHT)、着色料、人工添加物不使用
- オメガ3脂肪酸・オメガ6脂肪酸配合
(オメガ3脂肪酸 0.4%以上 ・ オメガ6脂肪酸 2.4%以上) - 栄養素が損なわれにくい調理法
・犬の管理栄養士としての評価 ★★★★★
※上記、皮膚の弱い犬に与える場合の個人的評価
アーテミスのフレッシュミックスは、良質な動物性たんぱく質を始めとした原材料へのこだわりや、単一たんぱく質への配慮、栄養素が損なわれにくい加工方法にこだわりをもったドッグフードです。
また、皮膚や被毛の健康維持に有効なオメガ3・オメガ6配合で、腸内環境の健康維持に配慮されていることから、皮膚が弱い犬の免疫力応援が期待できます。
合成保存料(BHA,BHT)や着色料、人工添加物も不使用で作られている、消化吸収性の優れたドッグフードです。
アーテミス フレッシュミックス (中・大型犬用)
- 活性酸素の除去に配慮したドッグフード
- 使用する原材料へのこだわり
- 合成保存料や着色料、人口添加物不使用
- オメガ3脂肪酸・オメガ6脂肪酸配合
(オメガ3脂肪酸 0.4%以上 ・ オメガ6脂肪酸 2.2%以上) - 栄養成分の吸収効率を高める製法
・犬の管理栄養士としての評価 ★★★★★
※上記、皮膚の弱い犬に与える場合の個人的評価
アーテミスのフレッシュミックスは、良質な動物性たんぱく質を始めとした原材料へのこだわりや、栄養素が損なわれにくい加工方法にこだわりをもったドッグフードです。
また、皮膚や被毛の健康維持に有効なオメガ3・オメガ6配合で、腸内環境の健康維持に配慮されていることから、皮膚が弱い犬の免疫力応援が期待できます。
合成保存料や着色料、人口添加物も不使用で作られている、消化吸収性の優れたドッグフードです。
ただし、鶏・七面鳥・魚・ダック・卵など複数種の動物性たんぱく質原料を使用しているため、食物アレルギーの犬にはおすすめできません。
アカナ パシフィカドッグフード
- 無冷凍で保存料ゼロ
- 使用する原材料の品質へのこだわり
- オメガ3脂肪酸・オメガ6脂肪酸配合
(オメガ3脂肪酸 2.3% 以上 ・ オメガ6脂肪酸 1.2%以上) - 小麦、トウモロコシ、グルテン不使用
- 低炭水化物
・犬の管理栄養士としての評価 ★★★★★
※上記、皮膚の弱い犬に与える場合の個人的評価
アカナのパシフィカドッグは、良質な動物性たんぱく質を始めとした原材料へのこだわりや、良質な動物性たんぱく質の含有量(最大で75%)にこだわりをもったドッグフードです。
個人的にとても好きなドッグフードメーカーで、愛犬たちのトッピングご飯のドッグフードは、以下同じメーカーのアカナグラスフェッドラムを使用しています。
愛犬に合ったドッグフードを与えよう!
一言で皮膚の弱い犬といっても、個々の犬の体質や年齢、発症している病気の有無や犬種など様々な要因で「適したドッグフード」は異なります。
ドッグフードを変更する場合は、必ず愛犬の便の状態や皮膚、被毛を始めとした健康状態を確認して、その犬に適しているか否かの判断をすることが大切です。
また、何かしらの病気を発症している犬の場合は、必ずかかりつけの動物病院に食事管理について相談しましょう。

犬たちの幸せ(=飼い主の意識の向上)を目的とし、BOWWOW Info.情報配信サイトを開設。犬の管理栄養士、救命士、介護士など、多数資格を保有。様々な企業のドッグフード開発コンサルティングや配合設計などを行う。
©️犬の情報配信サービス BOWWOW Info.