がんの犬のおすすめ食材(2)〔管理栄養士解説〕

目次:
1、がんの犬に効果的?ファイトケミカル食材
2、ファイトケミカル、スルフォラファン
3、ファイトケミカル、リコピン
4、ファイトケミカル、セサミン
5、ファイトケミカル、アントシアニン
6、食材を使用するときの注意点

前回は、【がんの犬のおすすめ食材(1)】で「動物性タンパク質源となる食材」と「腸内環境の健康維持に役立つ食材」の2つをご紹介致しましたが、今回は「ファイトケミカル」についてご紹介致します。なお、基本的な内容は【がんの犬のための手作りご飯基礎知識】をご参照ください。

1、がんの犬に効果的?ファイトケミカル食材

人間の健康食材として有名なファイトケミカルですが、犬の健康にとっても有効に働く食材が多いといわれています。ファイトケミカルとは、強い免疫力向上を特徴とする植物性の栄養素で「第七の栄養素」とも呼ばれています。

野菜や果物を中心とした食材に多く含まれており、それら食材の香りや色素、辛味成分などが犬の健康維持に有効に働きます。お茶やぶどうをはじめとし一部犬に与えてはいけない食材もありますが、野菜や果物であれば大抵の場合は犬の健康(病気や発がん物質から体を守る)にも効果的です。

ファイトケミカル食材は抗酸化活性や抗炎症効果が期待でき、犬のがんについて考える上では体内の発がん物質を体から排除するための酵素を活性化するためにも効果的です。ここでは、がん予防のために手作りご飯を作っている方におすすめのファイトケミカル食材の一例をご紹介致します。


2、ファイトケミカル、ブロッコリースプラウト(スルフォラファン)

・10kgの犬の場合の目安量/1日15g程度

ブロッコリースプラウトに含まれる「スルフォラファン」と呼ばれる栄養素に抗がん作用があるといわれており、ブロッコリーなど他のアブラナ科の野菜にもこの栄養素が含まれています。ブランドによって差は生じるものの、全般的にブロッコリースプラウトのスルフォラファン含有量は他のアブラナ科の食材と比較すると非常に高いのが特徴です。

スルフォラファンの抗酸化作用や解毒作用に関しては説明を省きますが、がんにおいては特に慢性的に体で生じる炎症を制御してがんを予防したり、がん細胞の死滅や収縮(アポトーシス)を誘導する効果があることから、愛犬の場合はがんの転移防止の目的で手作りご飯に定期的に取り入れていました。

スルフォラファンの効果は一般的に人の場合は3日間程度持続。犬に関しては不明確ではありますが3日に一度は必ず使用していた食材です。その他、基礎的なことですがアブラナ科の食材は甲状腺機能に疾患がある犬の場合は与えないようにしましょう。

3、ファイトケミカル、とまと(リコピン)

・10kgの犬の場合の目安量/1日20g程度

とまとに多く含まれる「リコピン」は、強い抗酸化作用が期待できることから犬の健康維持にも有効な食材です。リコピンには様々な効果が期待できますが、中でも犬の体に不必要な活性酸素除去に役立つ抗酸化力に関してはビタミンEの100倍程度(またはそれ以上)です。


人の場合は様々な体の部位発症におけるがん細胞の成長を制御すると考えられており、とまとにはリコピン以外にもがん予防が期待できる不飽和脂肪酸(α-リノレン酸)も含まれています。リコピンは加熱してもそこまで栄養価が損なわれず体への吸収率が倍以上になるため、私の場合は少し加熱して冷ましてから愛犬の手作りご飯に使用していました。

青い未熟なものにはトマチンと呼ばれる犬にとっての有毒成分が多く含まれているので、しっかりと赤く熟したものを選んで与えるようにしましょう。その他、とまとには体に蓄積しやすい「脂溶性ビタミン」が含まれているので、他の食材との組み合わせに注意が必要です。インターネット上の犬の手作りご飯レシピを見ていると、にんじんを多く使用する方がいますが、β−カロテン当量が8600μg/100g(とまとはβ−カロテン当量540μg/100g)となっており、手作りご飯においては犬のビタミンA過剰症が多く発生していることが問題視されています。

愛犬の手作りご飯をつくる場合は、犬の体に蓄積しやすい脂溶性ビタミン食材を中心に特定の栄養素が過剰(または不足)にならないよう、しっかりとり栄養配分を考慮しながらつくりましょう。

4、ファイトケミカル、ごま(セサミン)

・10kgの犬の場合の目安量/1日小さじ1杯程度

ごまに含まれる「セサミン」はポリフェノールの一種で、抗酸化作用がとても強い成分です。犬の体に不要な過酸化脂質や活性酸素除去効果が期待できることから、がん予防や制御に効果的です。特に黒ごまに関しては、ブルーベリーに含まれるアントシアニンも多く含んでおり、活性酸素の働きを抑えるために役立ちます。

なお、ごまに関しても犬が消化吸収しやすいよう、摩り下ろしてから与えることをおすすめします。その他、ごまには脂肪酸が含まれるため酸化しやすいのが特徴。酸化した食事は犬の健康被害の原因になるので、手作りご飯で与える場合は食事の直前に摩り下ろしてご飯にトッピングすることをおすすめします。


5、ファイトケミカル、しそ(アントシアニン)

・10kgの犬の場合の目安量/1日3g程度

青じそには免疫力向上に役立つビタミンC、活性酸素制御に役立つβカロテン、ペリラアルデハイドなどの殺菌成分が含まれており、赤しそには黒ゴマ同様に「アントシアニン」も含まれていることから、犬のがんの予防や進行制御を目的として手作りご飯で取り入れたい食材の1つです。

また、しそに含まれる香り成分によって犬のストレス緩和にも効果が期待できるといわれていますが、嗅覚の優れた犬にとっては香りが強すぎるので手作りご飯で使用する際は少量にとどめましょう。しそ科の植物に関しては、人の場合はがんの増殖防止や抗がん剤が効きにくくなった細胞に対しての効果などが幅広く研究されています。

6 、食材を使用するときの注意点

全編の【がんの犬のおすすめ食材(1)】でもご紹介させていただきましたが、犬は野菜や穀物などの消化を得意としないため、野菜などの食材はフードプロセッサーなどで細かくして消化吸収しやすい形状にして与えましょう。また、アレルギーなどの観点から、はじめて犬の手作りご飯で使用する食材は少量から試すことをお勧めします。

ファイトケミカルを中心に、どんなにがんの予防や制御に有効とされる食材であっても与えすぎは禁物。犬の手作りご飯を作るときは栄養素の異なる様々な食材をバランスよく取り入れることが大切ですので、欠乏症や過剰症に細心の注意を払いながらバランスを考えて作ってあげましょう。

その他、犬のがんの発症部位や体の状況により食事管理ポイントが異なる場合があります。がんを発症している(治療中)の犬の場合は、獣医師に食事管理で気をつけたいことに関して予め相談しておくと良いでしょう。


【犬の手作りご飯|量や配分など】

※本記事の栄養成分値は文部科学省「食品成分データベース」を参考に算出。生の状態での食材成分値を記載しております


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記事作成者:  望月 紗貴
飼い主の意識の向上(=犬たちの幸せ)を目的とし情報提供サイトを開設。犬の管理栄養士、老犬介護士、ペット看護師を中心に多数ペット資格を保有。他社の記事監修・作成も数多く請け負う。

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がんの犬のおすすめ食材(1)〔管理栄養士解説〕

目次:
1、動物性タンパク質源となる食材
2、腸内環境の健康維持に役立つ食材
3、食材を使用するときの注意点

犬のがんの食事の関係性や食事管理のポイントに関しては、【がんの犬のための手作りご飯や食事〔獣医師監修〕】でご紹介致しましたが、ここでは「動物性タンパク質源となる食材」と「腸内環境の健康維持に役立つ食材」の2つをご紹介させていただきます。がんを発症している犬に限りませんが、犬の手作りご飯では食材の栄養素の配分に気をつけて、豊富な食材を利用。愛情と栄養たっぷりの手作りご飯をつくってあげましょう。

【犬の手作りご飯|量や配分など】

1、動物性タンパク質源となる食材

がんの犬の場合は炭水化物(糖質)を極力制限して、代わりに体のエネルギー源となる良質な動物性タンパク質を豊富に使用することで免疫力を維持(強化)します。ここでは、がんの犬の手作りご飯におすすめの動物性タンパク質源の一例をご紹介致します。

1-1、鹿肉(タンパク質値目安:23.9g/100g)

鹿肉は栄養価が高い上、他の動物肉と比較すると低カロリー・低脂肪。野生で育つ草食動物なので、栄養価が高いのも魅力の1つです。含まれている栄養素としては、タンパク質、ビタミンB群、ミネラルなどに加えて、肉では珍しいDHA(ドコサヘキサエン酸)も含まれています。

体内の活性酸素の除去が期待でき、体を温める食材なので冷えによる免疫力低下予防にも効果的。犬の手作りご飯では積極的に取り入れたい動物性タンパク質ですが、がん細胞と闘う犬や抗がん剤による副作用で免疫力が低下しやすい犬には尚おすすめです。

1-2、ラム肉(タンパク質値目安:20.0g/100g)

ラム肉などの羊肉は、肉の中で一番体を温める効果が高い食材です。体の冷えからくる免疫力低下を防止するために有効。含まれる栄養素としては、タンパク質、ビタミンA・B群・カルニチンや鉄分などです。ラム肉に含まれている必須アミノ酸はバランスが非常に良いのが特徴。

低カロリー・低コレステロールで脂肪燃焼促進効果が期待できることから、がんで免疫力を高めたい犬だけでなく、ダイエット中の犬にもおすすめです。ただし、抗がん剤など何かしらの理由で食欲低下が引き起こされている場合(エネルギー源が不足している場合)は、手作りご飯ではカロリーが高い肉を使用することをおすすめします。

1-3、鮭(タンパク質値目安:20.1g/100g)

鮭の特徴は、アスタキサンチンと呼ばれる抗酸化力の高い成分が含まれていることで、体内の活性酸素の発生を制御する成分です。抗酸化作用のある栄養素としてビタミンCが有名ですが、アスタキサンチンに関しては約6000倍の抗酸化力が期待できるといわれています。

がんによって放射線治療を行っている犬の場合は、特に活性酸素が生じやすくなるという報告があるので、手作りご飯では取り入れたい食材です。ただし、鮭にはチアミナーゼと呼ばれるビタミンB1を分解する酵素が含まれているので、継続的に多く与えてしまうと「ビタミンB1欠乏症」のリスクが高まります。

犬の手作りご飯では、常用せずに数日に一度与えるなど頻度を工夫すると良いでしょう。その他、人が食べるために塩分を加えた鮭は使用せず、刺身用の味付けされていないサーモンなどを使用しましょう。

1-4、動物性タンパク質源となる食材|使用例

参考までに、愛犬バーニーズマウンテンドッグの場合、基本的には動物性タンパク質は以下のようなローテーションを組んでいました(週によって多少変動あり)。鹿肉をベースとし、夏は体を冷やす効果が期待できる馬肉を使用するなど、季節によって食材を使い分けるのも犬の健康維持には効果的です。

月 ・朝 鹿生肉(ロース) ・晩 加熱サーモン&卵
火 ・朝 鹿生肉(モモ)  ・晩 ラム加熱肉
水 ・朝 鹿生肉(ロース) ・晩 加熱鶏むね肉
木 ・朝 鹿生肉(モモ)  ・晩 加熱サーモン&卵
金 ・朝 鹿生肉(ロース) ・晩 加熱豚肉
土 ・朝 鹿生肉(モモ)  ・晩 ラム加熱肉
日 ・朝 鹿生肉(ロース) ・晩 その他の肉&魚

2、腸内環境の健康維持に役立つ食材

犬によって個体差がありますが、体全体の60%~70%程度の免疫細胞が腸(腸管)に集中しているといわれていますので、腸の健康維持は免疫力を維持(強化)するために大切です。ここではがんの犬の手作りご飯におすすめの腸内環境の健康維持に役立つ食材の一例をご紹介致します。

2-1、ヨーグルト(タンパク質値目安:3.6g/100g)

腸の健康維持を目的として人でも食べている方が多いヨーグルトですが、犬の場合も乳酸菌によって整腸効果が期待できます。腸内にあるビフィズス菌を活性化することで悪玉菌を制御。腸内の免疫細胞を活性化する効果が期待できるので、免疫力が低下しやすいがんの犬や便の状態が安定しない(下痢や便秘)犬には特におすすめです。

ただし、与えすぎは腸内環境の健康を害すので量には気をつけましょう。参考までに愛犬バーニーズマウンテンドッグ(42kg)の場合は、手作りご飯1食で(無糖ヨーグルト)大さじ3杯程度を週に数回与えていました。おやつとして与えるのも良いでしょう。

2-2、ゴボウ(タンパク質値目安:1.8g/100g)

ゴボウは水溶性食物繊維と不溶性食物繊維が豊富で、腸内細菌の環境改善(ビフィズス菌の成長を促す)に有効なイヌリン(不溶性食物繊維)と呼ばれる成分が含まれています。イヌリンは腸内の胆汁酸を吸着して体外に排出。腸の蠕動運動を活発にさせたり犬の体に不要な物質を排泄させるために効果を示します。

その他ごぼうに含まれる酵素であるペルオキシダーゼが活性酸素除去(無毒化)に効果的なため、がんを発症している犬の手作りご飯には適度に取り入れたい食材です。ごぼうは消化しにくいため、必ず加熱後にすりおろし器やフードプロセッサーなどで細かくしてから与えましょう。参考までに愛犬バーニーズマウンテンドッグ(42kg)の場合は、手作りご飯1食で70gを週に3回程度与えていました。

2-3、挽きわり納豆(タンパク質値目安:16.6g/100g)

犬の腸内環境の健康維持に効果的な食材の1つである納豆には、悪玉菌の増殖を制御するために役立つ納豆菌が多く含まれており優れた整腸作用が期待できます。納豆菌は、腸内の腐敗菌の増加制御の他、腸内で善玉菌として働くことで腸内に存在する善玉菌の増殖を更に促す効果が期待できます。

ただし、我が家の愛犬のように胃拡張・胃捻転症候群になりやすい犬には注意が必要。一度に粘り気のある食材をたくさん与えてしまうのは危険ですので、大型犬は特に一度に与える量を少量にとどめましょう。胃拡張・胃捻転症候群リスクもさることながら、炭水化物も含まれている(10.5g/100g)ので、愛犬の場合は1食で50gを週に2回程度を目安に与えていました。

2-4、腸内環境の健康維持に役立つ食材|使用例

愛犬の場合はがん発症以前(子犬期)から下痢を引き起こしやすい体質であり、腸内環境の健康維持には特に注意していました。ドッグフードを変えても改善しなかった長年にわたる定期的な下痢症状でしたが、手作りご飯に変更することで改善。便の状態が4才前にようやく安定しました。以下に愛犬の腸内環境の健康維持のために使用していた食材の一例をご紹介致します。

・ヨーグルト ・ゴボウ ・挽きわり納豆 ・キャベツ ・オクラ ・長いも 
・オリーブオイル ・昆布(出汁) ・消化吸収しやすい鹿生肉や魚類 など

3、食材を使用するときの注意点

犬は野菜や穀物などの消化を得意としないため、肉や魚以外は消化しやすいよう細かくして与えましょう。また、生肉に慣れていない犬の場合、徐々に生食に慣らしていかないと下痢や嘔吐などの消化器系症状を引き起こす原因になります。

その他、どんなに優秀な食材であっても与えすぎは禁物。犬の手作りご飯を作るときは栄養素の異なる多様な食材をバランスよく与えることが大切です。それぞれの栄養素の欠乏症や過剰症に気をつけて、量や配分をしっかりと考えて手作りご飯を作ってあげましょう。

愛犬の手作りご飯を初めて作る方は、【犬の手作りご飯|量や配分など】もご確認ください。なお、犬のがんの進行状況や発症部位などによって適した栄養素が異なる場合があります。がんを発症している(治療中)場合は、必ず獣医師に食事管理について相談しましょう。

※本記事の栄養成分値は文部科学省「食品成分データベース」を参考に算出。生の状態での食材成分値となっております


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がんの犬のための手作りご飯や食事〔獣医師監修〕

目次: 
1、がんと食事
2、がんの犬を支える食事管理
3、がんの犬を支える食事管理の注意点
4、食欲がない犬のための薬

愛犬のがん告知はあまりに精神的打撃が強く、どうしても飼い主は精神的に不安定になってしまいます。私も愛犬が若くしてがんを発症したことから約3年の間、毎日のようにこの言葉と向き合ってきました。一度目の発症が血管肉腫というがんで、愛犬のバーニーズマウンテンドッグはまだ僅か3才半。

それを機に、愛犬のがんが転移しないよう自分に何ができるのか考えた結果が、QOLの向上に努めるためサポートすること。その中で、手作りご飯で食事管理をすることには特に重点をおきました。今回は、愛犬のがんから学んだ食事管理について簡単にご紹介致します。

【愛犬のがん闘病生活ブログ】

1、がんと食事

1-1、愛犬のがんと手作りご飯

犬のがんが食事で治るかといったら、残念ながらそんなことはありません。
愛犬の場合、一度目の血管肉腫は抗がん剤を使用せず、最終的には完治という嬉しい結果でした。しかし、悪性腫瘍の摘出手術で完全に悪いものを取り除いた上での食事管理でした。

2度目の組織球性肉腫に関しては、やはり抗がん剤は利用せずに1年9ヶ月転移せずに済みましたが、この時も肺の腫瘍を(余裕をもって)大きめに摘出するために手術を行った上での食事管理。定期的な健康診断を行って早期発見・早期治療を行ったことが功を奏したのでしょう。

そして、2回目のがん摘出手術後1年9ヶ月経過し、残念ながら再び組織球性肉腫が全身に、今度は一気に発生してしまいました。しかしながら、悪性度の非常に高い組織球性肉腫が術後、抗がん剤を使用せずにここまで転移・再発しなかったこと。

若くして発症した血管肉腫が抗がん剤を使用せずに転移しなかったことは、もしかすると手作りご飯で食事管理を徹底していたことが理由の1つだったのかもしれません。

1-2、食事管理の大切さ

食というものは、手術や抗がん剤治療、放射線治療などの西洋医学ほどの力は持っていません。しかし、犬の口から直接体内に入り込み体をつくる重要な要素・エネルギー源となるため、愛犬の健康維持を考える上で食事管理は必ず配慮しなければいけないものです。

犬のがんの場合、残念ながら現状では抗腫瘍効果をもつドッグフードは販売されていません。しかしながら、食事はがんに直接的に働きかけることはできなくとも、間接的にがんが進行しにくい・がんが再発しにくい体づくりをすることは可能です。

悪性腫瘍の原因は大きく「内因」と「外因」に分けられますが、このがんの原因となる外因のうちの1つとして食べものや食事に含まれる添加物が挙げられます。こういった背景から、犬のがんと食事の関係性を完全に否定することはできないのです。

2、がんの犬を支える食事管理

2-1、炭水化物の制限がされた食事

がんの進行制御に関する確実な効果が証明されているわけではありませんが、一般的にがんを発症している犬には低炭水化物の食事が推奨されています。炭水化物とは、糖質と食物繊維の総称を意味しますが、糖質が多い食べものはがんの進行を応援してしまう(がん細胞の栄養的役割を補う)可能性がある考えられています。

そのため、極力犬の手作りご飯やドッグフードでは制限したい栄養素です。私の場合は、愛犬の手作りご飯では小麦やトウモロコシはもちろん、米類も使用していませんでした。炭水化物を制限することで体のエネルギー源が不足しないよう、消化吸収性の良い良質な肉や魚などの動物性タンパク質を豊富に使用。

愛犬の場合は亡くなる1カ月前までは運動量も多かったので、運動量に見合ったエネルギー源を供給するよう工夫していました。その他、炭水化物は犬ががんの場合、代謝異常を最も引き起こしやすい栄養素と考えられているため、極力避けるよう工夫が必要です。

2-2、免疫力の高まる食事

免疫力とは、犬の健康に被害を与える危険性のある細胞や細菌、ウイルスなどと闘うために必要な体の防衛機能で、抗がん剤を利用している犬の場合は、特に免疫力が低下しやすいので食事への配慮が大切になります。

抗がん剤を利用していなくとも、がんを発症している場合は体内のがん細胞が増えないよう、特に体の免疫力を整えておかなければいけません。免疫力を整える・強化するためには十分な睡眠・(可能な場合は)適度な運動、ストレスフリーの生活をさせることが大前提ですが、それらに合わせて食事管理を行うことが大切です。

抗酸化作用の高いファイトケミカルが含まれる食べものを手作りご飯で使用したりすることも大切ですが、何より犬の腸内環境の健康維持に役立つ食事を心がけるのがポイントです。腸には免疫細胞が多く集中しており、犬の場合個体差や年齢による差はあるものの一般的に体全体の60%~70%程度の免疫細胞が腸(腸管)に集中しているといわれています。

そのため、私の場合、手作りご飯では消化しにくい炭水化物を殆ど使用せず、良質な鹿や馬肉、サーモンなど使用。それに加えて、ひきわり納豆やヨーグルトなどの発酵食品、適度な食物繊維(水溶性)を取り入れるなどして、便の状態を日々確認しながら手作りご飯による食事管理を行っていました。

2-3、活性酸素をためない食事

活性酸素は、犬の体に入った酸素の一部が他の物質と結びつくことで酸化力のある物質に変化。これが細胞に結びつくことで老化促進やがん細胞の増加を促進する原因になります。この活性酸素を除去するために役立つのが抗酸化作用のある食べもので、人参に多く含まれるβカロテンやブロッコリースプラウトなどに含まれるスルフォラファンなどが一例として挙げられます。

ただし、βカロテンはビタミンAに変換されますが、脂溶性ビタミン全般を中心にどんな食事でも与えすぎは過剰症リスクを高めるので、極端に多く与えないことが大切です。また、放射線治療を行っている犬の場合、特に活性酸素が生じやすくなるという話も耳にしますので、適切な水分摂取を心がけ体に不必要なものをため込まない食事管理を行うことが大切です。

2-4、体を冷やさない食事

体を冷やさない食事に関しては、直接的に犬のがんの進行を左右するというわけではありませんが、体を冷やすことで免疫力の低下を引き起こしやすいので気をつけましょう。特にがんを発症する犬の多くが老犬であり、運動不足により体が冷えやすい状態になっていることがあります。

旬の食材は栄養価が高く、犬の手作りご飯で取り入れる方が多いのですが、冷房を利用している場合は体を冷やしやすいトマトやキュウリなど夏の野菜にも配慮が必要です。犬の場合、一般的には人と比較して寒さに強いといわれていますが、特に腸の冷えには細心の注意が必要です。

2-5、良質な食事を心がける

当たり前のことではありますが、健康体の犬であってもがんを発症している犬であっても化学合成添加物や酸化した食事は健康被害を引き起こす原因になります。全ての添加物ではありませんが、化学合成添加物の多くは長期継続利用することで発がん性リスクが高まるものが多く、酸化した食事は嘔吐下痢などの消化器系症状に。

それだけでなく、活性酸素を発生させて健康な細胞の増殖を妨害する原因になります。手作りご飯の場合は、栄養バランスへの配慮はもちろん使用する食材の鮮度にも気をつけなければいけません。

【犬の手作りご飯|量や配分など】

3、がんの犬を支える食事管理の注意点

がんの犬を支える食事管理に関してご説明しましたが、これらはあくまで基本的なことであり、がんの種類や状況、また犬の状態によって食事管理で優先させなければいけないポイントは変わります。

例えば食欲が低下している犬の場合、何より嗜好性の高まる食事で食欲を上げることが第一前提になることもありますし、がん以外に併発している病気があれば他の病気への配慮も必要。

消化管腫瘍がある犬の場合、脂肪分を減らした食事に切り替えることもありますし、腫瘍によって発熱している犬の場合は、食事で体の内部を温めないよう工夫した方が良いケースもあります。

食事管理をする上では、何より現状犬の体で何が起こっているのかを把握することが大切ですので、都度食事で重要視すべきことを獣医師に確認しながら工夫することが大切です。

4、食欲がない犬のための薬

少し前まではがんを中心に、病気によって食欲がない犬のための食欲改善効果が期待できる薬がなく、犬の食欲を改善したい場合、ステロイドを中心に何かしらの他の目的で使用する「薬の副作用」として食欲改善を見込むことしかできませんでした。

しかしながら、数年前にアメリカで食欲増進剤(ENTYCE/ エンタイス)が販売され、日本でも取り入れている動物病院があるようです。薬の使用に関しては獣医師の判断や飼い主の意向が大きく関わってきますが、犬の場合も末期になると食欲が完全になくなってしまうこともあるので、がんと闘う犬を支える飼い主の選択肢が一つ増えたと考えることができます。

【がんの緩和ケアの必要性や方法】

【がん|緩和ケアに使われる薬】

【犬のがん|愛犬のために飼い主ができること】


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記事作成者:  望月 紗貴
犬たちの幸せ(=飼い主の意識の向上)を目的とし情報提供サイトを開設。老犬介護士、ペット看護師、犬の管理栄養士を中心に多数ペット資格を保有。他社の記事監修・作成も数多く請け負う。

記事監修者:  (獣医師)西原 克明

動物病院の院長を務めながら、様々なペット関連業界で活躍。腫瘍外科や椎間板ヘルニアを中心に「特殊外科」の執刀を得意とし、腸内細菌や口腔内細菌の研究を行い予防医療にも注力している。


犬のがんの緩和ケア|必要性や方法〔獣医師監修〕

目次:
1、がんの緩和ケアとは?
2、がんの緩和ケアの必要性
3、犬のがんにおける痛みの緩和ケア

手術や抗がん剤治療、放射線治療などの医療技術を使いながら愛犬のがんと闘っていても、緩和ケアに切り替えなければいけない状況下に置かれることがあります。また、これら治療を行いながらがんの緩和ケアが必要になることもあります。

1、がんの緩和ケアとは?

1-1、緩和ケアとホスピスケアの違い

獣医療においてもホスピスケアという言葉を耳にするようになりましたが、厳密にいうとホスピスケアに関しては、他に治療法がないような余命の短い犬(人)に提供されるのに対し、緩和ケアは抗がん剤など何かしらの他の治療を行いながら緩和治療を行う場合も含むのが特徴です。

いずれにせよ、薬による痛みの緩和(ペインコントロール)を中心に、愛犬のQOL(クオリティー・オブ・ライフ)改善のために用いられ、犬に極力苦痛のない余生を過ごさせてあげるためにはとても大切な治療です。

1-2、緩和ケアは獣医師と家族が協力する

緩和ケアにおいては、獣医師の薬の処方など西洋医学を中心に行いますが、家族(飼い主)が協力して行うことがとても大切です。個体差もありますが犬は痛みを感じていることを隠す傾向にあり、ましてや言葉を話さない動物ですので、日々愛犬と接する中で行動の変化(目で分かる変化)をしっかりと観察して獣医師に相談することが大切です。

感じている痛みの度合いはがんの進行度合いや発生部位などによってある程度は予測できます。しかしながら、ペインコントロールは飼い主が痛みの発生を中心に小さな変化に気づいてあげることがとても大切です。痛みの改善だけでなく予防として薬が処方されたり治療が行われたりすることもあるので、しっかりと獣医師と話し合って緩和治療について決めていきましょう。

【がん|緩和ケアに使われる薬】

1-3、痛みの緩和だけが緩和ケアではない

WHO(世界保健機関)による緩和ケアの定義を前提に考えた場合、緩和ケアはQOL向上のために身体的負担の軽減だけでなく、心理的、またはスピリチュアル的負担に対しての苦痛の予防・軽減が含まれます。

そのため、犬の体の負担軽減は獣医師の緩和治療が主になりますが、精神的負担の軽減も非常に重要。動物病院に連れていく回数が減るよう自宅でできるケアを飼い主自身が行ったり、生活する中で起こりうる犬の不都合などに対して対策を行ってあげることも緩和ケアの一環です。

2、がんの緩和ケアの必要性

2-1、体と心の痛みのケア

がんの種類によっては薬剤を利用して痛みを緩和できないものもありますが、それでも獣医療で緩和ケアが取り入れられるようになってから、がんを発症した犬たちが快適に余生を過ごすことができる可能性が随分広がりました。

一昔前では安楽死を迫られたケースであっても、現在ではがんに伴う体と心の痛みを和らげて動物病院でなく家族と共に自宅で穏やかに過ごすことができる犬も増えました。犬が家族の一員として大切にされる現代では、がんを発症している犬にとっては緩和ケアは無くてはならないものです。

【犬のがん|愛犬のために飼い主ができること】

2-2、家族の心のケア

がんに苦しむ愛犬の緩和ケアをすることは、家族(飼い主)の心のケアにも役立ちます。可愛い愛犬が苦しむ姿は誰だって見たくはありません。ただでさえ、がんという重い病気と闘う犬。極力痛みを取り除き、穏やかに過ごさせてあげることは家族の心のケア(喜び)にも繋がるのではないでしょうか。

2-3、愛犬の心のケア

がんを発症している犬の場合、痛みだけでなく発生部位によっては呼吸が苦しくなったり吐き気や食欲低下、身体のだるさなどのストレスによって精神的な負荷もかかることから、QOLが低下しやすい状況になります。身体のストレスは必ず心のストレスに繋がるので、少しでも体にかかる負荷を減らしてあげることで心も同時にケアしてあげましょう。

その他、体の緩和ケアと同時に、優しく撫でたり声掛けをするなど、愛犬とのコミュニケーション方法を見直すことも大切です。最近では針灸などの東洋医学、メディカルアロマなどの治療を取り入れている動物病院もあるので、犬に負担がかからないようであれば西洋医学と併用して活用してみるのも良いでしょう。

3、犬のがんにおける痛みの緩和ケア

3-1、痛みの緩和ケア(ペインコントロール)

がんの進行によって全ての犬に痛みが生じるわけでなく、神経が分布している場所にがんが入り込んでいるような場合、またはがんの組織が大きくなることで神経部分に圧迫が生じてしまっている場合などに痛みが生じます。その他、がんの発生部位・種類などにより緩和ケアの必要性、または方法は異なります。

がんが進行している犬の場合、大抵獣医師は犬に痛みがあること前提でペインコントロールを目的とした治療を行いますが、日々の生活で起こっている症状や犬の変化などを獣医師に詳しく説明して、必要に応じて検査でがんの進行状況を確認しながら痛みの緩和ケアを行う必要があります。

3-2、がんの痛みと痛みを生じやすいがんの種類

がんの痛みは、急性痛的な痛みと慢性痛的な痛みの性質の両方を持ち合わせているといわれており、いずれにせよがんの発生部位や種類などによっては、長時間強い痛みが続くことが往々にしてあります。

消炎鎮痛剤や麻薬系の薬が緩和ケアで処方されることがありますが、犬のがんの中でも骨肉腫は痛みの度合いが重度だといわれています。犬の場合は骨原発性腫瘍の中では骨肉腫が一番発生率が高いといわれていますが、中でも大型犬の場合は四肢に発生することが多く、断脚手術によって痛みを緩和させる方法が施されることが多いのが特徴です。

3-3、がんの痛みを緩和するための治療方法

がんの痛みを緩和するためには、先述でお話させていただいた通り鎮痛剤や麻薬性の薬が投与されるのが一般的ですが、放射線治療設備がある動物病院では放射線で痛みを和らげることもあります。薬に関しては、飲み薬や注射、座薬、貼るタイプのものなどがありますが、獣医師の説明をしっかりと聞いて愛犬の痛みの状況に合わせて緩和治療を行う必要があります。

【愛犬のがん闘病生活ブログ】

3-4、麻薬性鎮痛剤について

骨肉腫をはじめとし重度の痛みでモルヒネやフェンタニルが必要な場合は、別途獣医師が「麻薬使用者」として届け出が必要になることから、全ての動物病院で薬を扱っているわけではないので注意が必要です。麻薬性鎮痛剤に関しては、錠剤タイプのものや注射薬、パッチ状の経皮吸収されるタイプの薬があり、副作用の確認はもちろん取り扱いに注意しなければいけないものが多いため、都度獣医師の厳密な指示に従うことが大切です。


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記事作成者:  望月 紗貴
犬たちの幸せ(=飼い主の意識の向上)を目的とし情報提供サイトを開設。老犬介護士、ペット看護師、犬の管理栄養士を中心に多数ペット資格を保有。他社の記事監修・作成も数多く請け負う。

記事監修者:  (獣医師)西原 克明

動物病院の院長を務めながら、様々なペット関連業界で活躍。腫瘍外科や椎間板ヘルニアを中心に「特殊外科」の執刀を得意とし、腸内細菌や口腔内細菌の研究を行い予防医療にも注力している。


犬のがんの緩和ケア|薬や治療法など〔獣医師解説〕

1、犬のがんの緩和ケアに効果的な薬は?
2、犬のがんの緩和ケアに使用される薬のタイプは?
3、犬のがんの急性痛・慢性痛について
4、ペインコントロールに有効なその他の治療法

がんを発症した犬の場合、痛みを中心に緩和ケアにおける治療がとても大切になるケースがあります。今回は、犬の緩和ケアについて、薬を中心とした専門的内容を獣医師に幅広く解説していただきました。

1、犬のがんの緩和ケアに効果的な薬は?

1-1、がんの緩和ケアに使用される薬の概要

犬のがんの緩和ケア治療に使用される薬には鎮痛薬、抗炎症薬、局所麻酔薬などがあります。鎮痛薬は痛みを減らす効果があり、抗炎症薬は犬の痛みの原因となる炎症を抑えることで間接的に痛みを減らす効果があります。がんのペインコントロールに使用される薬としては鎮痛薬、抗炎症薬などが一般的で、局所麻酔薬は神経を麻酔することで痛みを感じなくさせるブロック麻酔という治療手法で用いられます。

1-2、がんの緩和ケア治療に有効な鎮痛薬

犬の鎮痛薬は麻薬性鎮痛薬、非麻薬性鎮痛薬、解熱鎮痛薬に分けられます。麻薬性鎮痛薬はモルヒネ、フェンタニルなどが代表的です。犬の麻薬性鎮痛薬は習慣性を伴う強力な鎮痛作用を持ち、脳や神経に作用。病巣から脳に向かう痛みの信号を止めます。

非麻薬性鎮痛薬はブトルファノール、トラマドールなどが代表的です。これらは習慣性を持ちませんが、麻薬性鎮痛薬と比較すると軽度の鎮痛効果を持つと報告されています。麻薬性鎮痛薬と同じ方法で痛みを減らす為、犬に投与する際、併用することでお互いの作用を弱くしてしまう場合があります。

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1-3、がんの緩和ケアで使用されるオピオイド

麻薬性鎮痛薬と非麻薬性鎮痛薬は、オピオイドと呼ばれる薬の種類です。オピオイドはがんの緩和治療における重要な薬ですが、人間においてオピオイドは重度の呼吸抑制、薬物耐性(長く使用することで作用が弱まること)があると言われています。

しかしながら、犬の場合はオピオイドに対する呼吸抑制の感受性が人ほど敏感ではなく、使用する期間も短い為、これらの副作用はあまり問題にはならないと報告されています。

1-4、がんの緩和ケアで使用される解熱性鎮痛薬

解熱性鎮痛薬は、NSAIDs(エヌセイド)と呼ばれる非ステロイド系抗炎症薬の中で鎮痛効果を持つものを指します。犬の解熱性鎮痛薬はケトプロフェン、アスピリンなどが代表的で、がんの痛みの原因物質が生成されることを防ぎます。

犬の解熱性鎮痛薬もオピオイドと同様にがんの緩和ケアに有効ですが、種類によっては胃潰瘍、血液凝固阻害(血が固まらない)などの副作用がでる場合があります。低頻度ですが腎臓に対する副作用を持つとする報告があるため、がん以外に腎疾患を持つ犬に投与する際には注意が必要です。

1-5、がんの緩和ケアで使用される抗炎症薬

抗炎症薬は、NSAIDs(非ステロイド系抗炎症薬)とステロイドに分けられます。NSAIDsは炎症の原因物質が生成されることを防ぎます。解熱性鎮痛薬と同様に胃潰瘍、血液凝固阻害、腎障害などの副作用があります。また、NSAIDsには抗腫瘍効果があり、骨肉腫、乳腺癌、口腔内メラノーマなどのcox-2と呼ばれる酵素を多く持つ様々な犬の腫瘍に効果的である可能性があると述べられています。

ステロイドはプレドニゾロン、デキサメタゾンなどが代表的であり、強力な抗炎症作用を持ちます。犬に投与した際、免疫抑制や医原性クッシング症候群などの重大な副作用を引き起こす場合があるので、獣医師に指示されている量を適切に与えることが重要。またNSAIDsとステロイドの併用は重大な副作用を引き起こす可能性が高く、併用は禁忌とされています。

2、犬のがんの緩和ケアに使用される薬のタイプは?

2-1、がんの緩和ケアの治療で使用される薬の投与方法

犬のがんの緩和ケアに用いられる薬にはいくつかの投与方法があります。薬を口から与える「経口投与」、皮ふから吸収させる「経皮投与」、注射などにより体内に投与する治療方法などがあります。

2-2、がんの緩和ケアにおける経口投与とパッチの使用方法

経口投与は薬が比較的早く、犬のがんの痛みに効果を現します。経皮投与には犬の皮膚に直接薬を塗布するほか、パッチと呼ばれるシールを皮膚に貼る方法もあります。

パッチによる経皮投与は薬剤が長期間作用する特徴があり、長期間薬を作用させるためパッチには多くの量の薬が含まれており適切な使用が重要になります。パッチを温めると薬剤の過剰投与につながり危険です。犬がパッチをつけた状態での入浴等も避けて下さい。

2-3、がんの緩和ケアにおける注射の種類

注射による投与には静脈内投与、筋肉内投与などがあります。どちらの投与も薬がすぐに効果を表しますが、注射による治療は動物病院において獣医師による処置として行われます。たとえ同一の薬であっても投与する方法が異なる場合、混同して使用することはできません。

がんの緩和ケアに使われる薬は強力な効果を持つものが多いのが特徴です。犬に投与する場合、必ず獣医師に指示された量を正しい時間に投与するようにして下さい。自己判断で量を増減すると大変危険ですので、獣医師の指示で薬を与えても犬が痛みを感じている、効果が感じられないような場合は再度獣医師に治療の相談をお願いします。

3、犬のがんの急性痛・慢性痛について

3-1、犬のがんの急性痛・慢性痛

がんによる痛みには急性痛と慢性痛の二種類があります。急性痛は腫瘍が急激に発生したとき、膵炎などの劇的な症状が出たとき、手術を行った直後の犬などに発生します。慢性通は術後の経過、がんが長期化したときなどに発生します。

痛みの評価方法として、急性痛ではレベル4を最大の痛みとして評価するペインスケールが、慢性通では痛みの判別のためのチェックポイントが報告されています(動物の痛み研究会)。これらの評価は飼い主さんでも簡単に行うことができ、獣医師に犬の痛みを正しく伝え適切な治療をするために効果的です。

3-2、急性痛のペインスケール(一例)

レベル1:ゲージから出ようとしない、尾が垂れている、患部を舐めたり噛んだりして気にする、などの行動が見られます。
レベル2:耳が垂れている、食欲の低下、自分から動かない、痛いところをかばう、などの行動が見られます。
レベル3:体が震えている、攻撃的になる、横にならない、間欠的に鳴く・唸る、体を触ると怒る、などの行動が見られます。
レベル4:食欲が完全になくなる、ずっと鳴く・唸る、なきわめく、眠らなくなる、全身が硬直するなどの行動が見られます。

3-3、慢性痛のチェックポイント(一例)

・散歩や遊び、ソファーなどの上り下りなどの運動を嫌がるようになった
・立ち上がるときにつらそうになった
・尾を下げている時間が増えた
・寝ている時間が増えた、減った
・足を引きずるようになった

3-4、犬のがんの痛みに関して(がんの痛みの評価)

犬のがんの痛みについては明らかにされていないことが多いのが特徴です。各腫瘍における痛みの程度については未だ十分な研究がなされていません。消化器、泌尿器、口腔・鼻腔、皮膚、乳腺、骨、中枢神経系における腫瘍においては痛みがあると言われており、がんの緩和ケアにおいて重要になるのは、犬が感じている痛みを評価することになります。

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実は動物病院では犬が我慢してしまうことから、痛みを正しく評価できない場合があります。獣医師は手術などの治療を中心に犬にとってひどいことをしますし、飼い主さんとも離ればなれになってしまいます。そんな恐怖心が強まる状況下では、犬は痛みを頑張って隠してしまうのです。犬にとって飼い主さんは信頼できるパートナーですので、家で飼い主さんと一緒にいるとき、犬は自分がどれくらい痛いのかをしぐさや声で表してくれるかもしれません。

犬の痛みを一番正しく評価できるのは飼い主さんですので、急性痛、慢性痛の評価方法で飼い主さんが痛みを評価することが大切。その情報から獣医師が適切な処置を行うことが痛みの緩和ケアに最も有効と言えるでしょう。

4、ペインコントロールに有効なその他の治療法

犬のがんの緩和ケアに有効な補助的な治療法には身体リハビリテーション、サプリメントなどが挙げられます。これらの補助療法は鎮痛薬、抗炎症薬などの治療法と併用することで、より効果的なものになります。また、腫瘍の種類によっては大変危険な状態になる補助療法の組み合わせもあります。
例えば、肥満細胞腫などは腫瘍部を物理的に刺激することで、犬に劇的な症状が発生します。補助療法を行う場合は必ず獣医師に相談の上行ってください。

・身体リハビリテーション|運動療法、物理療法などがあり、運動療法は運動により血流、リンパの流れを改善します。人の場合、NSAIDsと同等の鎮痛作用があると報告されています。物理療法には温熱療法、冷却療法などが含まれます。温熱療法は運動療法と同じく、犬の血流、リンパの流れを良くすることで鎮痛作用をもたらします。冷却療法は急性疼痛の緩和に有効だという報告があります。

・サプリメント|ω-3脂肪酸、グルコサミン・コンドロイチンなどが含まれます。ω-3脂肪酸のうち「エイコサペンタエン酸(EPA)」と「ドコサヘキサエン酸(DHA)」は穏やかな鎮痛作用を持ち、慢性痛の補助的治療に使用できると報告されています。その他のω-3脂肪酸には鎮痛作用はないため注意が必要です。グルコサミン・コンドロイチンも同様に穏やかな鎮痛作用を持ち、慢性痛の補助療法として使用できる可能性があります。しかし、これらの物質の軟骨に対する保護効果については科学的に十分な根拠はありません。


WRITER Profile

獣医師ライター:  若林 薫
子犬や子猫の治療、健康管理を得意分野とする。動物病院の獣医師と飼い主を繋ぐための専門的で分かりやすい記事を執筆。獣医師免許証保有。

サイト運営者:  望月 紗貴
犬たちの幸せ(=飼い主の意識の向上)を目的とし情報提供サイトを開設。犬の看護師や介護士、管理栄養士資格など保有。他社の記事監修・作成も多数請け負う。

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がんの愛犬のために飼い主ができること

目次:
1、がんの犬のためにできること|精神
2、がんの犬のためにできること|医療
3、がんの犬のためにできること|健康
4、今を生きる愛犬に寄り添う生活

犬の「がん」の告知や余命宣告は、飼い主にとってあまりに辛く精神的に耐え難いものです。私も今は亡き愛犬バーニーズマウンテンドッグのがん告知や余命宣告を2度経験。生きている心地がしないような辛い時期もありました。しかし、たとえ残り僅かな時間だとしても、飼い主の意識の変え方次第で愛犬を幸せにできることは確かなことです。

今回は、愛犬のがんと向き合った約3年半で経験した体験談を踏まえ、がんの犬のために飼い主ができることについてご紹介致します。

1、がんの犬のためにできること|精神

1-1、飼い主の不幸は犬に伝染する

がん告知や余命宣告を受けると、当たり前のことですが飼い主は非常に落ち込みます。私なんかは、頭が真っ白になり獣医師の言葉が耳に入って来ず、立っていることさえできませんでした。

しかし、犬は人(特に大好きな飼い主)の感情を敏感に感じ取ります。飼い主が悲しい・辛い・苦しいなどのネガティブな感情を抱いていると、それらはほぼ全て繊細な心を持つ犬に伝染します。私たち飼い主が不幸だと犬も不幸になってしまうのです。

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1-2、愛犬の幸せのために自分が幸せになる

そこで大切なことは、飼い主が自身の精神的コントロールを心がけること。重く圧し掛かる余命宣告の言葉は無理にでも追い出さないと、どんどん頭の中で大きくなってしまいます。

私も泣き崩れたときもあり、このような状況下で前向きになるのは決して簡単なことではありません。しかし、せめて愛犬の傍にいるときは幸せでいなければいけない。残り僅かであっても傍にいること、傍にいてもらえることに感謝しなければいけない。たった今、目の前で必死に生きている愛犬を幸せにしなければいけません。だから、愛犬が幸せでいるためには、飼い主が幸せでいなければいけないということを頭の片隅に置いておいて欲しいのです。

2、がんの犬のためにできること|医療

2-1、医療の選択をするのは飼い主

愛犬ががんになっても、当たり前のことですが獣医師免許を持っていない飼い主には治療を施してあげることはできません。しかし、最終的に医療の選択をするのは飼い主です。外科手術で腫瘍を摘出するのか、抗がん剤治療(化学療法)や放射線療法を行うのか。緩和ケアにするのか・・。

私の場合は1度目の血管肉腫のときは摘出手術のみ選択。2度目の組織球肉腫のときは摘出手術後に抗がん剤を短期間利用したが、緩和ケアに移行。愛犬が病院嫌いなことから飲み薬の抗がん剤を使用したが、がんの転移状況と副作用の関係で獣医師に相談して短期間で断念しました(以下、愛犬の闘病ブログ)。

https://true-dog-lover.com/pet-dog-blog/fight-against-cancer/

医療の選択に関しては、飼い主に重く責任が圧し掛かるような気がしてしまいますが、「愛犬が幸せな余生を過ごすために考えた飼い主の選択」が一番です。どんな選択をしても多かれ少なかれ必ず残る後悔。ならば、愛犬が少しでも幸せな余生を過ごすためにはどんな選択ができるのかを考えれば答えがでるのではないでしょうか。

2-2、医療技術だけでなく相談できる獣医師

近年では、セカンドオピニオン外来を受け付けている動物病院も増えましたが、獣医師の選択は飼い主の自由です。獣医師を選ぶとき私が一番重要視したことは、医療技術もさることながら相談できる獣医師であるか否かでした。

私の場合、1度目に愛犬のがん告知を受けた動物病院で「がんですね。抗がん剤治療も考えた方が良いですね」と素っ気なく言われ、詳しい説明や今後の医療の選択に関しての説明がなかったのでセカンドオピニオン外来に行くことにしました。結果、動物先端医療を行っている病院で腫瘍科を専門とする相談できる獣医師に出会うことができました。愛犬のがんと向き合っていく中で、専門性もさることながら獣医師の人間性や言葉にどれほど救われたか分かりません。

獣医師はカウンセラーではないので、飼い主の心理的相談をするべきではありません。しかし、ただでさえ愛犬のがん告知や余命宣告で不安が多い中、専門的だけど分かりやすい医療説明をしてくれ、その犬の状況(がんの部位や種類、進行度合いなど)や性格に配慮した医療を提案してくれる獣医師は非常に心強いものです。獣医師からもらえる情報量が多ければ多いほど、抗がん剤1つにしてもなんにしても私たち飼い主の選択肢が広がります。

セカンドオピニオン外来は、なにも飼い主の身勝手で動物病院をころころと変えるためのものではありません。獣医師の人間性や医療方針、医療技術などを総合的に評価して自分と愛犬の状況に合った動物病院を選択することが大切です。

2-3、がんの情報を可能な限り入手する

がん告知や余命宣告はそれほど頻繁にされるものではありませんので、多くの飼い主はこのような状況下におかれたとき、自分がこれから愛犬のために何をすべきかが分かりません。私も精神的混乱とがん治療に関する知識のなさから、右も左も分からない状況に追い込まれました。そこで考えたのが、犬のがんについての情報入手をすることでした。自分に少しでもがんの知識があれば、愛犬の幸せな余生のために役立つかもしれないと考えたからです。

読みなれない専門書を愛犬が寝ている間に毎晩読んで、タイトルに「犬のがん」と表記があるものは片っ端から買いあさりました。心細くなったときは、SNSで愛犬ががんを発症した経験のある方のブログもたくさん拝見させていただきました。同じ経験をしている飼い主の存在は、とても大きいものです。

この時期には数えきれない本を読みましたが、医療系の本は獣医師の説明に対しての理解度を深めるためには役立ったが、実際に自分が治療できるわけでないのでそれ程は役に立たず・・。愛犬を支えるために必要な飼い主の意識の持ち方だとかやるべきこと、知っておくべきことなどが簡単に理解できる以下のような本が非常に役立ちました。

3、がんの犬のためにできること|健康

3-1、愛犬の精神的な健康維持をサポート

愛犬の精神的な健康を維持してあげるためには、QOLの向上が非常に大切です。先述でお話した通り、愛犬にストレスフリーの生活を提供してあげるためには、飼い主の精神的な安定は一番大切ですが、愛犬が好きなことで溢れる毎日にしてあげるように工夫することも大切です。

私の愛犬の場合は、とにかく人が好き。ドッグカフェを中心にお出かけも大好き。愛犬が3才半で血管肉腫になってから、亡くなる数日前まではお出かけをして人に会うことを生活の中心においていました。もちろん十分な睡眠をとらせて体に負担がかからないような方法で・・。

犬によって「好きなこと」は異なり、飼い主と終始家でまったりしているのが好きな犬もいれば、一人でのんびりと過ごす時間が必要な犬も。外で遊ぶのが好きな犬もいれば、外が苦手な犬も。おもちゃ1つとっても噛むものが好きな犬もいれば、頭を使う知育おもちゃが好きな犬もいます。

愛犬が好きなことに関しては飼い主さんが誰より詳しいので、些細なことでも良いので犬が好きなことで溢れる毎日にすることが大切。飼い主さんによって、仕事があったり金銭的な事情があったりと様々ですので、無理をせずにできる限りの工夫をしてあげれば良いのだと思います。

3-2、愛犬の肉体的な健康維持をサポート

がんという大きな病気と闘う愛犬のために、飼い主さんが手術を施したり抗がん剤治療を行うことはできません。しかし、毎日の食事管理や運動管理、睡眠時間の管理を中心に犬の肉体的健康維持をサポートすることはできます。

私の場合は幸い時間があったので、愛犬の1度目のがん告知から必死で看護学や管理栄養士の勉強をして、手作りご飯を中心にがんと闘うための体づくりをサポートしてきました。しかし、余命僅かであったり単純に時間がないとそうもいきません。

そんなときは、寝ている間だけでも愛犬が心地が良いよう寝床を工夫したり環境に配慮したりすることはできます。手作りご飯でなくても、ドッグフードに配慮したり免疫力応援に役立つサプリメントを追加するなど、食の改善もできますし、運動ができる状態であれば体に負担がかかりにくいよう工夫することもできます。どんな些細なことでも良いので、愛犬をよく観察しながらこうしたら愛犬の体に良いのではないかと考えながら生活環境を整えてあげることが大切です。

4、今を生きる愛犬に寄り添う生活

愛犬のがん告知や余命宣告は飼い主に重くのしかかり、精神的にも追い込まれます。しかし、愛犬の余生を幸せにできるのは飼い主さんだけなのではないでしょうか。愛犬に気づかれなければ何度だって泣いていい。ただ、犬が悲しまないよう一緒にいるときは自分が幸せでいること、愛犬の気持ちに寄り添って生活をすることがとても大切なのではないでしょうか。

私も愛犬のために、また自分が後悔しないよう愛情溢れる看護・介護をしてきたつもりですが、やはり思い返せば思い返すほど後悔が付きまといます。こうすれば良かった、ああすれば良かったなんて思うことは、今でも毎日のように・・。しかし、完璧にできなくても愛犬の心と体に寄り添って生活したという事実だけが、唯一の心の支えになっているのだと思います。

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