犬の健康管理|腫瘍の早期発見のための健康チェック

目次:
1、見える腫瘍と見えない腫瘍
2、見える腫瘍の確認
3、見えない腫瘍の確認

昔に比べると犬の飼育環境は格段と良くなり、人間と同様に長寿高齢化が進んでいると言われています。その反面、高齢犬では腫瘍性疾患は死因の第一位となり、腫瘍の予防医療の必要性が高まっています。

腫瘍の早期発見は、リンパ浸潤や多臓器転移のリスクを減らすことができ、飼い主さんが日々の観察で気づくことができるケースもあります。悪性腫瘍においては、早期発見できるか否かによって余命が左右されることが多いので、動物病院での定期的な健康診断を受けさせるだけでなく、自宅で愛犬の健康管理を行うことが大切です。

1、見える腫瘍と見えない腫瘍

ここでは、目で確認できる腫瘍と目では確認できない腫瘍を中心にご紹介致します。犬を家族として迎え入れた場合は、愛犬の健康管理を欠かさずに行いましょう。

1-1見える腫瘍と見えない腫瘍

腫瘍は身体のどこにでも発生します。皮膚表面にできる腫瘍や、四肢にできる腫瘍はしこりや肢の痛みのように目で見える症状として現れ、日々の健康チェックで早期発見ができる可能性があります。

一方、肝臓や脾臓などの臓器にできる腫瘍は元気喪失や食欲不振のように、見えない症状を引き起こし発見が遅れてしまうことがあります。転移のしやすさや浸潤(腫瘍が広がること)の速さが異なるため一概に言いきることはできませんが、腫瘍を早期発見できればそれだけ治療の成功率は上がります。

1-2、早期発見を行うためには

腫瘍の早期発見には「愛犬の小さな違和感にどれだけ早く気づけるか」が大切です。症状が分かりにくく見えない腫瘍においては特にこれが当てはまり、日々愛犬の健康管理を行うことによって小さな違和感を発見できる可能性が高まります。

1-3、健康チェックを始める年齢

冒頭で述べたように犬の長寿化によって腫瘍の発生率は上がり、多くは中~高齢で発生します。しかし、若齢だから腫瘍が発生しないわけではありません。

12カ月齢以下の犬でも、軟部組織肉腫、メラノーマ、骨肉腫、血管肉腫等の悪性腫瘍が発生したという報告がありますので、若いうちから健康管理の一環として身体チェックを始めましょう。言葉を話すことができない犬だからこそ、家族として迎え入れる場合は生涯にわたって行う習慣として健康チェックを日々行う必要があります。

ただし、若齢の犬は身体が成長途中ということもあり、健康チェックには注意が必要。無理に四肢を動かそうとしたりするとケガをする可能性もあります。身体を確認する際は、愛犬の体や心に負担がかからないよう気をつけましょう。

2、犬の健康管理|見える腫瘍の確認

ここでは、皮膚と四肢の健康チェックを中心に、腫瘍の早期発見に役立つ健康管理についてご紹介致します。

2-1、皮膚の健康チェック

皮膚のチェックを行う場合、お腹のような毛が少なくて地肌が見えやすい部分だけではなく、背中や顔などの被毛が多い部分もくまなくチェックしましょう。異常はしこりや脱毛、発赤、かゆみなどの症状としてあらわれます。

腫瘍によってはしこりを作らず、一般的な皮膚病によく似た発赤を伴った脱毛のような症状をみせることもあります。全ての皮膚症状を腫瘍だと疑う必要はありませんが、小さな症状を放置せずに早めに動物病院で検査してもらうことをおすすめします。

細菌性・真菌性の皮膚病が原因ならその治療ができますし、万が一腫瘍が発生していたとしても早期発見につながるケースがあるので愛犬の健康管理に有効です。

2-2、四肢の健康チェック

四肢に発生する腫瘍を見つけるためには、痛みのサイン、しこりや関節の腫れを観察します。このとき、左右の肢を比較すると一層異常を見つけやすくなります。

腫瘍は「片側性」といって、比較的片方の肢に発生することが多く(両側性に発生するものもあります)、正常な肢と何かしらの異常がある肢を比較することで腫瘍の発見率は上がります。

2-3、痛みのチェック

犬が四肢に痛みを感じているとき、跛行(はこう)や挙上などの症状が見られます。「跛行」は肢を引きずったり、びっこを引いたりする動作のことを意味するのに対し、「挙上」は肢を地面につけることを嫌がる動作です。

その他、跛行や挙上をみせない痛みのサインもあり、犬が肢に体重がかかるのを嫌がり、頭を上下に振りながら歩くことがあります。

2-4、大型犬と四肢チェック

四肢のチェックはどのような犬種でも行うべきですが、大型犬や超大型犬は四肢に発生しやすい骨肉腫の好発犬種であるため、特に入念に行う必要があります。骨肉腫は重度の痛みを伴い、腫瘍の転移防止だけでなく痛みを取り除くために治療で肢を切断しなければいけないこともあります。

犬はもちろんですが、飼い主さんの負担も大きいのが特徴です。また、骨肉腫は全身の臓器に転移しやすく、外科的処置そのものが難しいこともある悪性度の高い腫瘍ですので早期発見がとても大切です。

2-5、粘膜のチェック

粘膜のチェックでは炎症がないか、色や臭いは正常かを気にするようにしましょう。例えば、口腔ではメラノーマや扁平上皮癌、繊維肉腫などの悪性腫瘍が発生しますが、これらは炎症を引き起こし、歯肉や粘膜の発赤や腫脹などの症状が出ます。

メラノーマでは粘膜の黒色部が拡大する、新しく出来るなどの色の変化がおきます。口臭がひどくなるような症状も頻繁に発生するので、日々健康管理をする上で愛犬の口臭チェックも行いましょう。

3、犬の健康管理|見えない腫瘍の確認

腫瘍においては見えない腫瘍も数多くあるので、愛犬の些細な変化を見逃さないよう、定期的にバイタルサインを確認して動物病院での検査を行いましょう。

3-1、早期発見の難しさ

内臓などに発生する腫瘍は、食欲不振、元気喪失のような小さな体調不良しかみせないことがあるので、早期発見が難しいケースがあります。初期症状が一見して分かるものではないので、些細な変化に気づいてあげることが大切です。

3-2、小さな違和感に気づく

些細な体調不良に気づくためには、「愛犬の健康な状態」を知っておく必要があります。健康チェックでは体温、体重、糞や尿の状態、粘膜の状態などを確認しましょう。日々行うことで正常な範囲が分かってくると思います。

腫瘍や内分泌疾患などの早期発見が難しく、大事に至ることが多い病気は僅かな炎症や代謝の異常を通じてバイタルサイン(脈拍・血圧・呼吸・体温)に変化をもたらします。見落としがちな違和感として犬の状態に現れますので、これらの病気を見つけ出すためには、愛犬の健康状態をしっかりと確認して小さな違和感に気が付くことが大切です。

犬によってバイタルサインやその他の体の正常値に関しては個体差があるので、まずは自宅で計測できるものは定期的に計測して、「愛犬の健康な状態」を知っておくことが大切です。正常値を把握しておくことで異常に早く気が付くことができるので、健康状態の詳しい確認を行ってみてください。チェック方法については、【自宅でできる健康チェック】をご確認ください。

3-3、健康診断を受診する

飼い主さんによる健康チェックは腫瘍の早期発見にとても役立ちます。日々の健康を直接知ることは動物病院の獣医師には難しく、飼い主さんだからこそできることなのです。

しかし、我々獣医師だからできることもあります。獣医学的な技術や専門機器、知識を駆使した健康診断です。健康診断のコースは動物病院によって異なりますが、大抵の場合は採血による血球検査・血液生化学検査、エコーやX線撮影装置を使った画像検査が含まれています。

これらの検査により、見える腫瘍だけではなく見えない腫瘍を見つけ出せる可能性が高まりますので、定期的な健康診断は必ず受けさせ、それに加えて自宅で日々の健康管理を行うことをおすすめします。


WRITER Profile

獣医師ライター:  若林 薫

子犬や子猫の治療、健康管理を得意分野とする。動物病院の獣医師と飼い主を繋ぐための専門的で分かりやすい記事を執筆。獣医師免許証保有。


サイト運営者:  望月 紗貴

犬たちの幸せ(=飼い主の意識の向上)を目的とし情報提供サイトを開設。犬の管理栄養士や看護師、介護士資格など保有。他社の記事監修・作成も多数請け負う。