犬の食物アレルギーと食事管理〔管理栄養士解説〕

近年、犬や猫の食物アレルギーが増え、ドッグフードを中心に犬の食事に悩む飼い主さんも増えました。今回は、犬の食物アレルギーやドッグフードを選ぶときに欠かせないアレルギー検査について紹介致します。

その他、食物アレルギーにおける低アレルゲンドッグフードの選び方については、【低アレルゲンドッグフードの選び方】で紹介しております。


犬の食物アレルギー

ここでは、犬がアレルギー反応を示しやすい食べ物やアレルギー症状について紹介致します。なお、皮膚に重度の痒みが生じている場合、食物アレルギー以外にも様々な病気が原因として考えられるので、必ず獣医師に相談しましょう。

アレルゲンになりやすい食べ物

ある特定の食べ物に対してアレルギー症状を示すことを「食物アレルギー」と呼び、犬においては「たんぱく質」に対してアレルギー反応を示すケースが多いのが特徴です。

中でも小麦や牛肉、牛乳、大豆やトウモロコシ、魚にアレルギー反応を示すことが多いと考えられていますが、さつまいもなどの野菜や米類などにアレルギー反応を示す犬もいるなど、アレルゲンに関しては犬によって様々です。

ドッグフードに含まれる「(人工)添加物」や消化性の悪いたんぱく質原料が原因になることもあるので注意が必要です。

※アレルゲン: アレルギーの原因となる食べ物(物質)

なお、食物アレルギーは「食物有害反応」の1種であり、犬が口から摂取したものによって有害反応が体に起こるのは、食物アレルギーに限ったものではありません。

犬の食物有害反応(食物アレルギーのみ免疫が関与)
・食物アレルギー ・食物不耐症 ・食中毒 ・先天性代謝障害 ・食物特異体質


犬のアレルギー症状とは?

食物アレルギーは年齢問わず発生しますが、犬の場合は特に1才未満の子犬期から生じることが多く、以下症状が主に現れます。

  • 嘔吐や下痢などの消化器系症状
  • 耳部分の紅斑(皮膚表面に発赤を伴った状態)
  • 口や目の周辺の重度の痒みや炎症
  • 皮膚の慢性的な炎症
  • 脱毛症状や色素沈着
  • 膿皮症や外耳炎の併発
  • アトピー性皮膚炎の併発

犬の食物アレルギーの原因

犬の食物アレルギーだけでなくアレルギー全般が「体の免疫」に大きく関与しており、免疫機能が特定の物質に対して過剰に反応することで、様々な症状が引き起こされます。

その他、食物アレルギーに関しては低品質な消化性の悪いドッグフードや消化しにくい「たんぱく質」が原因になっていることもあります。

アレルギーは免疫に大きく関与しているため、免疫細胞が集中している腸内環境の継続的な乱れによってアレルギー反応が生じやすい体質になることも。ドッグフードは、価格の安さだけで選ぶのではなく原材料や品質にも配慮が必要です。


食物アレルギーになったときの対処法

アレルギー症状が確認された場合は、アレルギー検査で原因となるアレルゲンを特定することが大切です。

まずは動物病院でアレルゲンの検査

まずは、動物病院で犬のアレルゲンを特定するための検査を受けましょう。

昔はIgE検査しかなかったため、犬のアレルゲン物質を特定することが難しかったものの、近年ではリンパ球を測定する検査方法が確立されたので、アレルギー反応を示している物質の特定が昔より簡単になりました。

アレルギーの原因となる食物の判定は血液検査で行われますが、以下2種類の検査を行うことができる動物病院に相談することをおすすめします。

  • 抗体(IgE)を測定する検査
     犬の場合、IgE(免疫グロブリンの一種)によって引き起こされるアレルギーは3割程度
  • 白血球の仲間(リンパ球)を測定する検査
     リンパ球を測定する検査で、IgE検査だけでは分からなかったアレルゲンが発見できるようになった。リンパ球によって引き起こされるアレルギーは7割程度

これら結果をもとにアレルゲンと予測される原料を使用していない除去食を一定期間与えることで、症状が軽減されるか確認します。

痒みや炎症など重度の症状が引き起こされている場合、アレルギー検査だけでなく、必ず獣医師に現状起こっている症状の緩和に有効な治療法があるか確認しましょう。

補足:犬のアレルギー検査測定項目

リンパ球反応検査では、以下項目に対してのアレルギーを測定することができます。

主要食物アレルゲン
牛肉 豚肉 卵(白身・黄身) 鶏肉 牛乳 大豆 小麦 トウモロコシ
除去食アレルゲン
米 馬肉 羊肉 七面鳥肉 アヒル肉 鮭 タラ じゃがいも えんどう豆

参考
・公益社団法人 埼玉県獣医師会HP.「犬の食物アレルギーについて」.(参照 2020-11-9)
・動物アレルギー検査株式会社HP. 「リンパ球反応検査」.(参照 2020-11-9)

ドッグフードを変更する

犬が今までに食べたことがないドッグフードを選び、アレルギー症状が軽減されるか様子をみます。

抗体(IgE)測定検査と白血球(リンパ球)測定検査によってアレルゲンが特定されている場合は、ドッグフードに含まれる原料を確認してアレルゲン物質が含まれていないものを選びましょう。

ドッグフードに含まれる添加物がアレルギー原因になることもあるので、アレルギー体質の犬には念のため無添加ドッグフードを選ぶことをお勧めします。

その他、食物アレルギーにおける低アレルゲンドッグフードの選び方については、【低アレルゲンドッグフードの選び方】で紹介しております。


除去食で症状が改善された場合

除去食で症状が改善された場合は、以降総合栄養食だけでなくおやつにも注意を払って愛犬の食事管理を行いましょう。

ドッグフード選びでは、免疫力を強化するために良質な原料を使用したものを選び、手作りご飯の場合はビタミン類(特にビタミンE・ビタミンC)が不足しないよう気をつけましょう。

その他、免疫力強化には腸内環境の健康維持も重要です。腸内環境の健康維持を行うための食事に関しては【軟便や下痢になりやすい犬の食事】で詳しく紹介しています。



参考文献
・動物臨床医学研究所 山根義久,イヌ+ネコ家庭動物の医学大百科,パイインタ-ナショナル,2012.
・奈良なぎさ,犬と猫の栄養学,緑書房,2016.

記事作成者:  望月 紗貴

犬たちの幸せ(=飼い主の意識の向上)を目的とし、BOWWOW Info.情報配信サイトを開設。犬の管理栄養士、救命士、介護士など、多数資格を保有。様々な企業のドッグフード開発コンサルティングや配合設計などを行う。

©️犬の情報配信サービス BOWWOW Info.

犬の肥満の見分け方や肥満のリスク〔獣医師解説〕

目次:
1、犬の肥満の見分け方(判断基準)
2、肥満がもたらす犬への影響
3、食事管理で適正体重を維持しよう!

日本国内で飼われている犬に関して半数以上が肥満傾向にあり、犬の生活習慣病も増えていますが、病気を中心に肥満は犬の体にどのような影響を及ぼすのでしょう?今回は、病気の予備軍ともいわれる犬の肥満について、肥満の見分け方や病気リスク、対策などを中心に獣医師に解説していただきました。

1、犬の肥満の見分け方

ここでは、犬の肥満が及ぼすリスクや肥満度の見分け方についてご紹介致します。自宅で簡単に行える見分け方ですので、しっかりと愛犬が肥満、または肥満気味でないか確認しましょう。

1-1、肥満の見分け方

犬の肥満の見分け方の代表的なものは、① 犬種による適正体重を用いるもの ② ボディ・コンディション・スコア(BCS)を用いるものなどがあります。

前者は犬種による適正体重の15%を超えた場合に肥満と判断し、後者は外観や触診などによる痩せ~肥満の(一般的には)五段階で肥満を判断します。BCSの判定方法についてこれから説明しますが、BCSで見分ける方法は慣れれば家庭で簡単に行えるので、日々愛犬の肥満度を確認。肥満傾向にある場合は、病気予防のために食事管理方法の見直しを行ってください。

1-2、BCSの判定方法

BCSの見分け方では、以下の3点を基準にして判定を行います。

① 胸部を触ったときに肋骨がどの程度触れられるか?
②  犬を上からみたときに腰のくびれがどの程度あるか?
③ 犬を横からみたときお腹がどの程度へこんでいるか?

◇ BCSの判定フローチャート(簡易版) ◇

1)胸部を触ったとき脂肪の下に肋骨を感じる
YES→BCS4以下   NO→BCS5(肥満)

2)犬を上から見たとき腰のくびれが明らかにわかる。
犬を横から見たときお腹のへこみが明らかにわかる。
YES→BCS3以下   NO→BCS4(体重過多)

3)胸部を触ったとき肋骨の上の脂肪がほとんど感じられない。
YES→BCS2以下   NO→BCS3(適正体重)

4)胸部の肋骨と臀部の骨盤が外見からみてわかる(皮膚に骨が浮き出ている)。
YES→BCS1(痩せ)  NO→BCS2(やや痩せ)

1-3、犬の肥満状況

参照データによって多少異なるものの、日本では肥満の犬(BCS 5)が15.8%程度、体重過多の犬(BCS 4)が39.8%程度だという報告があります。恐ろしいことに、この結果をみると飼育されている犬の半数以上が肥満傾向であるということになります。

肥満は病気だけでなく犬の寿命にも関わっており、あるアメリカの研究では肥満の犬は、健康な犬と比較して2.5年程度寿命が短くなったと報告されています。ミニチュア・ダックスフンド、チワワ、ポメラニアンなどの犬種では肥満傾向になる犬が特に多く、驚くべきことに犬種によっては最大で90%近くの犬が肥満傾向にあると報告されています。

2、肥満がもたらす犬への影響

ここでは、肥満によって発症しうる病気リスクや犬の体への負担について説明致します。ついつい間食を与えてしまいがちですが、愛犬の病気リスクをしっかりと把握して体重管理に努めましょう。

2-1、肥満がもたらす病気リスク

犬の肥満によって引き起こされる病気は数多くあり、糖尿病や高脂血症、膵炎などの内分泌・代謝性疾患を思い浮かべる方が多いかと思いますが、内分泌・代謝性疾患に留まらず、血栓症や動脈硬化症、肺高血圧症などの循環器系疾患を引き起こすリスクがあります。

体重増によって四肢の負担が増え、骨関節性疾患のリスクも高めます。その他、腫瘍性疾患に関しては乳腺腫瘍、膀胱の移行上皮癌では肥満との関係性があるといわれています。皮膚疾患や泌尿器疾患リスクに関しても肥満が原因で引き起こされることがあり、肥満は数多くの犬の病気発症リスクを高める危険性があるので早めの対策が必要です。

2-2、体にかかる負荷リスク

肥満は病気を引き起こすだけではなく、犬の既存の病気の悪化リスクも高めます。例えば気管虚脱の犬では、肥満により気管周囲に脂肪が蓄積することで物理的に呼吸を阻害。病気を悪化させるリスクが高まると考えられています。

また、膝蓋骨脱臼などの骨関節性疾患では先天的に病気のリスクを持っている場合がありますが、脂肪による体重増が病気を悪化させることで病気を発症させてしまうこともあります。肥満により発症した病気が、ドミノ倒しのように既存の病気を悪化させるようなこともあるので犬の体重増加には注意が必要です。

先述で説明したように、肥満は犬の糖尿病などの内分泌・代謝性疾患を引き起こし、これらの疾患は高血糖や高脂血症、高血圧などの症状を引き起こし、さらに心臓や血管にダメージを与えるようなリスクを引き起こします。

2-3、肥満がもたらすその他の病気リスク

犬で多い循環器疾患として僧帽弁閉鎖不全症という病気があります。この病気は、心臓から全身へ血液を循環させるときに大きな負荷が発生する部位である「僧帽弁」の機能不全が原因で引き起こされるため、高血圧は心臓から全身へ血液を送る負荷の増加と言えます。僧帽弁閉鎖不全症は肥満による高血圧で、さらに病状が悪化するリスクを高めます。


3、食事管理で適正体重を維持しよう!

ここでは、犬の適正体重を維持するための食事管理や炭水化物についてご紹介致します。

3-1、食事管理におけるリスク低減

先述の通り、肥満は犬の寿命を2.5年程度短くします。肥満によって病気のリスクが上がるということからも、肥満が犬の健康を害するのは間違いないでしょう。そこで、最も肥満対策に効果的な方法は食事管理といわれています。

肥満と食事制限の関係を調べた研究では、ドックフードの量を2/3にした場合に16週間で体重は約18%、体脂肪は約43%減少したという報告があります。この体重の減少(約3.7kg)は、体脂肪量の減少(約3.1kg)とほぼ一致しており、筋肉量の減少などの食事療法の副作用は少ない可能性が高いといわれています。

素人の場合は極端な犬の食事量調整は危険ですので、獣医師に都度相談しながら食事量を調整することが大切ですが、いずれにせよ食事管理が肥満による様々なリスクを減少させる可能性は高いといえるでしょう。

3-2、食事管理と炭水化物

人においては一般的なダイエットとして、炭水化物の摂取量を減らす糖質オフダイエットなどの方法がありますが、犬の食事管理と炭水化物は関係があるのでしょうか?

肉食の犬には炭水化物は不要である、炭水化物によって犬が太る、犬は炭水化物を分解できないなどの様々な意見が散見されますが、食事管理に関して言えば炭水化物をはじめとした個々の栄養素の摂取量を考えることは、栄養学的な専門知識を駆使しないといけないので少し難しいことかもしれません。

ちなみに、犬は狩りをしていた時代から動物の胃などの消化器官に含まれる草や穀物を栄養源としていたといわれています。そのため、全食事量と比較して肉の摂取量が多いものの雑食性だと考えることができます。

このような背景から、犬の体に完全に炭水化物が不必要だというのは考えにくいといえるでしょう。また、犬の体の構造から考えると、唾液中には炭水化物を分解する酵素がほとんど含まれていないのが特徴ですが、犬の膵臓から分泌されている消化液にはその能力があります。そのため、犬は炭水化物の消化が苦手だとしても、少量であれば炭水化物を分解することはできます。

3-3、食事管理の方法

犬の食事管理における肥満対策では、一日に総合栄養食とおやつをどの程度与えているのか正確に把握することが大事です。また、犬は与えられた食事を一気に食べてしまうことが多い動物であり、一度にたくさんの食事を消化するためには必要以上の血糖値の上昇を招き、肥満の原因になることがあります。

そのため肥満気味の犬であれば1日の食事量を減らして、ごはんの回数を増やし、1週間後に体重を測定。体重に変化がない、または体重が増えてしまった場合は1回の食事量をさらに減らして再び1週間後に体重を測定をしながら、少しずつ減量対策を行うと良いでしょう。

気を付けておきたい点としては、お腹が空いて可哀想だからと間食としてのおやつを与えないということです。家族の方がこっそり与えるようなことがないよう、事前に家族全員が犬の肥満状況やそのリスク、食事量に関して把握しておかなければいけません。

まとめ

今回は、一獣医師としての観点から犬の肥満リスクや食事管理の重要性などをご紹介させていただきましたが、犬の肥満は様々な病気リスクを高めるだけでなく現状犬が発症している病気を悪化させ、ときに寿命にさえ影響することが分かりました。

私も個人的に一愛犬家として甘やかしてしまいがちですので、飼い主さんの気持ちはとても良く理解できます。最近では、種類は少ないものの総合栄養食基準を満たしたおやつもあるので、このようなおやつを活用したり、普段与えていないドッグフードをおやつとして与え、1回の食事量をその分減らすような工夫も必要です。

いずれにせよ、病気になったり体に負担がかかったりする方が犬にとってはデメリットが大きいので、おやつの量は1日の総合栄養食の2割以内(理想としては1割程度)で、犬の健康を第一に考えて調整してあげましょう。なお、犬の食事管理についての記事一覧は【犬の食事管理(リンク)】をご確認ください。




WRITER Profile

獣医師ライター:  若林 薫
子犬や子猫の治療、健康管理を得意分野とする。動物病院の獣医師と飼い主を繋ぐための専門的で分かりやすい記事を執筆。獣医師免許証保有。

サイト運営者:  望月 紗貴
犬たちの幸せ(=飼い主の意識の向上)を目的とし情報提供サイトを開設。犬の管理栄養士や看護師、介護士資格など保有。他社の記事監修・作成も多数請け負う。

犬の腎不全における食事管理〔管理栄養士解説〕

目次:
1、犬の腎不全と腎臓病
2、腎不全の犬の食事管理
3、腎不全の犬の食事管理
4、食欲が低下している場合の対処

犬の腎不全や腎臓病で悩む飼い主さんが多くいますが、犬の腎不全においては血液検査で早期に発見することが難しく、病気に気がついたときには既に食事管理が必要になっているケースが多いのが特徴です。今回は慢性腎不全の食事管理のポイントを中心にご紹介致しますので、愛犬の手作りご飯やドッグフード選びで参考にしてみてください。

なお、ドッグフード選びで悩んでいる方は【腎臓サポートドッグフードの比較】記事で腎臓に問題がある犬のためのドッグフード比較を行っておりますので、ご確認ください。


1、犬の腎不全と腎臓病

腎不全は何かしらの原因で腎機能が低下した状態を意味し、一般的には腎臓機能の70~75%程度が失われた段階で腎不全(高窒素血症)と呼ばれます。腎不全の犬に関しては、通常尿で排出されるべき不要な老廃物が体外に排出されなくなってしまい体の中に蓄積しやすくなります。

それに対して、腎臓病の犬は腎臓自体の病気であり、腎臓病であっても腎臓機能の70~75%以上が失われた状態でない限りは腎不全とは呼びません。そのため、犬の場合は腎不全になると血液検査でBUN(血中尿素窒素)が上昇しますが、腎臓病の犬であっても70%以上の腎臓機能が喪失されないと血液検査結果で発見できないということになります。

最近では、慢性腎臓病の早期発見のために IDEXX SDMAと呼ばれる検査を院内でできる動物病院も増えたので、手作りご飯やドッグフード選びの際は愛犬の腎機能評価のために血液検査(クレアチニンやBUN、リン)と尿検査(尿比重)に合わせて、SDMA検査も行うと尚良いでしょう。

2、腎不全の犬の食事管理

愛犬が腎不全になってしまった場合は、必ず獣医師に相談して腎臓に負担がかかりにくい食事管理を行いましょう。


2-1、まずは獣医師に相談

腎臓病や何かしらの原因によって慢性腎不全が生じている犬の場合、動物病院の治療に合わせて毎日の食事管理が大切になります。市販でも慢性腎臓病の療法食が販売されていますが、はじめは獣医師に療法食について相談して、愛犬の状況にあったものを処方してもらうと安心です。

2-2、腎不全のステージと食事管理

腎不全のステージは一般的に1~4の4つあり、ステージ1の場合であっても食事管理が大切。ステージ2(クレアチニン値が1.4~2.0㎎/dL)からステージ3(クレアチニン値が2.1~5.0㎎/dL)以上の場合(数値が2.0㎎/dL以上になってしまったら)必ず食事管理を徹底しなければいけません。

腎不全の場合、定期的に健康診断を行っていても、一般的な血液検査結果では病気が進行するまで分からないことが殆どですので、発見したときには既に食事管理が必須になるケースが多いのが特徴です。また、ステージ1~2では臨時症状がみられないことが多い(症状があっても徐々に進行する)ので、飼い主さんが病気に気がつくのが遅くなってしまいます。

3、腎不全の犬の食事管理|6つのポイント

3-1、低タンパク質の食事

慢性腎不全の犬の場合は、低タンパク質な食事が基本です。犬がタンパク質を食事で摂取した場合、腎臓はタンパク質に含まれる窒素化合物(老廃物)である尿素をろ過しますが、この過程で起こる腎臓への負担を軽減するためにタンパク質の制限が必要になります。

また、タンパク質に含まれる窒素化合物は慢性腎不全の犬においては尿毒症リスクを高めることから、食事で制限することによって老廃物が体内に蓄積しにくい環境をつくります。すでに尿毒症の犬の場合は、タンパク質を制限することによって嘔吐や下痢症状の軽減に役立つとも考えられています。

当たり前のことですが、制限はするもののタンパク質は慢性腎不全の犬にとっても重要なエネルギー源です。単純に制限するだけでなく、体重の大幅な減少や低アルブミン血症、貧血症状を引き起こさないように良質な動物性タンパク質を使用しているドッグフードを選ぶことが大切です。ちなみに、手作りご飯を与える場合は良質な赤身肉などを使用したり、リンの少ない肉や魚を調べて利用したりするなどの工夫が必要です。

ドッグフードのタンパク質量について考える場合、慢性腎不全であれば14~20%DM(乾物量)が一般的に推奨されていますが、腎機能の低下に応じて食事中のタンパク質の制限値を考えるため、検査結果をもとに獣医師に相談して決めましょう。海外の人気ドッグフードは全体的に食事に含まれるタンパク質量基準が高いので、慢性腎不全の犬については十分注意が必要です。


3-2、脂肪が多めの食事

腎不全の犬の場合、尿毒症性の悪液質によって食事で摂取した栄養素が正常に代謝されなくなることがあります。それに加えて重要なエネルギー源であるタンパク質を食事で制限しなければいけないので、犬の体に十分なエネルギーを補給するために高エネルギー、高脂質の食事を心がけます。

手作りご飯の場合は、タンパク質を制限しながらも脂質の多い肉や魚を使用することをおすすめしますが、いずれにせよ1回の食事量を減らして食事回数を3回以上に変更するなど、内容だけでなく食事の与え方にも配慮する必要があります。

3-3、リンの制限

腎不全の犬用療法食はリンが制限されていますが、これは慢性腎不全の進行を遅らせるためです。リンが多い食事は、腎臓にカルシウム塩が沈着させることから腎不全を進行させる原因になると考えられています。ドッグフードであればリン0.15~0.3 DM(乾物量)の範囲を目安にラベルを確認して選ぶとよいでしょう。

一概に腎臓ケア用ドッグフードといってもリンなどの含有量は異なりますので、ラベルに詳細が明記されていない場合はメーカーに問合せて事前に確認することをおすすめします。手作りご飯の場合は、玄米を中心にリンの多い食材の使用は避けましょう。同じタンパク質量の食材であっても、食材中のリンの量に差が生じるため、手作りご飯でタンパク質源の食材を選ぶときはリンが少ないものを選ぶことをおすすめします。

3-4、ナトリウムの微調整

多くのインターネットで腎不全の犬のナトリウム制限について紹介されていますが、ナトリウムに関しては特に注意が必要です。犬の体の脱水状態や血清Na濃度を検査で確認しながら、都度獣医師に相談して調整することをおすすめします。

ナトリウムを食事で制限するのは、重度の腎不全の犬における高血圧や高カリウム血症の回避などが主な理由ですが、状況によってはナトリウム量を制限しすぎることにより細胞外液量が減少。それによって脱水症状が引き起こされやすくなるので、腎不全の度合いによって都度獣医師にナトリウム制限の必要性や制限レベルなどを確認することをおすすめします。

ただし、いずれにせよ塩分量の多いおやつを犬に与えたり、手作りご飯で塩分量が極端に多い食材を使用したりしないよう注意しましょう。

3-5、オメガ3脂肪酸を取り入れる

オメガ3脂肪酸は健康体の犬であっても食事に取り入れることをおすすめする成分ですが、慢性腎不全の犬の場合は腎臓内の炎症緩和や高血圧軽減のために、EPAやα-リノレン酸が有効です。ドッグフードを与えている場合は犬用サプリメントを活用するのがおすすめ。手作りご飯の場合はサプリメントの代わりに青魚などを取り入れるのも良いでしょう。


3-6、抗酸化物質を取り入れる

抗酸化作用がある食材は、主にβカロテンやビタミンC、ビタミンEなどの成分です。愛犬の手作りご飯で役立つ抗酸化作用が期待できるに関しては、【おすすめ食材(2)】をご確認ください。また、最近のドッグフードは抗酸化作用がある成分を多めに含んでいるものがあります。

サプリメントを使用する際は特定の成分が過剰にならないよう注意しましょう。また、慢性腎不全の犬の場合、抗酸化作用が期待できる食材が腎臓に存在する細胞を保護。腎不全によって生じる症状を軽減するために効果を示すことがあります。

4、腎不全で食欲が低下している場合の対処

慢性腎不全を発症している犬の場合、ガスとリンと呼ばれるホルモンの血中濃度が高まることで胃炎が引き起こされやすく、犬の食欲が低下することが多くあります。慢性腎不全で食欲が安定しない場合は、早めに獣医師に相談して胃酸の分泌を制御するための薬など、何かしらの食欲改善に効果的な薬(治療)について考えるのも一つの選択肢です。

5、まとめ

今回は、腎臓病の犬の食事管理についてご紹介致しました。ドッグフード選びで悩んでいる方は【腎臓サポートドッグフードの比較】記事で腎臓に問題がある犬のためのドッグフード比較を行っておりますのでご確認ください。


参考文献:
・株式会社緑書房,犬と猫の栄養学,奈良なぎさ,2016.
・阿部又信,臨床栄養学―獣医学教育モデル・コア・カリキュラム,インターズー,2015.
・阿部又信,動物看護のための小動物栄養学(改訂版) 日本小動物獣医師会,ファームプレス,2003.
・動物臨床医学研究所 山根義久,イヌ+ネコ家庭動物の医学大百科,パイインタ-ナショナル,2012.
・田中茂男,犬の医学,時事通信社,2011.


WRITER Profile

記事作成者:  望月 紗貴
飼い主の意識の向上(=犬たちの幸せ)を目的とし情報提供サイトを開設。犬の管理栄養士、老犬介護士、ペット看護師を中心に多数ペット資格を保有。他社の記事監修・作成も数多く請け負う。

軟便や下痢になりやすい犬の食事〔管理栄養士解説〕

目次:
1、腸の健康維持の重要性
2、軟便や下痢の原因と対処法
3、軟便や下痢の犬の食事管理のポイント
4、その他に配慮したいこと
5、軟便や下痢の場合の食事管理の注意点

食事管理で犬の腸の健康維持を行うことは、免疫力を維持する(向上する)ために非常に重要なポイントとなり、様々な病気予防に効果的です。今回は、軟便や下痢をしやすい犬の食事管理のポイントについて簡単にご紹介いたします。

1、腸の健康維持の重要性

犬だけでなく人にも同じことがいえますが、病気を引き寄せにくい健康な体づくりをするためには腸の健康維持は食事管理で重要視したいポイントです。先天的(生まれながらの)理由で軟便や下痢を引き起こしやすい犬も多くいますが、犬の体全体の約60%~70%程度(犬によって個体差あり)の免疫細胞が腸管に集中。

そのため、免疫力を維持(向上)して悪性腫瘍やその他の病気が発症しにくい体づくりをするためには、腸の健康維持に配慮することが大切です。その他、愛犬にどんなに良質な食事を与えていても、腸が不健康だと体に必要な栄養素を効率よく吸収することができないので、日々愛犬の便の状態を確認しながら食事管理を行いましょう。



2、軟便や下痢の原因と対処法

犬に多い軟便や下痢ですが、まずは原因を中心にご紹介いたします。愛犬の便の状態が好ましくない場合は、獣医師に相談して適切な検査を受けましょう。

2-1、軟便や下痢とは?

軟便や下痢は、便に含まれる水分量が過剰に上がった状態を指し、何かしらの原因で腸の働きが異常になっていることで犬の便中の水分量が上がります。食事で食べ物を摂取すると犬の腸では体内で食物を移動するために蠕動運動が生じますが、この運動が通常より活発になってしまうと軟便や下痢になります。

また、食事で摂取した水分が上手く体に吸収されずに便として排泄されたり(直腸から正常に水分や電解質の再吸収が行われない)、過剰な水分分泌が腸から生じたとき(直腸内への水分分泌量が増える)などに軟便や下痢が引き起こされます。明確な定義はないものの、ある程度便の形状が保たれていれば「軟便」、液状の便を(水溶性)下痢と呼びます。

2-2、まずは動物病院で検査

犬の軟便や下痢が症状として引き起こされる病気は種類が多く、一概にこの病気であると特定することができません。そのため何より大切なことは、動物病院で適切な検査をして病気が原因であるならば病気の根本的な治療を行うことです。

軟便や下痢が引き起こされやすい病気の一例としては、急性の下痢であれば病原性細菌やウイルス感染症、消化器内の寄生虫など。慢性的な下痢の場合は、腸や胃などの消化器官の腫瘍や慢性特発性腸疾患、食物過敏症(食物アレルギー)、膵炎をはじめとする膵外分泌疾患などが原因として考えられます。

2-3、病気以外の軟便や下痢の原因

しかしながら、犬の軟便や下痢に関しては全ての原因が病気というわけではありません。水分摂取量が適切でなかったり、季節的な温度変化、ストレス、生まれ持った体の性質が原因で軟便や下痢を引き起こしやすい犬もいるので、食事管理だけでなく生活環境の見直しをすることも大切です。

3、軟便や下痢の犬の食事管理のポイント

犬の軟便や下痢に関しては必ず原因に応じた食事管理をしなければいけませんが、ここでは病気が原因でない場合の一般的な体質改善に向けた食事管理のポイントについてご紹介いたします。

3-1、消化しやすい食事か見直す

まずは、現在与えているドッグフードや手作りご飯、食べ物が犬の消化機能に適したものであるか見直すことが大切です。頻繁に犬が軟便や下痢をする場合や食事内容を変更したときに急性の下痢症状が引き起こされた場合は、動物病院でアレルギー検査をすることをおすすめします。

軟便や下痢をしやすい犬の場合は、炭水化物(米類、トウモロコシ、小麦などの穀物)が主原料になっていない食事を与えるのは大前提ですが、タンパク質が主成分であっても食事中の植物性タンパク質が多すぎないかを確認。消化吸収性に優れた動物性たんぱく質を使用した食事を心がける必要があります。

3-2、主原料は良質な動物性たんぱく質

犬は生肉(または加熱肉)の消化を得意とするといわれていますが、これは犬の食生活の歴史的背景だけが理由ではなく、腸の長さが短いため消化吸収に他の動物ほど時間をかけることができないことも理由としてあげられます。そのほかにも歯の構造の違いや唾液腺の違い(アミラーゼの分泌の有無)などの体の構造の違い、必要栄養素の違いなどが理由として考えられます。

犬は狩りをしていた時代から野生動物の胃の内部に残っている草や穀物を栄養源にしていたと考えられていますが、いずれにせよこれらに関しては犬が摂取する食事全体のごく一部。犬の体においては動物性たんぱく質の重要性は否定できません。

また、軟便や下痢を繰り返す犬には、消化器に負担がかからないよう脂肪分の少ない動物肉(牛であればヒレ部分、鶏であればササミや胸部分、鹿肉や馬肉など)を使用するなど、消化吸収しやすい良質な食材に配慮することが大切です。

3-3、適切な食物繊維を食事に含める

犬の食事に関しての動物性たんぱく質の重要性をご紹介いたしましたが、肉だけを与えていれば犬の体に必要な栄養素がすべて補われるというわけではありません。犬に必要な栄養素などの基礎知識に関しては【犬の手作りご飯|量や配分など】をご参照ください。

その中で、軟便や下痢を繰り返す犬の腸の健康維持に大切なのが、適切な食物繊維が食事に含まれているか否かです。普段の食事管理では異なる種類の食物繊維をバランスよく摂取することが大切ではありますが、軟便や下痢を引き起こしている犬の場合、大腸性の下痢か小腸性の下痢かによっても多少異なるものの、不溶性食物繊維は制限。食事には水溶性食物繊維を取り入れます

水溶性食物繊維は、便中の余分な水分を吸収する効果が期待できることから便を固くするために有効です。また、腸内に存在する細菌を吸着して下痢の症状を緩和させる役割も補うと考えられています。

水溶性食物繊維は、キャベツやイモ類などの野菜類(ペクチン)や海藻類(アルギン酸)などに多く含まれており、軟便や下痢のときに犬に与えるのは極力避けたい不溶性食物繊維に関しては、米や小麦などの穀物に多く含まれています。ただし、水溶性食物繊維であっても過剰に与えるのは禁物ですので、食物繊維は食事のバランスを考えて取り入れましょう。

3-4、サプリメントを与える場合

病気が原因でなく慢性的に下痢をする場合は、サプリメントで腸の健康維持を行うのも効果的です。特に老犬の場合、加齢に伴って善玉菌が減少しやすくなるので注意しましょう。

胃腸ケアを目的とした犬用サプリメントでよく使用されている成分は、消化酵素の分泌を促すための「酵素」、善玉菌を増やす(活性化する)ための「乳酸菌」、「酪酸菌」、「納豆菌」、「フラクトオリゴ糖」など。悪玉菌を制御するための「(マンナン)オリゴ糖」などです。

サプリメントの選び方のポイントとしては、胃腸ケア成分が1つに偏らずにバランスよく含まれていること。継続して犬に与えるのであれば化学合成添加物が含まれていないものを選ぶことをおすすめします。

4、その他に配慮したいこと

ここでは、軟便を繰り返す犬の食事内容以外の配慮についてご紹介いたします。繰り返しになりますが、病気が原因で下痢になってしまった場合は必ず獣医師の指示に従ってください。

4-1、食事の与え方

重度の下痢で犬の便中の水分量がとても多い場合、動物病院での薬の処方に合わせて食事の与え方に注意が必要です。獣医師によって判断は異なりますが、一般的には数回(1日)絶食させて様子を見るよう指示がでます。免疫力が低下していない健康体の犬であれば、消化器を刺激しないよう24時間絶食。12時間絶水することがあります。

しかしながら、犬の健康状態によっては一時的であっても絶食や絶水が危険な場合があるので、かかりつけの獣医師の判断に従いましょう。また、絶食後に食事を与える際、ドッグフードであればふやかすなどして消化吸収しやすい形状にした上で一日数回に分けて少量ずつ与える。胃が空の状態ですので、徐々に消化器官に慣らしていきましょう。

4-2、脱水症状に気を付ける

軟便や下痢を生じている場合は、過剰な水分が便として体外に排出されてしまうため脱水症状に気をつける必要があります。子犬や免疫力が極度に低下している犬の場合、短時間で命を奪われることがあるので気をつけましょう。

脱水症状が生じている場合は、動物病院で脱水症状改善のために水分や電解質を体に補充する処置(経口・または非経口の補液を使用)が行われることがあります。その他、基本的に健康体の犬であれば体に必要な水分は自ら摂取しますが、軟便・下痢の犬に限らず新鮮な水は常に飲めるよう環境を整えておきましょう。

4-3、ストレス要因がないか見直す

犬は非常に繊細な生き物ですので、飼い主が気づかないような些細な変化に反応してストレスをため込みます。そのため、病気ではないのに軟便や下痢を繰り返す犬の場合はストレス要因がないかを見直しましょう。

犬のストレス要因になりやすいものは、飼い主との不適切な関係性や居住場所、家族(同居犬含む)を中心とした環境の変化、運動不足や過度な運動などです。日頃から愛犬の仕草や行動の変化をしっかりと観察。早い段階でSOSに気づいてあげることが大切です。

4-4、愛犬の軟便や下痢は早めの対策を

急性的な下痢の場合は、早めに原因を突き止めて対処しないと下痢が習慣化しやすくなります。慢性化すればするほど治りにくくなるので、便の状態は都度細かく確認して早期発見を心がけましょう。

5、軟便や下痢の場合の食事管理の注意点

ここでご紹介させていただいた食事管理のポイントに関しては、病気が原因でないことが前提の内容です。万が一消化器系の疾患がある犬の場合、それぞれの病気に適した食事管理が必要となるので気をつけましょう。一例として、胃炎などが生じている場合は胃の負担を軽減させるために「低脂肪食」を利用。

膵炎の場合は膵外分泌を抑えるために「低たんぱく質・低脂肪」の食事が推奨されることがあります。病気が原因で犬が軟便や下痢をする場合は、必ず獣医師に食事管理においての注意点を確認しておきましょう。その他、一言で犬といってもそれぞれ健康状態や消化吸収能力、適した食事などは異なります。

食事の見直しをする場合は、一般的な見解はあくまで参考として愛犬の便の状態を日々確認。便が安定するまでに長期間かかることがありますが、時間をかけてでも愛犬の健康状態や体に適した食事の見極めをすることが大切です。


参考文献:
阿部又信,臨床栄養学―獣医学教育モデル・コア・カリキュラム,インターズー,2015.
阿部又信,動物看護のための小動物栄養学 改訂版 日本小動物獣医師会,ファームプレス,2003.
動物臨床医学研究所 山根義久,イヌ+ネコ家庭動物の医学大百科,パイインタ-ナショナル,2012.
田中茂男,犬の医学,時事通信社,2011.


WRITER Profile

記事作成者:  望月 紗貴
飼い主の意識の向上(=犬たちの幸せ)を目的とし情報提供サイトを開設。犬の管理栄養士、老犬介護士、ペット看護師を中心に多数ペット資格を保有。他社の記事監修・作成も数多く請け負う。

犬にダニを見つけたら?対策や取り方など

目次

1、犬に寄生するダニとは?
2、ダニによって引き起こされる症状
3、犬にダニを見つけたら?
4、犬についたダニの取り方
5、効果的なダニ対策について

暖かくなってくると、愛犬の散歩や外出の際にダニが心配になりますよね。
犬に寄生するダニは種類が多く、種類によって引き起こされる症状も異なりますが、痒みを中心に犬のQOL低下の原因になるので早めに対策を行いたいものです。
今回は、犬に寄生するダニが引き起こす症状や対策などご紹介致します。

1、犬に寄生するダニとは?

犬に寄生するダニの種類は非常に多く、被毛や皮膚だけでなく外耳道や鼻腔に寄生することもあります。
ダニの種類は、フタトゲチマダニ、クリイロコイタマダニ、ツリガネチマダニ、キチマダニ、ニキビダニ、ツメダニ、ヒゼンダニなどで、多くの場合は皮膚に寄生しますが、疥癬という病気で知られているようにヒゼンダニの場合は耳に寄生することもあります。
その他、症状は出にくいものの犬肺ダニという鼻腔に寄生するダニもいるので注意が必要です。

2、ダニによって引き起こされる症状

ダニによって引き起こされる症状はダニの種類によって異なりますが、多くみられるのが痒みや炎症・脱毛などで、その他ダニの寄生部位によっては犬の歩行に支障をきたすものもあります。
また、二次感染による化膿が原因で、(※1)浮腫や出血を中心に皮膚病変が引き起こされるケースが多いのが特徴です。
症状の現れ方は犬の免疫力の状態によって左右されることもあるので、免疫力が低下傾向にある子犬やシニア犬、病中・病後の犬などは特に注意が必要です。

(※1)浮腫|皮下組織の間部分に水分が過剰に貯留している状態

3、犬にダニを見つけたら?

犬の被毛や皮膚にダニを見つけたら、動物病院で適切な処置をしてもらい、必要に応じて薬を処方をしてもらうのが一番です。数匹でれば、応急処置として取り除いてあげると良いでしょう。
この時に注意が必要なのがマダニの取り方で、犬の表皮にぴったりと張り付いているようなマダニに関しては無理に手で取ろうとすると、犬の皮膚内部にマダニの頭部(口器)が残ってしまい化膿などの原因になります。
その他、マダニは細菌やウイルスを中心に人に危害を与える危険性の高い虫ですので、見つけたら焦って対処せず早めに動物病院に連れていくことをおすすめします。

4、効果的なダニ対策について

愛犬のダニ対策で大切なことは、定期的に駆除薬を投与することです。
マダニに関しては春から発生すると思われがちですが、実は秋であってもたくさん発生するので、地域によっては年間を通じて定期的にダニ対策を行う必要があります。
主なダニの駆除薬には、(※2)スポットオンタイプと食べさせるタイプがあり、犬の健康状態などによって適したものが異なることがあります。自己判断せずに獣医師に相談することをおすすめします。また、商品によって効果が持続する期間、ダニ以外に対しての効果などが異なるので、事前に調べておくと良いでしょう。
その他の対策として、ダニが多く発生する時期は犬を草むらや森などに連れて行かずに、ダニ除けに効果的なスプレーや置くタイプのダニ除けなどを活用すると良いでしょう。

(※2)スポットオンタイプ|犬の肩甲骨の間(首筋周辺部)に垂らすタイプの駆除薬

犬にダニを見つけたら?まとめ

今回は、犬に寄生するダニが引き起こす症状や対策を中心にご紹介致しました。
犬にダニを見つけたら、焦って手で取り除こうとせず、まずは動物病院で適切な処置を行ってもらうのが一番です。
これからの季節はただでさえ暑くて犬のQOL低下を引き起こしやすいため、ダニによって痒みや皮膚病変などが生じるととても可哀想です。
駆除薬の投与を検討して、事前にできる対策はしっかりと行っておきましょう。

犬の認知症対策、予防法やおすすめサプリ〔老犬介護士監修〕

目次

1、犬の認知症とは?原因や症状
2、犬の認知症の予防や対策は?
3、犬の管理栄養士が選ぶおすすめサプリ
4、認知症の犬の介護で大切なこと
5、ペットセラピストが選ぶおすすめアロマ

動物医療の発展やドッグフードの高品質化、室内飼育を中心に飼い主さんの犬に対する意識の向上など、様々な要因で犬の平均寿命が年々延びています。『アニコム家庭どうぶつ白書2019』では、ここ10年程度で犬の平均寿命が8.4ヶ月も延びていることが報告されています。
このように犬の平均寿命が延びることは非常に嬉しいことですが、それと同時に愛犬の認知症(痴呆)を中心とした老犬介護に悩む飼い主さんが増え続けているのも事実です。

犬の認知症とは?原因や症状

犬の認知症(痴呆)の原因は、残念ながら現段階で解明されていませんが、歳をとって脳に何かしらの変化が生じることで起こる脳神経系の病気であると考えられています。認知症の症状でよく現れるのが、夜泣きや徘徊、食事の過剰な催促や粗相などですが、中には飼い主さんのことを認識できなくなる犬もいます。
犬の脳の病気の一つに、脳が圧迫されることで様々な症状を引き起こす「水頭症」と呼ばれる病気がありますが、この病気で大脳皮質が圧迫された場合にも痴呆の症状は現れます。

犬の認知症の予防や対策は?

一言で認知症(痴呆)といっても、犬によって現れる症状や度合いは異なります。認知症は、対策を行ってもすぐに効果が見られるとは限らないので、根気よく愛犬のサポートをしてあげましょう。

・規則正しい生活を心がける

夜間の徘徊行動や夜泣きは昼夜逆転の生活が影響しているケースが多いため、規則正しい生活をさせることが認知症対策に効果的です。老犬は日中の睡眠時間が長くなる傾向にあるので、体に負担がかからないように適度に日中起こしてあげることが大切です。日光浴を20分~30分程度させてあげたり、知育おもちゃなど活用してコミュニケーションを図りながら遊んであげるもの良いでしょう。
長時間紫外線を浴びるのは皮膚がんリスクを高める原因になりますが、適度な日光浴は免疫力が低下しやすい老犬の健康維持に欠かせません。夏場などの暑い時期や暑い時間帯の日光浴に関しては、熱中症リスクが高まるので絶対にやめましょう。

・犬の生活環境を見直す

徘徊行為をする犬の場合、徘徊時に犬に危険が及ばないよう円形サークルを利用するなどの工夫が必要です。床を滑りにくい素材にするなど愛犬が安全に歩ける環境をつくってあげましょう。その他、夜間は安心してしっかりと眠れるように、静かで快適な寝床を準備。温度や湿度を快適に保つなど愛犬の様子を見ながら生活環境を見直してあげることが大切です。

・コミュニケーションの方法を変える

老犬は老衰や病気による体の不調、不快感で噛みついたり、目や耳の衰えが原因で触られることに恐怖を感じて噛みつくことがあります。認知症で飼い主さんを認識できない犬もいるので、噛みつきがひどい場合はグローブを着用するなどして穏やかに対処してあげなければいけません。コミュニケーションを図るときは声掛けを行い、老犬が聞こえていないようであれば、犬が飼い主さんを目で判断できるようにアイコンタクトをしましょう。
前触れもなしに触れると恐怖心で噛みつく危険性があるので、犬の後方から急に触るようなことはしてはいけません。

・生活に適度な刺激を加える

人間にも同じことがいえますが、認知症を中心に脳の老化予防、健康維持には適度な刺激も必要です。知育おもちゃで遊ばせて脳に刺激を与えたり、普段と違う場所でお散歩をさせるなど、日中に適度に刺激を与えることが認知症対策に効果的です。
犬は嗅覚で多くを判断する生き物なので、色々な匂いを嗅がせることで脳を活性化させることができます。普段とは違う場所で嗅いだことのない匂いを嗅がせる時間を作り、夜泣きや夜間の徘徊対策を試みると良いでしょう。

・薬剤やサプリメントを活用する

状況に応じて獣医師に脳細胞を活性化させるための薬を処方してもらったり、サプリメントで必要な栄養素の補給を行うことで認知症対策を行うことができます。しかし、これらはすぐに認知症状が治まるというものではありません。動物病院では一般的には不飽和脂肪酸が含まれたサプリが勧められ、DHAやEPAを犬に摂取させることで夜鳴きをはじめとした認知症状の改善を試みます。
これらの不飽和脂肪酸サプリは、認知症状の改善だけでなく症状の進行を緩やかにするためにも効果的です。

・アロマオイルやレメディを活用する

認知症の老犬のみならず、犬のメンタルケアでよく使用されているのがアロマオイルやレメディです。精神安定や睡眠を促すために効果が期待できるものがあるので、活用するのも良いでしょう。

・最悪の場合は睡眠導入剤を検討する

様々な対策を行っても夜泣きが改善されない場合は、獣医師に相談の上睡眠導入剤を処方してもらうこともできます。しかし、睡眠導入剤は犬によっては効果が期待できないことがあり、副作用リスクについても考慮しなければいけません。睡眠導入剤を検討する際は、しっかりと獣医師に副作用リスクや薬の危険性について確認してから検討しましょう。

・防音ケージを活用する

最近では、夜泣きがひどいときに利用する防音ケージも販売されています。飼い主さんの睡眠不足や近所とのトラブルも深刻な問題なので、犬が防音ケージの中でリラックスできる状況であれば、利用するのも良いでしょう。

犬の管理栄養士が選ぶおすすめサプリ

犬の認知症(痴呆)に関しては、残念ながら動物病院での投薬やサプリなどで根本的に治すということは出来ません。サプリに関しても与えたからといって確実に効果が出るような保証はありませんが、少なくとも認知症予防や既にでている認知症状の進行を遅らせる、症状を緩和するためには効果が期待できます。

・犬用認知症対策サプリ DHAやEPA、フェルラ酸などをバランスよく配合『毎日一緒』

脳内の抗酸化作用や神経細胞保護などに効果的な「DHA」、血管性の認知症予防に効果的だと考えられている「EPA」、強い抗酸化作用が期待できる「フェルラ酸」など、認知症予防や進行を遅らせるために有効な成分がバランスよく配合されているのが特徴です。配合主成分は、DHA、EPA、亜麻仁油、フェルラ酸、イチョウ葉エキス、ビタミンE、ビタミンB12、ビール酵母などです。

・オメガに特化した認知症対策国産サプリ『MEDICAL OMEGA3・6・9』

MEDICAL OMEGA3・6・9は動物病院でも取り扱っていることがあるサプリで、主な原材料はヒマワリ油やDHA含有精製魚油、亜麻仁油などです。脳の健康維持に役立つオメガ3(ドコサヘキサエン酸)を中心に、オメガ3との相乗効果が期待できるオメガ6をバランスよく配合。それに加えて悪玉コレステロールを減らす効果が期待できるオメガ9を配合した、老犬に優しいサプリです。

・脳神経の働きサポート成分やリラックス成分が配合された『DHC犬用国産サプリ おだやか』

DHC犬用国産サプリおだやかは、認知症対策サプリとして販売されている商品ではありませんが、脳内のリラックス成分であるギャバやギャバの働きをサポートするためのザイラリア、脳や神経の組織の働きをサポートするためのレシチンなど認知症の犬に効果が期待できる成分が含まれています。大手メーカーの犬用サプリで、愛犬に安心して与えることができます。

・夜泣きが激しい認知症の犬に最適のサプリ『meiji メイベットDC』

愛犬の夜泣きや夜の徘徊で悩んでいる飼い主さんにおすすめのサプリです。主成分にDHAとEPAのオメガ3脂肪酸が配合されているため、神経伝達サポートに効果が期待できます。老犬の不安やストレス緩和を促し、より快適な睡眠をサポートするために役立ちます。オメガ3脂肪酸はその他にも、老犬の関節痛緩和や毛ヅヤ対策にも効果的です。

認知症の犬の介護で大切なこと

認知症(痴呆)の犬の場合、他の病気とは少し異なり「犬の行動変化」が生じやすいため、飼い主さんが精神的にダメージを受けやすいのが特徴です。それに加えて夜泣きや深夜の徘徊行動で、眠れないという身体的なダメージも加わります。
愛情深く老犬と真剣に向き合うことはもちろん大切ですが、苛立ちなどの負の感情で愛犬のお世話をすることは、犬にとっても好ましい状態ではありません。介護ノイローゼになってしまう飼い主さんもいるので、一時的にペットシッターや老犬介護士にお世話をお願いして、休憩をとりながら老犬と向き合うことも大切です。
認知症の犬の介護では、何より飼い主さん自身が「精神的にも肉体的にも良いコンディションで介護できる状態」であることが重要なのではないでしょうか。

ペットセラピストが選ぶおすすめアロマ

近年では認知症に関わらず、愛犬のメンタルケアのために犬用アロマが活用されるようになりました。ここでは、認知症の犬におすすめのメンタルケア効果や快適な睡眠サポートに効果が期待できる、アロマやレメディをご紹介いたします。

・ストレス緩和におすすめ「犬用レスキューレメディ」

レスキューレメディは副作用や依存性の心配がないレメディで、愛犬の口の中に垂らしたり、体につける、生活空間にスプレーすることでストレスの緩和を促します。人間用も販売されているので、認知症介護などストレスのかかりやすい時期は愛犬と一緒に使用するのも良いですね。

快適な睡眠を促す『ジェモセラピー 犬用ライムツリー (神経用)』

神経の健康維持サポートが期待できる自然療法のハーバルサプリメントです。ストレス緩和やリラックス効果が期待できるため、快適な睡眠サポートに活用したいアイテムです。  

安定した睡眠サポートが期待できる『Azmira カーム&リラックス 1オンス犬用』

犬の神経の動揺や興奮状態を和らげることで、安定した睡眠を促します。スカルキャップハーブ、オトギリソウ(芽)、キンセンカ(花)、カモミール(花)などの原材料が使用されています。

愛犬に快適な老後生活を

老犬の認知症状に悩む飼い主さんが年々増加しており、老犬介護問題も深刻化してきました。
認知症に関しては、効果がすぐに期待できるような特効薬や治療法などは現段階ではありませんが、規則正しい生活や適度に刺激のある生活。それに加えてサプリなどを活用することで症状が改善したり症状の進行を緩やかにしたりすることができるケースもあります。
認知症の老犬介護は飼い主さんももちろん大変ですが、愛犬も精神的にも肉体的にもダメージを受けやすい状況下であることを忘れず、少しでも愛犬が快適な老後生活を送ることができるようにサポートしてあげましょう。