犬に必要な微量ミネラルと食材〔犬の管理栄養士解説〕

目次:
1、犬に必要な栄養素の欠乏症と中毒
2、犬に必要なミネラルとは?
3、微量ミネラルの体内での働き
4、微量ミネラルの欠乏症&中毒や食材
5、実は危険な犬の手作りご飯

愛犬に手作りご飯を作る方が増えてきましたが、作るときは犬に必要な栄養素について配慮して食材選びをする必要があります。今回は、犬の手作りご飯に必要な必須栄養素「ミネラル」とその食材についてご紹介致します。

なお、ここではミネラルの種類や脂肪の欠乏・過剰によって起こりうる問題、食材を中心に紹介致しますので、犬の手作りご飯の栄養素配分の基本については【犬の手作りご飯|量や配分など】をご確認ください。
その他の5大栄養素に関しては、【犬の食事管理ページ】で解説しています。


1、犬に必要な栄養素の欠乏症と中毒

犬に必要な栄養素は、「たんぱく質」、「脂肪」、「炭水化物」、「ビタミン」、「ミネラル」の5大栄養素であり、これらに「水」を加えて6大栄養素と呼ぶこともあります。

手作りご飯やドッグフードでは、これら必要栄養素がある程度犬の体に適したバランスで配合されている必要があり、特定の栄養素が極端に不足すると欠乏症として体に何かしらの症状が引き起こされる可能性があります。

また、特定の栄養素が極端に過剰に含まれる食事によって、中毒症状が引き起こされることもあります。そのため、愛犬の健康維持のために作る手作りご飯では、必要栄養素や食材に関する基礎知識が最低限必要になります。

愛犬にも品質の高い食事を、と愛情を込めて作った手作りご飯のせいで愛犬の体調が悪くなるのでは意味がありませんので、基礎知識はしっかりと身につけておきましょう。


2、犬に必要なミネラルとは?

ミネラルは、食物内に存在する無機質(酸素や炭素、水素、窒素以外の物質)であり、犬の体の約4~5%がミネラルです。ミネラルの種類に関しては、全体で40種類程度あるものの、犬の場合はそのうちの18種類以上が必須栄養素とされています。

※必須栄養素=食物(食事)から摂取する必要がある栄養素

2-1、犬が食事から摂取する必要があるミネラル

犬が食事から摂取する必要があるミネラルは大きく分けて、「主要ミネラル」と「微量ミネラル」に分類され、18種類以上が食事からの摂取で必要とされます。特に微量ミネラルは犬にとって必要不可欠な栄養素となるので、手作りご飯やトッピングご飯を作るときは念頭に置いておきましょう。

  • 主要ミネラル(7種類)
    ナトリウム、カリウム、カルシウム、リン、マグネシウム、イオウ、塩素
  • 微量ミネラル(11種類)
    鉄、亜鉛、ヨウ素、銅、セレン、マンガン、コバルト、モリブデン、クロム、ホウ素、フッ素

3、微量ミネラルの体内での働き

ここでは、微量ミネラル(ホウ素とフッ素は除く)の働きについて一例をご紹介致します。主要ミネラルについては、【犬の手作りご飯|主要ミネラルと食材】をご確認ください。


  • 鉄(Fe)は、ヘモグロビンやミオグロビンを構成するための成分となっており、酸素を輸送するためにも必要不可欠です。
  • 亜鉛
    亜鉛(Zn)は、皮膚や被毛の健康維持に重要な栄養素で、様々な酸素の構成成分でもあります。その他、たんぱく質代謝機能に関与するなどの働きをもちます。
  • ヨウ素
    ヨウ素(I)は、主に甲状腺ホルモン(犬の体の代謝を活性化するためのホルモン)を合成するために必要な栄養素です。

  • 銅(Cu)は、ヘモグロビンの合成や鉄の代謝に必要な栄養素で、コラーゲンやATP(アデノシン三リン酸)の合成にも必要となります。
  • セレン
    セレン(Se)は、活性酸素の1種(過酸化水素)を解毒するための酵素に含まれており、抗酸化作用に関与している栄養素です。
  • マンガン
    マンガン(Mn)は、犬の体内でコンドロイチン硫酸(主に軟骨形成成分)を合成するために必要な酵素成分として働きます。
  • コバルト
    コバルト(Co)は、ビタミンB12(コバラミン)の構成成分として働きます。なお、ビタミンB12に関しては、犬の赤血球の産生などに関与する栄養素です。
  • モリブデン
    モリブデン(Mo)は、新しい細胞の生まれ変わりに必要な「核酸」の代謝に関与する酵素を作り出す成分です。
  • クロム
    クロム(Cr)は、血糖を下げる働きのあるホルモンである「インスリン」機能や糖の代謝に関与する栄養素です。

4、微量ミネラルの欠乏症&中毒や食材

ここでは、犬に必要な微量ミネラルの欠乏症と中毒についてご紹介致しますが、微量ミネラルのうち、セレン、モリブデン、クロム、ホウ素、フッ素は、中毒症状に注意が必要なため、犬の手作りご飯においては要求量を大幅に超えないよう食材選びに配慮しましょう。

  • (ほうれん草、木綿豆腐、卵など)
    市販のドッグフードには、一般的に必要量を大幅に超える鉄が含まれていますが、過剰な鉄の摂取は食欲不振を生じさせたりリンの利用性を低下させる原因になるといわれています。犬の手作りご飯などで不足した場合、貧血や呼吸の障害、組織上の低酸素状態などが起こることがあります。
  • 亜鉛(豚レバーや牛肉、卵など)
    亜鉛を過剰に与えると、中毒症状として犬の体内のカルシウムや銅の不足を招く危険性があります。不足した場合は、皮膚障害によって角化症や脱毛が引き起こされたり発育障害、食欲不振などが生じることがあります。
  • ヨウ素(ワカメやヒジキなど)
    甲状腺ホルモンの構成要素としての要素が犬の体内で不足すると、甲状腺機能障害を引き起こす危険性が増します。また、過剰に与えた場合は、中毒症状として食欲不振などの原因になります。
  • (牛レバー、豚レバー、ひきわり納豆など)
    銅が犬の体内で長期的に不足すると、貧血症状や成長障害、骨格異常などの原因になります。また、過剰に与えて中毒となった場合、肝炎や肝壊死を招くことがあります。
  • セレン(マグロや干しエビ、タラなど)
    犬の場合、自然発生としてのセレン不足は起こりにくいものの、不足した場合は食欲低下などの原因になります。また、過剰に体内に存在したときの中毒症状としては、嘔吐や痙攣、呼吸困難などが引き起こされやすいので、要求量を大幅に超えないよう配慮が必要です。
  • マンガン(シソやモロヘイヤ、パセリなど)
    軟骨形成に必要な酵素成分であるマンガンが犬の体内で不足すると、繁殖障害や成長不良の原因になります。また、過剰になり中毒症状が引き起こされることはごく稀です。
  • コバルト(魚介類やレバーを中心とした肉類など)
    コバルトは犬においての要求量がごく微量なため、過剰に与えすぎないよう注意が必要。万が一不足した場合は貧血症状を引き起こすことがありますが、何より犬の手作りご飯においては要求量を大幅に超えないよう注意が必要です。
  • モリブデン(穀類や木綿豆類、豚レバーなど)
    モリブデンが犬の体内で大幅に不足すると、成長障害を引き起こす危険性がありますが、欠乏症より中毒症状の方が生じやすいといわれているため、犬の手作りご飯においては多く与えすぎないよう注意が必要です。
  • クロム(ジャガイモやヒジキなど)
    犬の体内で大幅に不足すると、繁殖障害や成長障害を引き起こす危険性があり、その他、耐糖能低下(血糖値が高くなったときに正常値まで下げる能力が低下した状態)を引き起こす原因になります。

5、実は危険な犬の手作りご飯

今回は、犬の手作りご飯に役立つ栄養学、微量ミネラルについてご紹介致しました。愛犬に手作りご飯をつくる上で全ての栄養素において欠乏症や中毒の内容を暗記する必要はありませんが、1つ1つの栄養素全てに意味があるのだということを理解しておかなければいけません。

犬の手作りご飯レシピをインターネット上で多く見かけますが、栄養バランスを考慮すると大変危険なレシピも数多くあります。手作りご飯がしっかりとバランスの良い食事になっているか都度見直すことが大切です。

なお、5大栄養素の基礎知識については事前に【犬の手作りご飯|量や配分など】をご確認ください。その他、5大栄養素については【犬の管理栄養学】で紹介しています。


参考文献:
・(獣医師)藤本愛彦,犬の管理栄養士,一般社団法人全日本動物専門教育協会,2018.
・奈良なぎさ,犬と猫の栄養学,緑書房,2016.
・阿部又信,動物看護のための小動物栄養学,株式会社ファームプレス,2008.
・左向敏紀,獣医師教育モデル・コアカリキュラム準拠,株式会社インターズー,2015

記事作成者:  望月 紗貴

犬たちの幸せ(=飼い主の意識の向上)を目的とし情報提供サイトを開設。犬の管理栄養士や救命士、介護士資格など保有。他社の記事監修・作成も多数請け負う。

©️犬の情報配信サービス BOWWOW Info.