犬の抗がん剤による副作用や対処法など

目次:
1、腫瘍の発生と抗がん剤
2、抗がん剤の種類別副作用
3、抗がん剤の副作用に対する対処法
4、抗がん剤による副作用を減らすための治療法

愛犬の悪性腫瘍が発覚したとき抗がん剤治療も選択肢の一つになりますが、副作用リスクに関しても頭に入れておくことが大切です。私自身、愛犬の組織球肉腫の抗がん剤治療で胃腸障害や食欲不振などの副作用が引き起こされ、愛犬はもちろんですが見ている私もとても辛い経験をしました。

実際に副作用軽減のための対処を行うことができるのは獣医師ですが、日々の愛犬の様子を詳しく確認して獣医師に伝えることができるのは飼い主さん自身です。今回は、抗がん剤によって起こりやすい副作用や動物病院での一般的な対処法について獣医師に詳しく解説していただきました。

1、腫瘍の発生と抗がん剤

ここでは、腫瘍細胞の発生や抗がん剤による副作用の基本的内容を解説します。

1-1、腫瘍はどこから来るのか

多段階発癌説という仮説があり、これは正常な細胞が腫瘍細胞に変化するまでの3つの段階について述べたものになります。はじめの変化である「イニシエーション」では、正常細胞のDNAが変異し、次の変化である「プロモーション」では、DNAの変異を持つ細胞が新たな変異を蓄積させながら増殖。

最後の変化である「プログレッション」では、細胞は増殖能と転移能を獲得し、腫瘍細胞に変化します。このことから、腫瘍細胞というものは、そもそも犬の正常な細胞であったとも言えるのです。

1-2、薬の種類別副作用

一例として抗生物質は、動物細胞と細菌の生理学的な違いを利用して細菌を特異的に攻撃し、抗真菌薬は抗生物質と比較すると副作用が大きいのが特徴です。真菌は細菌より動物細胞に近い、つまりは進化的に近縁とも言える特徴を持つためです。

犬で使用される抗がん剤も、抗真菌薬よりさらに強い副作用を持ちます。腫瘍細胞と正常な細胞は同じ動物細胞であり、基本的な生理学的構造は共通しているからです。

2、抗がん剤の種類副作用

ここでは、犬に使用される抗がん剤の種類別で、一般的に引き起こされやすいといわれている副作用について紹介していきます。

2-1、種類と副作用

アルキル化剤|
アルキル化剤に関しては、シクロフォスファミド、ロムスチン、クロラムブシルなどが代表的です。DNAの複製を阻害し、副作用としては骨髄抑制(ロムスチンで重度)、出血性膀胱炎(シクロフォスファミド)などの副作用が生じる犬がいます。

代謝拮抗剤|
代謝拮抗剤に関しては、メトトレキサートや5FUなどが代表的です。DNAの合成に必須である物質に置き換わり合成を阻害しますが、骨髄抑制などの副作用が生じる犬がいます。

ビンカアルカロイド|
ビンカアルカロイドに関しては、ビンクリスチンやビンブラスチンなどが代表的です。細胞分裂や染色体分裂をつかさどる微小管と呼ばれる糸を機能不全にさせます。ビンカアルカロイドの副作用としては骨髄抑制と神経毒性(ビンクリスチン:末梢性の神経毒性で便秘が起こる)などの副作用が生じる犬がいます。

抗腫瘍抗生物質|
抗腫瘍抗生物質に関しては、ドキソルビシンなどが代表的です。DNAやRNAの合成を阻害します。ドキソルビシンの副作用としては、心毒性(心臓に悪影響な毒性)などが知られています。

白金製剤|
白金製剤に関しては、カルボプラチンやシスプラチンなどが代表的です。DNAの複製を阻害し、犬に起こりやすい副作用としてシスプラチンの場合は腎毒性、重度嘔吐、聴覚器毒性、骨髄抑制。カルボプラチンの場合は、骨髄抑制などが引き起こされる可能性があります。

抗腫瘍酵素製剤|
抗腫瘍酵素製剤に関しては、L-アスパラギナーゼなどが代表的です。特定の腫瘍が主な栄養素として利用するアスパラギン酸を分解します。L-アスパラギナーゼに関しては、急性膵炎などの副作用が知られています。

3、抗がん剤の副作用に対する対処法

ここでは、抗がん剤によってよく犬に起こる副作用や、動物病院で一般的に行われる対症療法についてご紹介致します。

3-1抗がん剤でよく起こる副作用

抗がん剤にはよく確認される副作用があり、吐き気や下痢、好中球(代表的な白血球)減少症がこれにあたります。癌細胞は正常な細胞より分裂速度が速く、その違いを標的にする薬が多く存在しますが、分裂速度が速い腸の上皮細胞や骨髄の血球系幹細胞(白血球の元になる細胞)は影響を強く受けます。

この結果として、下痢や好中球減少症などの抗がん剤副作用が引き起こされやすくなります。また、抗がん剤は毒性の高い異物なので、吐き気が副作用として現れることが多くあります。

3-2、副作用の症状に応じた対処法

動物病院で行われる下痢の対処法としては、メトロニダゾールやタイロシンなどの抗生物質やその他の下痢止めが使用されています。

好中球減少症への対処法としては、抗がん剤投与前に抗生物質を投与する方法と、「G-CSF(顆粒球コロニー形成刺激因子)」の投与によって好中球そのものを増やす方法があります。

吐き気に対処するためには、マロピタント、オンダンセトロン、メトクロプラミドなどの制吐剤が使用されるなど、副作用の症状に応じて獣医師が犬の状況に応じた薬を使用します。

その他、抗がん剤は腎臓から排出されるものと肝臓で代謝を受け胆汁を通して腸管に排出されるものがありますが、腎臓から排出されるものの場合、腎障害や泌尿器障害を引き起こすことがあります(シクロフォスファミドの出血性膀胱炎等)。

このようなケースでは、利尿剤の投与により腎・泌尿器を尿で洗い流し、抗がん剤代謝物の毒性を弱め対処するなどの方法があります。いずれの場合も、対症療法を行うためには愛犬の状況を飼い主さん自身が細かく確認して、獣医師に的確に犬の症状を伝えることが大切です。

3-3、モニタリングによる対処

抗がん剤の持つ副作用が犬が許容できる範囲内に収まるように、個々の犬のバイタルサインや血球数、血液生化学測定値をモニタリングしながら、抗がん剤の投与量を調節していく方法も一般的です。前述した薬剤による対症療法と組み合わせて行います。

4、抗がん剤による副作用を減らすための治療

現在に至るまでに、獣医療でも抗がん剤の持つ副作用を回避するために様々な方法が生み出されてきました。ここでは、いくつかご紹介していきますが、犬に発生している腫瘍の種類によっては使用できない方法や、本当に効果的か否かが不明瞭(現状実験段階)の方法もあります。

4-1、多剤併用療法

多剤併用療法とは、犬に複数の抗がん剤を組み合わせて投与することで単剤の投与量を低くして副作用を抑え、それに加えて異なる作用機序を組み合わせることで効果的に腫瘍を攻撃します。

多剤併用療法はリンパ腫の一般的な治療法として使用されており、科学的な根拠のあるいくつものプロトコールが存在します。なお、犬のリンパ腫の抗がん剤プロトコールに関しては【犬のリンパ腫|抗がん剤の種類や効果など】をご確認ください。

4-2、分子標的薬における副作用軽減

トセラニブ|
皮膚肥満細胞腫の治療に用いられるトセラニブという抗がん剤があり、これは分子標的薬と呼ばれる、腫瘍細胞が正常な細胞より多く持つ物質(トセラニブではKIT分子等)を標的にした薬剤です。

一般的な犬の抗がん剤よりさらにピンポイントで腫瘍細胞のみを攻撃でき、副作用の発現を抑えることができます。しかしながら、完全に副作用がないわけではありません。日本におけるトセラニブの副作用は、投与された犬のうち約60%で食欲不振、約20%で嘔吐、約40%で下痢、約10%で白血球減少症(免疫力低下)が起きたという報告があります。

これらの副作用は、多くは対症療法(根治を目的としない症状を抑えるための治療)で改善したとも述べられています。トセラニブは、皮膚肥満細胞腫のみに認可が下りている薬剤ですが、いくつかの腫瘍に対しても効果があると示唆されており、今後の研究によって新たに認可が下りる可能性があります。

ニボルマブ|
人の悪性メラノーマの治療に用いられる、ニボルマブという抗がん剤があります。メラノーマで多く発現するPD-1分子に対する分子標的薬ですが、ニボルマブは犬には効果がないといわれています。

しかしながら、犬に対してある程度の効果が報告された同じ作用機序を持つ分子標的薬が現在研究されているので、今後の獣医療においても使用される見込みがあります。

4-3、DNAワクチンにおける副作用軽減

DNAワクチンとは、癌細胞の遺伝子の欠片をワクチンとして注射することで、健康な細胞がその遺伝子を取りこみ、癌細胞の蛋白質等を分泌。それに対して免疫応答が起き、抗体が産生され癌細胞そのものを攻撃する、という複雑な作用機序を持つ薬剤です。

抗体は特異的に癌細胞に結合する為、DNAワクチンにおいては一般的な抗がん剤より副作用が少ないことが予想されます。犬の悪性メラノーマに対するDNAワクチン、特定のリンパ腫に対するDNAワクチンなどが知られており、悪性メラノーマに対するDNAワクチンの場合はアメリカでは認可が下りていますが、効果が疑問視されているため日本での認可はまだ下りていません。

ちなみに、特定の犬のリンパ腫に対するDNAワクチンに関しては、現在効果を確かめるための研究が行われています。

まとめ

今回は、犬の抗がん剤で引き起こされやすい副作用や動物病院で行われている対処法を中心に獣医師に解説していただきました。

抗がん剤副作用に対する対症療法は副作用の症状だけでなく、それぞれの犬の状況に合わせて行う必要がありますので、抗がん剤を使用している場合は、一層愛犬の日々の様子を細かく確認。

愛犬の状況や些細な変化などを詳しく説明して、副作用を減らしてあげられるよう獣医師と二人三脚で愛犬をサポートすることが大切です。

犬の悪性腫瘍に関連する記事一覧:https://true-dog-lover.com/malignancy/
愛犬の組織球性肉腫闘病ブログ:https://true-dog-lover.com/pet-dog-blog/cancer-dog/


WRITER Profile

獣医師ライター:  若林 薫

子犬や子猫の治療、健康管理を得意分野とする。動物病院の獣医師と飼い主を繋ぐための専門的で分かりやすい記事を執筆。獣医師免許証保有。


サイト運営者:  望月 紗貴

犬たちの幸せ(=飼い主の意識の向上)を目的とし情報提供サイトを開設。犬の管理栄養士や看護師、介護士資格など保有。他社の記事監修・作成も多数請け負う。

犬の健康管理|腫瘍の早期発見のための健康チェック

目次:
1、見える腫瘍と見えない腫瘍
2、見える腫瘍の確認
3、見えない腫瘍の確認

昔に比べると犬の飼育環境は格段と良くなり、人間と同様に長寿高齢化が進んでいると言われています。その反面、高齢犬では腫瘍性疾患は死因の第一位となり、腫瘍の予防医療の必要性が高まっています。

腫瘍の早期発見は、リンパ浸潤や多臓器転移のリスクを減らすことができ、飼い主さんが日々の観察で気づくことができるケースもあります。悪性腫瘍においては、早期発見できるか否かによって余命が左右されることが多いので、動物病院での定期的な健康診断を受けさせるだけでなく、自宅で愛犬の健康管理を行うことが大切です。

1、見える腫瘍と見えない腫瘍

ここでは、目で確認できる腫瘍と目では確認できない腫瘍を中心にご紹介致します。犬を家族として迎え入れた場合は、愛犬の健康管理を欠かさずに行いましょう。

1-1見える腫瘍と見えない腫瘍

腫瘍は身体のどこにでも発生します。皮膚表面にできる腫瘍や、四肢にできる腫瘍はしこりや肢の痛みのように目で見える症状として現れ、日々の健康チェックで早期発見ができる可能性があります。

一方、肝臓や脾臓などの臓器にできる腫瘍は元気喪失や食欲不振のように、見えない症状を引き起こし発見が遅れてしまうことがあります。転移のしやすさや浸潤(腫瘍が広がること)の速さが異なるため一概に言いきることはできませんが、腫瘍を早期発見できればそれだけ治療の成功率は上がります。

1-2、早期発見を行うためには

腫瘍の早期発見には「愛犬の小さな違和感にどれだけ早く気づけるか」が大切です。症状が分かりにくく見えない腫瘍においては特にこれが当てはまり、日々愛犬の健康管理を行うことによって小さな違和感を発見できる可能性が高まります。

1-3、健康チェックを始める年齢

冒頭で述べたように犬の長寿化によって腫瘍の発生率は上がり、多くは中~高齢で発生します。しかし、若齢だから腫瘍が発生しないわけではありません。

12カ月齢以下の犬でも、軟部組織肉腫、メラノーマ、骨肉腫、血管肉腫等の悪性腫瘍が発生したという報告がありますので、若いうちから健康管理の一環として身体チェックを始めましょう。言葉を話すことができない犬だからこそ、家族として迎え入れる場合は生涯にわたって行う習慣として健康チェックを日々行う必要があります。

ただし、若齢の犬は身体が成長途中ということもあり、健康チェックには注意が必要。無理に四肢を動かそうとしたりするとケガをする可能性もあります。身体を確認する際は、愛犬の体や心に負担がかからないよう気をつけましょう。

2、犬の健康管理|見える腫瘍の確認

ここでは、皮膚と四肢の健康チェックを中心に、腫瘍の早期発見に役立つ健康管理についてご紹介致します。

2-1、皮膚の健康チェック

皮膚のチェックを行う場合、お腹のような毛が少なくて地肌が見えやすい部分だけではなく、背中や顔などの被毛が多い部分もくまなくチェックしましょう。異常はしこりや脱毛、発赤、かゆみなどの症状としてあらわれます。

腫瘍によってはしこりを作らず、一般的な皮膚病によく似た発赤を伴った脱毛のような症状をみせることもあります。全ての皮膚症状を腫瘍だと疑う必要はありませんが、小さな症状を放置せずに早めに動物病院で検査してもらうことをおすすめします。

細菌性・真菌性の皮膚病が原因ならその治療ができますし、万が一腫瘍が発生していたとしても早期発見につながるケースがあるので愛犬の健康管理に有効です。

2-2、四肢の健康チェック

四肢に発生する腫瘍を見つけるためには、痛みのサイン、しこりや関節の腫れを観察します。このとき、左右の肢を比較すると一層異常を見つけやすくなります。

腫瘍は「片側性」といって、比較的片方の肢に発生することが多く(両側性に発生するものもあります)、正常な肢と何かしらの異常がある肢を比較することで腫瘍の発見率は上がります。

2-3、痛みのチェック

犬が四肢に痛みを感じているとき、跛行(はこう)や挙上などの症状が見られます。「跛行」は肢を引きずったり、びっこを引いたりする動作のことを意味するのに対し、「挙上」は肢を地面につけることを嫌がる動作です。

その他、跛行や挙上をみせない痛みのサインもあり、犬が肢に体重がかかるのを嫌がり、頭を上下に振りながら歩くことがあります。

2-4、大型犬と四肢チェック

四肢のチェックはどのような犬種でも行うべきですが、大型犬や超大型犬は四肢に発生しやすい骨肉腫の好発犬種であるため、特に入念に行う必要があります。骨肉腫は重度の痛みを伴い、腫瘍の転移防止だけでなく痛みを取り除くために治療で肢を切断しなければいけないこともあります。

犬はもちろんですが、飼い主さんの負担も大きいのが特徴です。また、骨肉腫は全身の臓器に転移しやすく、外科的処置そのものが難しいこともある悪性度の高い腫瘍ですので早期発見がとても大切です。

2-5、粘膜のチェック

粘膜のチェックでは炎症がないか、色や臭いは正常かを気にするようにしましょう。例えば、口腔ではメラノーマや扁平上皮癌、繊維肉腫などの悪性腫瘍が発生しますが、これらは炎症を引き起こし、歯肉や粘膜の発赤や腫脹などの症状が出ます。

メラノーマでは粘膜の黒色部が拡大する、新しく出来るなどの色の変化がおきます。口臭がひどくなるような症状も頻繁に発生するので、日々健康管理をする上で愛犬の口臭チェックも行いましょう。

3、犬の健康管理|見えない腫瘍の確認

腫瘍においては見えない腫瘍も数多くあるので、愛犬の些細な変化を見逃さないよう、定期的にバイタルサインを確認して動物病院での検査を行いましょう。

3-1、早期発見の難しさ

内臓などに発生する腫瘍は、食欲不振、元気喪失のような小さな体調不良しかみせないことがあるので、早期発見が難しいケースがあります。初期症状が一見して分かるものではないので、些細な変化に気づいてあげることが大切です。

3-2、小さな違和感に気づく

些細な体調不良に気づくためには、「愛犬の健康な状態」を知っておく必要があります。健康チェックでは体温、体重、糞や尿の状態、粘膜の状態などを確認しましょう。日々行うことで正常な範囲が分かってくると思います。

腫瘍や内分泌疾患などの早期発見が難しく、大事に至ることが多い病気は僅かな炎症や代謝の異常を通じてバイタルサイン(脈拍・血圧・呼吸・体温)に変化をもたらします。見落としがちな違和感として犬の状態に現れますので、これらの病気を見つけ出すためには、愛犬の健康状態をしっかりと確認して小さな違和感に気が付くことが大切です。

犬によってバイタルサインやその他の体の正常値に関しては個体差があるので、まずは自宅で計測できるものは定期的に計測して、「愛犬の健康な状態」を知っておくことが大切です。正常値を把握しておくことで異常に早く気が付くことができるので、健康状態の詳しい確認を行ってみてください。チェック方法については、【自宅でできる健康チェック】をご確認ください。

3-3、健康診断を受診する

飼い主さんによる健康チェックは腫瘍の早期発見にとても役立ちます。日々の健康を直接知ることは動物病院の獣医師には難しく、飼い主さんだからこそできることなのです。

しかし、我々獣医師だからできることもあります。獣医学的な技術や専門機器、知識を駆使した健康診断です。健康診断のコースは動物病院によって異なりますが、大抵の場合は採血による血球検査・血液生化学検査、エコーやX線撮影装置を使った画像検査が含まれています。

これらの検査により、見える腫瘍だけではなく見えない腫瘍を見つけ出せる可能性が高まりますので、定期的な健康診断は必ず受けさせ、それに加えて自宅で日々の健康管理を行うことをおすすめします。


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犬の口腔内メラノーマや眼球メラノーマ〔獣医師監修〕

目次:
1、犬の腫瘍「メラノーマ」とは?
2、悪性メラノーマについて
3、口腔内メラノーマと眼球メラノーマ
4、口腔内メラノーマの食事管理や自宅ケア

悪性腫瘍の中でも転移率が高いといわれているメラノーマですが、口腔内に発生した場合は手術での全摘出が困難であったり、食事を与えるのが難しくなったりと様々な障害を伴います。

今回は、犬のメラノーマに関しての検査や治療などの基本情報に加えて、食事方法や自宅ケアについてご紹介致します。なお、メラノーマの治療に関する詳細情報は【犬のメラノーマ|免疫療法や放射線治療など】をご参照ください。

1、犬の腫瘍「メラノーマ」とは?

ここでは、犬のメラノーマに関しての基本的な情報や発生しやすい部位などをご紹介致します。

1-1、メラノサイトにできる腫瘍

メラノーマ(悪性黒色腫)とは、犬のメラニン色素を形成している細胞である「メラノサイト」にできる腫瘍です。メラノサイトは、犬の皮膚や粘膜に存在するメラニン産生細胞で、犬の場合は良性腫瘍のメラノーマと悪性腫瘍のメラノーマがあり、ある程度発生部位によって良性か悪性かを判断することができます。

また、メラノーマに関しては口腔内と目に発生するケースが多く、色素の濃い犬が多く発症しやすいと考えられています。腫瘍の色が黒いのが特徴ですが、メラノーマであっても稀に黒色でないこともあります。

2-2、メラノーマの発生部位

良性メラノーマは、一般的に被毛がある場所(皮膚)に発生。対して悪性メラノーマの場合は、犬の唇や眼球の上下を覆って角膜を保護している皮膚などの粘膜接合部、爪周辺部(爪下)、口腔内などに発生します。

口腔内メラノーマに関しては別途説明しますが、全摘出においては手術が困難になるケースが多いのが特徴です。ただし、必ずしも良性と悪性の発生部位が分かれるわけではありませんので、メラノーマを疑うときは、必ず獣医師の診察を受けるようにしてください。

2、悪性メラノーマについて

ここでは、悪性メラノーマの検査方法や一般的な治療方法についてご紹介致します。治療に関しては、獣医師とよく話し合って決めていきましょう。

2-1、悪性メラノーマの検査方法

悪性メラノーマの検査は、最終的には腫瘍を摘出して組織の病理組織検査によって行われます。組織の病理検査では、犬のメラノーマの悪性度や進行状態、転移や再発にとどまらず、犬が化学療法や何かしらの治療を行った際の効果や予後などの推測ができます。

そのことからメラノーマに関わらず、腫瘍を摘出した後は大抵の場合は病理検査を行います。腫瘍によっては病変部の広がりを確認するために、摘出手術をする前にCT検査やMRI検査などの詳しい検査が必要になることがあります 。

2-2、悪性メラノーマの治療方法

悪性メラノーマでは、通常大きめに腫瘍を切除しますが、犬の口腔内に腫瘍ができてしまった場合は完全に切除しきれないこともあったり、肢の先端部にできてしまった場合は獣医師に断脚手術を勧められることもあります。

術後は抗がん剤治療や放射線治療を行うケースもありますが、転移する可能性が高いがんなので注意が必要です。しかしながら、初期に発見して早期治療ができれば根治を目指した治療が可能な場合もあるので、病気の早期発見のために日ごろから愛犬の口腔内や目、肢先などのチェックも行っておくと良いでしょう。

2-3、悪性メラノーマの転移

悪性メラノーマは局所浸潤性が高く、また犬のがんの中でも転移率が高い腫瘍といわれております。

がんが発生した部位周辺に広がっていき、リンパ節や肺など多臓器に転移しやすいと考えられていますので、犬のがんの中でも悪性度が高いといわれています。その他、老犬の場合は目に発生したメラノーマに関しては比較的大きくなりにくいのが特徴です。

3、口腔内メラノーマと眼球メラノーマ

ここでは、メラノーマの中でも多くみられる口腔内メラノーマと眼球メラノーマについてご紹介致します。

3-1、犬の口腔内に発生するメラノーマ

犬の口腔内に発生する主ながんは3種類あるといわれており、代表的なものがメラノーマ。その他に、扁平上皮癌と線維肉腫があります。

犬の口腔内に腫瘍ができてしまうと、唾液が多くなる、口臭がきつくなる、出血などの症状が生じて、腫瘍が大きくなってしまった場合は食欲不振や(※1)嚥下困難などを中心に様々な症状がみられます。口腔内の腫瘍の場合、残念ながら手術で完全に摘出することができないケースが多いのが特徴です。

(※1)嚥下:口から入った食事を喉の奥へと飲み込んで、さらに食道から胃へと送るという一連の流れ

3-2、犬の眼球に発生するメラノーマ

眼球に発生するメラノーマは、猫では転移率が高いのに対し、犬の場合は転移の確率は僅か2%以下であるといわれています。腫瘍は黒色で、若い犬の場合は短期間で腫瘍が大きくなりますが、比較的年齢を重ねた8才以降の犬の場合はそれほど大きくならないケースが多い腫瘍です 。

なお、犬の眼球に発生するメラノーマの転移確率に関しては、文献(参照データ)によって差が生じることがあります。


4、口腔内メラノーマの緩和ケア方法

メラノーマだけでなく、犬が悪性腫瘍を発症すると緩和ケアが必要になるケースが多くあります。ここでは、口腔内メラノーマを中心に食事方法や自宅ケアについてもご紹介致しますが、がんにおける緩和ケア全般の内容に関しては、【①必要性や方法】【薬や治療法】をご確認ください。

4-1、がん性の疼痛の緩和ケア

口腔内メラノーマを中心に腫瘍を全摘出できないような場合、どうしても愛犬のQOLを維持するために緩和ケアが必要になります。

メラノーマによる痛みの緩和ケアは犬の状況によって異なりますが、一般的には必要に応じて「非ステロイド系の抗炎症薬」が使用され、さらに激しい痛みが生じている可能性がある場合や非ステロイド系の抗炎症薬では痛みの緩和が十分でない場合、口腔内腫瘍によって犬の口からの薬投与が困難な場合は「オピオイド製剤」が使用されることがあります。

また、メラノーマをはじめとした犬の口腔内のがんにおける出血や腫瘍の腫れがある場合、(緩和)放射線治療で症状を軽減することができるケースも多く、メラノーマに関しては多かれ少なかれ腫瘍を小さくする効果も期待できるようです。

がん性の疼痛を中心とする犬の緩和ケアに関しては、犬の状況や痛みの程度(推測)、腫瘍の状況などによって大きく異なるので、緩和ケアにおける治療のリスクなども踏まえた上でしっかりと獣医師と話し合った上で決めていきましょう。


4-2、口腔内にメラノーマができた場合の食事方法

口腔内にメラノーマができてしまった場合は体重減少がみられることが多く、食事の方法に悩む飼い主さんが多くいます。悪性腫瘍によって、ただでさえ食事の消化吸収能力が妨げられますが、それに加えて口に腫瘍がある場合は物理的に犬が食事を摂れない(摂りにくい)状況に追い込まれます。

そのような場合、少量で栄養補給できる高栄養缶などの流動食を喉から流し込む方法が考えられますが、動物病院で栄養チューブの装着を早期段階で勧められることもあります。

また、数年前にアメリカで犬用食欲増進剤(エンタイス)が販売され、日本国内の動物病院でも取り扱っているところもあるようですので、物理的に食事が摂れる犬の場合は副作用を含め獣医師に食欲増進剤に関して相談してみると良いでしょう。

4-3、口腔内メラノーマの自宅ケア

薬の投与を中心とした緩和ケアは動物病院でお願いできますが、口腔内にメラノーマがある場合は自宅でのケアがとても大切になります。犬の状況によってケア方法は異なりますが、口の中が汚れしまっていたり乾燥していたりすると粘膜感染を進行させやすくなります。

そのため、ガーゼに水を含ませて犬の口の中が潤うよう定期的なケアを行うことが大切です。また、食後も口の中を清潔に保つために水を与えるなど、愛犬の口腔内ケアをしっかりと行いましょう。

口腔内ケアに関しては、腫瘍ができている部位や状況によってケア方法が異なることがあるので、愛犬に合った適切なケア方法を必ず獣医師に確認してから行ってください。


参考文献
・小動物腫瘍科専門誌 Veterinary Oncology No.22,インターズー,2019.
・動物臨床医学研究所 山根義久,イヌ+ネコ家庭動物の医学大百科,パイインタ-ナショナル,2012.
・田中茂男,犬の医学,時事通信社,2011.
・矢沢サイエンスオフィス,もっともくわしいイヌの病気百科,2007.


WRITER Profile

記事作成者:  望月 紗貴

犬たちの幸せ(=飼い主の意識の向上)を目的とし情報提供サイトを開設。老犬介護士、ペット看護師、犬の管理栄養士を中心に多数ペット資格を保有。他社の記事監修・作成も数多く請け負う。


記事監修者:  (獣医師)西原 克明

動物病院の院長を務めながら、様々なペット関連業界で活躍。腫瘍外科や椎間板ヘルニアを中心に「特殊外科」の執刀を得意とし、腸内細菌や口腔内細菌の研究を行い予防医療にも注力している。


犬のメラノーマ|免疫療法や放射線治療など〔獣医師解説〕

目次:
1、犬のメラノーマとは?
2、メラノーマの免疫療法
3、メラノーマの治療方法
4、メラノーマの外科治療と放射線治療

犬の悪性腫瘍の一つであるメラノーマは、口腔内に多く発生する腫瘍で悪性度が高いのが特徴です。今回は、犬の口腔内メラノーマを中心に、外科治療や放射線治療、免疫療法について獣医師に解説していただきました。

1、犬のメラノーマとは?

犬のメラノーマは、ホクロや肌の色素を産生するメラニン分泌細胞が癌化した腫瘍です。一般的に黒色の腫瘍ですが、無顆粒性メラノサイトという色素顆粒を持たない腫瘍もあります。メラノーマは発生する箇所によって腫瘍としての性質が異なり、口腔内メラノーマが犬の口腔内腫瘍で最も多く発生する悪性腫瘍です。

約80%の口腔内メラノーマは肺やリンパ節へ転移すると報告されており、非常に悪性度の高い腫瘍です。犬の場合はゴールデン・レトリバー、ラブラドール・レトリバー、ミニチュア・ダックスフンドなどが好発犬種で、無治療の場合の予後は2カ月程度。治療を行った場合の予後は7~8カ月と報告されています。

犬の皮膚メラノーマは良性(皮膚黒色腫)と悪性のものがあり、境界明瞭でドーム状の黒色のしこりが発生するものの多くは良性であると報告されています。他の報告でも犬の皮膚に発生したメラノーマの約85%は良性であると述べられています。

しかし、爪の間の皮膚や目以外の粘膜と皮膚の境界部に発生するものは、非常に悪性度が高いとされています。皮膚メラノーマはスタンダート・シュナウザー、ミニチュア・シュナウザー、スコティッシュ・テリア、黒色の犬が好発犬種とされます。

2、メラノーマの免疫療法

犬におけるメラノーマの免疫療法に関しては、国内では未だ研究段階のものがほとんどです。ここでは、現状の免疫療法における研究を中心にご紹介いたします。

2-1、免疫チェックポイント(PD-1)を利用した治療方法

犬のメラノーマの新しい治療方法として免疫機構に関係するものがあります。これらの治療方法は未だ研究が十分ではないため、まだ一般的には使用されてはいません。しかしながら、免疫療法は犬の全身に転移したメラノーマに対する今後の治療方法の一つとして期待されています。

2-2、免疫療法の研究について

人のメラノーマに対する治療薬として、「ニボルマブ」という抗がん剤があります。これはPD-1と呼ばれる腫瘍に対する免疫応答を抑える生理物質を阻害する薬剤です(ニボルマブはPD-1に対する人の抗体でできている)。

犬においてニボルマブは効果がないと報告されていますが、PD-1に対する犬の抗体を使用した最近の研究では、犬の悪性メラノーマに対してイヌ型抗PD-1抗体は効果があると述べられています。この研究においてイヌ型抗PD-1抗体は顕著な効果があるわけではありませんが、ベースとして期待されています。

2-3、メラノーマワクチンを利用した治療方法

アメリカでは、メラノーマに対するワクチンが2009年に国の認可を取って使用されています。DNAワクチンと呼ばれるこの薬剤は従来のワクチンとは作用機序が異なります。従来のワクチンでは抗原と呼ばれる病源体の一部(又は弱毒化した病原体)を体に取り込むことで免疫細胞に抗体を産生させ、感染を防ぎます。

DNAワクチンでは病源体の遺伝子情報を取り込むことで犬の正常な細胞が抗原を産生します。その抗原に対して免疫細胞が抗体を産生し、抗体が犬の体内に存在するメラノーマを攻撃します。海外におけるいくつかのメラノーマワクチンの研究では、予後は500日前後とされており、日本でのメラノーマに対する治療の予後を超える結果となっています。

しかし、一方で犬のメラノーマワクチンの効果を疑問視する研究もあります。日本では最近までメラノーマワクチンに対する治験が行われていましたが、未だ国の認可が下りていないのが現状です。


3、メラノーマの治療方法

犬のメラノーマのうち、悪性度が高い口腔内メラノーマについて説明致します。口腔内メラノーマの無治療での予後は2カ月程度だと報告されていますが、治療をした場合の予後は7~8カ月程度まで延びるといわれています。

後者の治療を犬が行った場合の予後に関しての研究では、外科的に腫瘍を切除する、放射線治療のみ行う、外科治療と放射線治療を併せて行うという3つの治療方法について調べられていますが、犬において外科治療、放射線治療、外科治療+放射線治療の3つの予後の間には統計学的な差はみられず、同程度の予後であると報告されています。

このことから、犬のメラノーマの治療方法として外科治療と放射線治療は有効であると考えられます。また、悪性腫瘍に対する積極的な治療方法には、外科治療と放射線治療以外に抗がん剤治療があり、抗がん剤についてはメラノーマに対する確かな治療方法が現段階では確立されていません。

中でも犬の口腔内メラノーマは転移するスピードが速い為、発見されたときには肺をはじめとする様々な臓器に転移している場合が多いのが特徴です。全身転移を伴うケースでは外科治療と放射線治療は十分な効力を発揮できません。

一方、抗がん剤は転移した腫瘍に対しても効果があります。犬の悪性メラノーマの抗がん剤治療が確立されていないことは、治療の障壁となっていると言えるでしょう。今後は免疫療法においても、転移してしまったメラノーマを減衰させる有効な手立てになるかもしれません。


4、メラノーマに対する外科治療と放射線治療

ここでは、犬のメラノーマの治療法のうち、外科療法と放射線療法について詳しくご紹介致します。

4-1、メラノーマに対する外科治療

犬の悪性腫瘍に対する外科治療では、マージンと呼ばれる腫瘍の周囲の組織を切除することが重要になります。腫瘍は肉眼的に見える部位の他に、木の根のように周囲に浸潤しています。

これらの浸潤があると予測される範囲をマージンと呼び、犬の口腔内メラノーマにおけるマージンは2㎝。しかしながら、狭い口腔内で2㎝のマージンをとることは顎の骨を切除しなければいけない可能性が高いということです。

実際、犬の口腔内メラノーマの外科治療では顎の骨を切除する症例が多く報告されています。顎の骨を切除した場合、犬が自力でごはんを食べられるのか心配になりますが、顎骨切除を行った症例に対する報告によると、大抵は術後7日程度から犬が自力でごはんを食べられるようになったと述べられています。他の報告でも同様の内容が記述されています。

4-2、メラノーマに対する放射線療法

口腔内メラノーマが鼻腔内などに浸潤してしまった場合、外科的な切除を行うと犬の生活に支障をきたしてしまうことがあります。放射線治療はそのような切除が難しい部位に対しての治療方法として用いられますが、放射線治療のデメリットとして、治療を行える病院が大学病院のような二次診療を行う病院に限られること、治療の費用が高額になることなどが挙げられます。そのため、病院や治療費についてよく検討して治療法を判断する必要があります。


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獣医師ライター:  若林 薫
子犬や子猫の治療、健康管理を得意分野とする。動物病院の獣医師と飼い主を繋ぐための専門的で分かりやすい記事を執筆。獣医師免許証保有。

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犬たちの幸せ(=飼い主の意識の向上)を目的とし情報提供サイトを開設。犬の看護師や介護士、管理栄養士資格など保有。他社の記事監修・作成も多数請け負う。

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犬のリンパ腫|抗がん剤の種類や効果など〔獣医師解説〕

目次:
1、犬のリンパ腫とは?
2、リンパ腫の分類について
3、抗がん剤療法と多剤併用療法の治療プロトコール
4、抗がん剤の副作用

犬の腫瘍の中で比較的発生しやすいといわれているリンパ腫ですが、今回は犬のリンパ腫の種類や効果を示すと考えられている抗がん剤の概要を中心に、獣医師に詳しく解説していただきました。

1、犬のリンパ腫とは?

犬のリンパ腫は白血球の悪性腫瘍です。同じ白血球の悪性腫瘍として白血病などがありますが、リンパ腫は脾臓や肝臓、リンパ節などから腫瘍細胞が発生するのに対して、白血病は骨髄や脾臓などから腫瘍細胞が発生します。

リンパ腫は犬の腫瘍の中で3番目に発生率が高く、無治療での余命が2カ月前後、治療をしての余命が長くて1~2年と報告されています。約80%の犬は抗がん剤に反応し、腫瘍が確認できなくなる状態(寛解)になりますが、犬のリンパ腫は寛解と再発を繰り返す特徴があります。好発犬種があり、ゴールデンレトリバーで最も発生が多いと報告されています。

2、リンパ腫の分類について

リンパ腫は非常に多くの分類分けがなされるのが特徴ですが、ここでは、発生する場所による分類を中心に解説致します。

2-1、犬のリンパ腫の分類

犬のリンパ腫には、発生する場所による分類と癌細胞の特徴による分類などがあります。前者は多中心型、消化器型、皮膚型、縦隔型(胸腺型)、節外型に分類されます。

後者はB細胞型、T細胞型などの細胞的特徴で腫瘍を分類するものですが、リンパ腫が持つ細かく数多い種類をいくつかの型に分けて分類したものになります。ここでは発生する場所による分類について説明していきます。

2-2、多中心型リンパ腫

多中心型リンパ種は犬のリンパ腫の中で最も一般的なものであり、リンパ腫の約80%がこれに含まれます。全身のリンパ節から複数の腫瘍が発生し、肝臓や脾臓、骨髄に癌細胞がみられる場合もあります。

多中心型リンパ腫が発生する犬を100%とした場合、非特異的な症状(リンパ腫に特徴的にみられるとは限らない症状)が発生する犬が20~40%。それに対して、多中心型リンパ腫が発生する犬で無症状なものが残りの60~80%です。

2-3、消化器型リンパ腫

犬のリンパ腫のうち約7%が消化器型リンパ腫にあたります。消化器型リンパ腫は胃や腸などの消化器に存在するリンパ節から腫瘍が発生します。犬に嘔吐や下痢、血便・黒色便や便が出にくい(しぶり)などの症状が見られることがあります。

消化器症状と腫瘍の組織への侵入により栄養や水分の吸収が阻害されることで、削痩(著しく痩せた状態)や脱水が生じる犬がいます。

2-4、皮膚型リンパ腫

犬のリンパ種のうち約6%が皮膚型リンパ種にあたります。皮膚型リンパ腫では皮膚のしこり、潰瘍(穴)などが発生します。皮膚型リンパ腫は症状が進むと、犬の皮膚や四肢などの複数のリンパ節が腫れたように大きくなります。

2-5、縦隔型(胸腺型)リンパ腫

犬のリンパ種のうち約3%が縦隔型リンパ種にあたります。左右の肺に挟まれた心臓を包みこむ膜を縦隔といいます。縦隔型リンパ種では縦隔にあるリンパ節に腫瘍が発生します。縦隔内の腫瘍が大きくなることで犬の肺が圧迫され、圧迫された臓器から水分(胸水)が染み出します。

これが肺を収める肋骨に囲まれた空間(胸腔)に貯蓄されることで、呼吸を阻害します。咳や開口呼吸のような症状がみられる犬もいます。

2-6、節外型リンパ腫

リンパ腫が目・口腔・鼻腔、骨や心臓などのリンパ節ではないところから発生するものを節外型リンパ腫といいます。節外型リンパ腫に関しては、発生部位により犬に引き起こされる症状が異なります。


3、抗がん剤療法と多剤併用療法の治療プロトコール

ここでは、犬のリンパ腫における主な治療法である抗がん剤プロトコール(治療計画)について詳しくご紹介致します。

3-1、リンパ腫における抗がん剤療法

犬のリンパ腫は多中心型リンパ腫のように複数の臓器に発生するものがあり、また発見されたときには全身に転移しているケースが多いのが特徴です。そのため多くの犬の場合、外科的な治療方法を選択することが難しい腫瘍です。

猫における鼻腔内リンパ腫のように放射線療法を積極的に行うものもありますが、犬では放射線療法はQOL向上のために腫瘍をできるだけ小さくする目的で使用されます。犬のリンパ腫は以上の理由により、抗ガン剤療法が主な治療法なります。

リンパ腫の抗がん剤療法は単剤で行う場合もありますが、一般的には多剤併用療法を行います。これはリンパ腫が抗がん剤に耐性を持つことを防ぐ目的があり、また複数の薬の相乗効果で犬の体にできた腫瘍を攻撃する目的や、複数の薬を併用して使うことで個々の薬の量を減らして薬の副作用を減らすという目的もあります。多剤併用療法にはCHOP、COP、AC、UWなど多数のプロトコールがあります。

3-2、CHOPプロトコール

CHOPプロトコールは、多くのプロトコールのモデルとなったプロトコールになります。シクロフォスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスティン、プレドニゾロンの4種類の薬剤を使用します。このプロトコールを使用した場合、余命は12カ月程度と報告されています。

3-3、COPプロトコール

COPプロトコールは、副作用が強くでてしまう犬に対して使用されます。シクロフォスファミド、ビンクリスティン、プレドニゾロンの3種類の薬剤を使用します。副作用が少ない反面、他のプロトコールに比べると効果が弱くなる傾向にあります。2カ月の間、週に一度の治療を行い、その後は2週間に一度を目安に維持療法を行う必要があります。


3-4、ACプロトコール

ACプロトコールは、通院回数を抑えるためのプロトコールです。3週間に一回の強めの抗ガン剤(ドキソルビシン)の注射と、家庭での経口薬(シクロフォスファミド)の投与を組み合わせたものです。通院回数は減りますが、後述するUWプロトコールと比較すると効果が弱いのが特徴です。

3-5、UW(ウィスコンシン大学プロトコール)

UWプロトコールは、犬のリンパ腫における抗がん剤治療で最も一般的とされているプロトコールで、CHOPプロトコールで使う薬剤にL-アスパラギナーゼを追加した5種類の薬剤を使用します。2カ月の間、週に一度の治療を行い、その後は4カ月の間、2週間に一度治療を行います。このプロトコールを使用した場合、犬によって異なるものの余命は14カ月程度と報告されています。

3-6、抗がん剤療法の費用について

犬の抗がん剤療法の費用については、30kg前後(ゴールデン・レトリバーの平均体重)の大型犬でUWプロトコールを行った場合、6カ月間で35万円前後であるといわれています。COP、ACなどのプロトコールは比較的安価ではありますが、維持療法や再治療の必要を考慮するとUWプロトコールの費用と同程度とされています。

動物病院における治療費は国で一律に定められているものではありませんので、同じ薬剤を使用した動物用医薬品でも特性の異なるものがあり、薬価もそれぞれ異なります。動物病院で働く獣医師は日々の経験や最新の知見を駆使して、様々な特性を持つ薬の中から治療効果が高いと思われる薬を購入して使用しています。

犬や猫などの動物治療費を変動させる要因として薬価以外にも人件費などがあり、それらは全ての治療行為に必要な費用です。そのため、動物病院の治療費を個々の病院で比較することはできませんので、本記事で記述している治療費はあくまで一例としてご紹介しております。

4、抗がん剤の副作用

犬のリンパ腫の治療に使用される薬剤はシクロフォスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスティン、プレドニゾロン、L-アスパラギナーゼなどがあります。シクロフォスファミドには骨髄抑制、ドキソルビシンには心毒性、ビンクリスティンには骨髄抑制、神経毒性、L-アスパラギナーゼには肝障害、などの副作用がみられます。

また、プレドニゾロンには過剰投与による犬の医原性クッシング症候群、免疫抑制などの副作用がみられます。癌細胞はもともと体の中にある細胞ですので、抗がん剤は癌細胞にだけ毒性を持つわけではなく、他の正常な細胞にも影響します。抗がん剤に関しては「毒を持って毒を制す」と言われるのはこのためです。

治療においては、犬のリンパ腫の進行状況や転移状況、副作用リスクなど様々な視点から抗がん剤について獣医師としっかりと話し合い、検討することが大切です。


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がんの犬のおすすめ食材(2)〔管理栄養士解説〕

目次:
1、がんの犬に効果的?ファイトケミカル食材
2、ファイトケミカル、スルフォラファン
3、ファイトケミカル、リコピン
4、ファイトケミカル、セサミン
5、ファイトケミカル、アントシアニン
6、食材を使用するときの注意点

前回は、【がんの犬のおすすめ食材(1)】で「動物性タンパク質源となる食材」と「腸内環境の健康維持に役立つ食材」の2つをご紹介致しましたが、今回は「ファイトケミカル」についてご紹介致します。なお、基本的な内容は【がんの犬のための手作りご飯基礎知識】をご参照ください。

1、がんの犬に効果的?ファイトケミカル食材

人間の健康食材として有名なファイトケミカルですが、犬の健康にとっても有効に働く食材が多いといわれています。ファイトケミカルとは、強い免疫力向上を特徴とする植物性の栄養素で「第七の栄養素」とも呼ばれています。

野菜や果物を中心とした食材に多く含まれており、それら食材の香りや色素、辛味成分などが犬の健康維持に有効に働きます。お茶やぶどうをはじめとし一部犬に与えてはいけない食材もありますが、野菜や果物であれば大抵の場合は犬の健康(病気や発がん物質から体を守る)にも効果的です。

ファイトケミカル食材は抗酸化活性や抗炎症効果が期待でき、犬のがんについて考える上では体内の発がん物質を体から排除するための酵素を活性化するためにも効果的です。ここでは、がん予防のために手作りご飯を作っている方におすすめのファイトケミカル食材の一例をご紹介致します。


2、ファイトケミカル、ブロッコリースプラウト(スルフォラファン)

・10kgの犬の場合の目安量/1日15g程度

ブロッコリースプラウトに含まれる「スルフォラファン」と呼ばれる栄養素に抗がん作用があるといわれており、ブロッコリーなど他のアブラナ科の野菜にもこの栄養素が含まれています。ブランドによって差は生じるものの、全般的にブロッコリースプラウトのスルフォラファン含有量は他のアブラナ科の食材と比較すると非常に高いのが特徴です。

スルフォラファンの抗酸化作用や解毒作用に関しては説明を省きますが、がんにおいては特に慢性的に体で生じる炎症を制御してがんを予防したり、がん細胞の死滅や収縮(アポトーシス)を誘導する効果があることから、愛犬の場合はがんの転移防止の目的で手作りご飯に定期的に取り入れていました。

スルフォラファンの効果は一般的に人の場合は3日間程度持続。犬に関しては不明確ではありますが3日に一度は必ず使用していた食材です。その他、基礎的なことですがアブラナ科の食材は甲状腺機能に疾患がある犬の場合は与えないようにしましょう。

3、ファイトケミカル、とまと(リコピン)

・10kgの犬の場合の目安量/1日20g程度

とまとに多く含まれる「リコピン」は、強い抗酸化作用が期待できることから犬の健康維持にも有効な食材です。リコピンには様々な効果が期待できますが、中でも犬の体に不必要な活性酸素除去に役立つ抗酸化力に関してはビタミンEの100倍程度(またはそれ以上)です。


人の場合は様々な体の部位発症におけるがん細胞の成長を制御すると考えられており、とまとにはリコピン以外にもがん予防が期待できる不飽和脂肪酸(α-リノレン酸)も含まれています。リコピンは加熱してもそこまで栄養価が損なわれず体への吸収率が倍以上になるため、私の場合は少し加熱して冷ましてから愛犬の手作りご飯に使用していました。

青い未熟なものにはトマチンと呼ばれる犬にとっての有毒成分が多く含まれているので、しっかりと赤く熟したものを選んで与えるようにしましょう。その他、とまとには体に蓄積しやすい「脂溶性ビタミン」が含まれているので、他の食材との組み合わせに注意が必要です。インターネット上の犬の手作りご飯レシピを見ていると、にんじんを多く使用する方がいますが、β−カロテン当量が8600μg/100g(とまとはβ−カロテン当量540μg/100g)となっており、手作りご飯においては犬のビタミンA過剰症が多く発生していることが問題視されています。

愛犬の手作りご飯をつくる場合は、犬の体に蓄積しやすい脂溶性ビタミン食材を中心に特定の栄養素が過剰(または不足)にならないよう、しっかりとり栄養配分を考慮しながらつくりましょう。

4、ファイトケミカル、ごま(セサミン)

・10kgの犬の場合の目安量/1日小さじ1杯程度

ごまに含まれる「セサミン」はポリフェノールの一種で、抗酸化作用がとても強い成分です。犬の体に不要な過酸化脂質や活性酸素除去効果が期待できることから、がん予防や制御に効果的です。特に黒ごまに関しては、ブルーベリーに含まれるアントシアニンも多く含んでおり、活性酸素の働きを抑えるために役立ちます。

なお、ごまに関しても犬が消化吸収しやすいよう、摩り下ろしてから与えることをおすすめします。その他、ごまには脂肪酸が含まれるため酸化しやすいのが特徴。酸化した食事は犬の健康被害の原因になるので、手作りご飯で与える場合は食事の直前に摩り下ろしてご飯にトッピングすることをおすすめします。


5、ファイトケミカル、しそ(アントシアニン)

・10kgの犬の場合の目安量/1日3g程度

青じそには免疫力向上に役立つビタミンC、活性酸素制御に役立つβカロテン、ペリラアルデハイドなどの殺菌成分が含まれており、赤しそには黒ゴマ同様に「アントシアニン」も含まれていることから、犬のがんの予防や進行制御を目的として手作りご飯で取り入れたい食材の1つです。

また、しそに含まれる香り成分によって犬のストレス緩和にも効果が期待できるといわれていますが、嗅覚の優れた犬にとっては香りが強すぎるので手作りご飯で使用する際は少量にとどめましょう。しそ科の植物に関しては、人の場合はがんの増殖防止や抗がん剤が効きにくくなった細胞に対しての効果などが幅広く研究されています。

6 、食材を使用するときの注意点

全編の【がんの犬のおすすめ食材(1)】でもご紹介させていただきましたが、犬は野菜や穀物などの消化を得意としないため、野菜などの食材はフードプロセッサーなどで細かくして消化吸収しやすい形状にして与えましょう。また、アレルギーなどの観点から、はじめて犬の手作りご飯で使用する食材は少量から試すことをお勧めします。

ファイトケミカルを中心に、どんなにがんの予防や制御に有効とされる食材であっても与えすぎは禁物。犬の手作りご飯を作るときは栄養素の異なる様々な食材をバランスよく取り入れることが大切ですので、欠乏症や過剰症に細心の注意を払いながらバランスを考えて作ってあげましょう。

その他、犬のがんの発症部位や体の状況により食事管理ポイントが異なる場合があります。がんを発症している(治療中)の犬の場合は、獣医師に食事管理で気をつけたいことに関して予め相談しておくと良いでしょう。


【犬の手作りご飯|量や配分など】

※本記事の栄養成分値は文部科学省「食品成分データベース」を参考に算出。生の状態での食材成分値を記載しております


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がんの犬のおすすめ食材(1)〔管理栄養士解説〕

目次:
1、動物性タンパク質源となる食材
2、腸内環境の健康維持に役立つ食材
3、食材を使用するときの注意点

犬のがんの食事の関係性や食事管理のポイントに関しては、【がんの犬のための手作りご飯や食事〔獣医師監修〕】でご紹介致しましたが、ここでは「動物性タンパク質源となる食材」と「腸内環境の健康維持に役立つ食材」の2つをご紹介させていただきます。がんを発症している犬に限りませんが、犬の手作りご飯では食材の栄養素の配分に気をつけて、豊富な食材を利用。愛情と栄養たっぷりの手作りご飯をつくってあげましょう。

【犬の手作りご飯|量や配分など】

1、動物性タンパク質源となる食材

がんの犬の場合は炭水化物(糖質)を極力制限して、代わりに体のエネルギー源となる良質な動物性タンパク質を豊富に使用することで免疫力を維持(強化)します。ここでは、がんの犬の手作りご飯におすすめの動物性タンパク質源の一例をご紹介致します。

1-1、鹿肉(タンパク質値目安:23.9g/100g)

鹿肉は栄養価が高い上、他の動物肉と比較すると低カロリー・低脂肪。野生で育つ草食動物なので、栄養価が高いのも魅力の1つです。含まれている栄養素としては、タンパク質、ビタミンB群、ミネラルなどに加えて、肉では珍しいDHA(ドコサヘキサエン酸)も含まれています。

体内の活性酸素の除去が期待でき、体を温める食材なので冷えによる免疫力低下予防にも効果的。犬の手作りご飯では積極的に取り入れたい動物性タンパク質ですが、がん細胞と闘う犬や抗がん剤による副作用で免疫力が低下しやすい犬には尚おすすめです。

1-2、ラム肉(タンパク質値目安:20.0g/100g)

ラム肉などの羊肉は、肉の中で一番体を温める効果が高い食材です。体の冷えからくる免疫力低下を防止するために有効。含まれる栄養素としては、タンパク質、ビタミンA・B群・カルニチンや鉄分などです。ラム肉に含まれている必須アミノ酸はバランスが非常に良いのが特徴。

低カロリー・低コレステロールで脂肪燃焼促進効果が期待できることから、がんで免疫力を高めたい犬だけでなく、ダイエット中の犬にもおすすめです。ただし、抗がん剤など何かしらの理由で食欲低下が引き起こされている場合(エネルギー源が不足している場合)は、手作りご飯ではカロリーが高い肉を使用することをおすすめします。

1-3、鮭(タンパク質値目安:20.1g/100g)

鮭の特徴は、アスタキサンチンと呼ばれる抗酸化力の高い成分が含まれていることで、体内の活性酸素の発生を制御する成分です。抗酸化作用のある栄養素としてビタミンCが有名ですが、アスタキサンチンに関しては約6000倍の抗酸化力が期待できるといわれています。

がんによって放射線治療を行っている犬の場合は、特に活性酸素が生じやすくなるという報告があるので、手作りご飯では取り入れたい食材です。ただし、鮭にはチアミナーゼと呼ばれるビタミンB1を分解する酵素が含まれているので、継続的に多く与えてしまうと「ビタミンB1欠乏症」のリスクが高まります。

犬の手作りご飯では、常用せずに数日に一度与えるなど頻度を工夫すると良いでしょう。その他、人が食べるために塩分を加えた鮭は使用せず、刺身用の味付けされていないサーモンなどを使用しましょう。

1-4、動物性タンパク質源となる食材|使用例

参考までに、愛犬バーニーズマウンテンドッグの場合、基本的には動物性タンパク質は以下のようなローテーションを組んでいました(週によって多少変動あり)。鹿肉をベースとし、夏は体を冷やす効果が期待できる馬肉を使用するなど、季節によって食材を使い分けるのも犬の健康維持には効果的です。

月 ・朝 鹿生肉(ロース) ・晩 加熱サーモン&卵
火 ・朝 鹿生肉(モモ)  ・晩 ラム加熱肉
水 ・朝 鹿生肉(ロース) ・晩 加熱鶏むね肉
木 ・朝 鹿生肉(モモ)  ・晩 加熱サーモン&卵
金 ・朝 鹿生肉(ロース) ・晩 加熱豚肉
土 ・朝 鹿生肉(モモ)  ・晩 ラム加熱肉
日 ・朝 鹿生肉(ロース) ・晩 その他の肉&魚

2、腸内環境の健康維持に役立つ食材

犬によって個体差がありますが、体全体の60%~70%程度の免疫細胞が腸(腸管)に集中しているといわれていますので、腸の健康維持は免疫力を維持(強化)するために大切です。ここではがんの犬の手作りご飯におすすめの腸内環境の健康維持に役立つ食材の一例をご紹介致します。

2-1、ヨーグルト(タンパク質値目安:3.6g/100g)

腸の健康維持を目的として人でも食べている方が多いヨーグルトですが、犬の場合も乳酸菌によって整腸効果が期待できます。腸内にあるビフィズス菌を活性化することで悪玉菌を制御。腸内の免疫細胞を活性化する効果が期待できるので、免疫力が低下しやすいがんの犬や便の状態が安定しない(下痢や便秘)犬には特におすすめです。

ただし、与えすぎは腸内環境の健康を害すので量には気をつけましょう。参考までに愛犬バーニーズマウンテンドッグ(42kg)の場合は、手作りご飯1食で(無糖ヨーグルト)大さじ3杯程度を週に数回与えていました。おやつとして与えるのも良いでしょう。

2-2、ゴボウ(タンパク質値目安:1.8g/100g)

ゴボウは水溶性食物繊維と不溶性食物繊維が豊富で、腸内細菌の環境改善(ビフィズス菌の成長を促す)に有効なイヌリン(不溶性食物繊維)と呼ばれる成分が含まれています。イヌリンは腸内の胆汁酸を吸着して体外に排出。腸の蠕動運動を活発にさせたり犬の体に不要な物質を排泄させるために効果を示します。

その他ごぼうに含まれる酵素であるペルオキシダーゼが活性酸素除去(無毒化)に効果的なため、がんを発症している犬の手作りご飯には適度に取り入れたい食材です。ごぼうは消化しにくいため、必ず加熱後にすりおろし器やフードプロセッサーなどで細かくしてから与えましょう。参考までに愛犬バーニーズマウンテンドッグ(42kg)の場合は、手作りご飯1食で70gを週に3回程度与えていました。

2-3、挽きわり納豆(タンパク質値目安:16.6g/100g)

犬の腸内環境の健康維持に効果的な食材の1つである納豆には、悪玉菌の増殖を制御するために役立つ納豆菌が多く含まれており優れた整腸作用が期待できます。納豆菌は、腸内の腐敗菌の増加制御の他、腸内で善玉菌として働くことで腸内に存在する善玉菌の増殖を更に促す効果が期待できます。

ただし、我が家の愛犬のように胃拡張・胃捻転症候群になりやすい犬には注意が必要。一度に粘り気のある食材をたくさん与えてしまうのは危険ですので、大型犬は特に一度に与える量を少量にとどめましょう。胃拡張・胃捻転症候群リスクもさることながら、炭水化物も含まれている(10.5g/100g)ので、愛犬の場合は1食で50gを週に2回程度を目安に与えていました。

2-4、腸内環境の健康維持に役立つ食材|使用例

愛犬の場合はがん発症以前(子犬期)から下痢を引き起こしやすい体質であり、腸内環境の健康維持には特に注意していました。ドッグフードを変えても改善しなかった長年にわたる定期的な下痢症状でしたが、手作りご飯に変更することで改善。便の状態が4才前にようやく安定しました。以下に愛犬の腸内環境の健康維持のために使用していた食材の一例をご紹介致します。

・ヨーグルト ・ゴボウ ・挽きわり納豆 ・キャベツ ・オクラ ・長いも 
・オリーブオイル ・昆布(出汁) ・消化吸収しやすい鹿生肉や魚類 など

3、食材を使用するときの注意点

犬は野菜や穀物などの消化を得意としないため、肉や魚以外は消化しやすいよう細かくして与えましょう。また、生肉に慣れていない犬の場合、徐々に生食に慣らしていかないと下痢や嘔吐などの消化器系症状を引き起こす原因になります。

その他、どんなに優秀な食材であっても与えすぎは禁物。犬の手作りご飯を作るときは栄養素の異なる多様な食材をバランスよく与えることが大切です。それぞれの栄養素の欠乏症や過剰症に気をつけて、量や配分をしっかりと考えて手作りご飯を作ってあげましょう。

愛犬の手作りご飯を初めて作る方は、【犬の手作りご飯|量や配分など】もご確認ください。なお、犬のがんの進行状況や発症部位などによって適した栄養素が異なる場合があります。がんを発症している(治療中)場合は、必ず獣医師に食事管理について相談しましょう。

※本記事の栄養成分値は文部科学省「食品成分データベース」を参考に算出。生の状態での食材成分値となっております


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がんの犬のための手作りご飯や食事〔獣医師監修〕

目次: 
1、がんと食事
2、がんの犬を支える食事管理
3、がんの犬を支える食事管理の注意点
4、食欲がない犬のための薬

愛犬のがん告知はあまりに精神的打撃が強く、どうしても飼い主は精神的に不安定になってしまいます。私も愛犬が若くしてがんを発症したことから約3年の間、毎日のようにこの言葉と向き合ってきました。一度目の発症が血管肉腫というがんで、愛犬のバーニーズマウンテンドッグはまだ僅か3才半。

それを機に、愛犬のがんが転移しないよう自分に何ができるのか考えた結果が、QOLの向上に努めるためサポートすること。その中で、手作りご飯で食事管理をすることには特に重点をおきました。今回は、愛犬のがんから学んだ食事管理について簡単にご紹介致します。

【愛犬のがん闘病生活ブログ】

1、がんと食事

1-1、愛犬のがんと手作りご飯

犬のがんが食事で治るかといったら、残念ながらそんなことはありません。
愛犬の場合、一度目の血管肉腫は抗がん剤を使用せず、最終的には完治という嬉しい結果でした。しかし、悪性腫瘍の摘出手術で完全に悪いものを取り除いた上での食事管理でした。

2度目の組織球性肉腫に関しては、やはり抗がん剤は利用せずに1年9ヶ月転移せずに済みましたが、この時も肺の腫瘍を(余裕をもって)大きめに摘出するために手術を行った上での食事管理。定期的な健康診断を行って早期発見・早期治療を行ったことが功を奏したのでしょう。

そして、2回目のがん摘出手術後1年9ヶ月経過し、残念ながら再び組織球性肉腫が全身に、今度は一気に発生してしまいました。しかしながら、悪性度の非常に高い組織球性肉腫が術後、抗がん剤を使用せずにここまで転移・再発しなかったこと。

若くして発症した血管肉腫が抗がん剤を使用せずに転移しなかったことは、もしかすると手作りご飯で食事管理を徹底していたことが理由の1つだったのかもしれません。

1-2、食事管理の大切さ

食というものは、手術や抗がん剤治療、放射線治療などの西洋医学ほどの力は持っていません。しかし、犬の口から直接体内に入り込み体をつくる重要な要素・エネルギー源となるため、愛犬の健康維持を考える上で食事管理は必ず配慮しなければいけないものです。

犬のがんの場合、残念ながら現状では抗腫瘍効果をもつドッグフードは販売されていません。しかしながら、食事はがんに直接的に働きかけることはできなくとも、間接的にがんが進行しにくい・がんが再発しにくい体づくりをすることは可能です。

悪性腫瘍の原因は大きく「内因」と「外因」に分けられますが、このがんの原因となる外因のうちの1つとして食べものや食事に含まれる添加物が挙げられます。こういった背景から、犬のがんと食事の関係性を完全に否定することはできないのです。

2、がんの犬を支える食事管理

2-1、炭水化物の制限がされた食事

がんの進行制御に関する確実な効果が証明されているわけではありませんが、一般的にがんを発症している犬には低炭水化物の食事が推奨されています。炭水化物とは、糖質と食物繊維の総称を意味しますが、糖質が多い食べものはがんの進行を応援してしまう(がん細胞の栄養的役割を補う)可能性がある考えられています。

そのため、極力犬の手作りご飯やドッグフードでは制限したい栄養素です。私の場合は、愛犬の手作りご飯では小麦やトウモロコシはもちろん、米類も使用していませんでした。炭水化物を制限することで体のエネルギー源が不足しないよう、消化吸収性の良い良質な肉や魚などの動物性タンパク質を豊富に使用。

愛犬の場合は亡くなる1カ月前までは運動量も多かったので、運動量に見合ったエネルギー源を供給するよう工夫していました。その他、炭水化物は犬ががんの場合、代謝異常を最も引き起こしやすい栄養素と考えられているため、極力避けるよう工夫が必要です。

2-2、免疫力の高まる食事

免疫力とは、犬の健康に被害を与える危険性のある細胞や細菌、ウイルスなどと闘うために必要な体の防衛機能で、抗がん剤を利用している犬の場合は、特に免疫力が低下しやすいので食事への配慮が大切になります。

抗がん剤を利用していなくとも、がんを発症している場合は体内のがん細胞が増えないよう、特に体の免疫力を整えておかなければいけません。免疫力を整える・強化するためには十分な睡眠・(可能な場合は)適度な運動、ストレスフリーの生活をさせることが大前提ですが、それらに合わせて食事管理を行うことが大切です。

抗酸化作用の高いファイトケミカルが含まれる食べものを手作りご飯で使用したりすることも大切ですが、何より犬の腸内環境の健康維持に役立つ食事を心がけるのがポイントです。腸には免疫細胞が多く集中しており、犬の場合個体差や年齢による差はあるものの一般的に体全体の60%~70%程度の免疫細胞が腸(腸管)に集中しているといわれています。

そのため、私の場合、手作りご飯では消化しにくい炭水化物を殆ど使用せず、良質な鹿や馬肉、サーモンなど使用。それに加えて、ひきわり納豆やヨーグルトなどの発酵食品、適度な食物繊維(水溶性)を取り入れるなどして、便の状態を日々確認しながら手作りご飯による食事管理を行っていました。

2-3、活性酸素をためない食事

活性酸素は、犬の体に入った酸素の一部が他の物質と結びつくことで酸化力のある物質に変化。これが細胞に結びつくことで老化促進やがん細胞の増加を促進する原因になります。この活性酸素を除去するために役立つのが抗酸化作用のある食べもので、人参に多く含まれるβカロテンやブロッコリースプラウトなどに含まれるスルフォラファンなどが一例として挙げられます。

ただし、βカロテンはビタミンAに変換されますが、脂溶性ビタミン全般を中心にどんな食事でも与えすぎは過剰症リスクを高めるので、極端に多く与えないことが大切です。また、放射線治療を行っている犬の場合、特に活性酸素が生じやすくなるという話も耳にしますので、適切な水分摂取を心がけ体に不必要なものをため込まない食事管理を行うことが大切です。

2-4、体を冷やさない食事

体を冷やさない食事に関しては、直接的に犬のがんの進行を左右するというわけではありませんが、体を冷やすことで免疫力の低下を引き起こしやすいので気をつけましょう。特にがんを発症する犬の多くが老犬であり、運動不足により体が冷えやすい状態になっていることがあります。

旬の食材は栄養価が高く、犬の手作りご飯で取り入れる方が多いのですが、冷房を利用している場合は体を冷やしやすいトマトやキュウリなど夏の野菜にも配慮が必要です。犬の場合、一般的には人と比較して寒さに強いといわれていますが、特に腸の冷えには細心の注意が必要です。

2-5、良質な食事を心がける

当たり前のことではありますが、健康体の犬であってもがんを発症している犬であっても化学合成添加物や酸化した食事は健康被害を引き起こす原因になります。全ての添加物ではありませんが、化学合成添加物の多くは長期継続利用することで発がん性リスクが高まるものが多く、酸化した食事は嘔吐下痢などの消化器系症状に。

それだけでなく、活性酸素を発生させて健康な細胞の増殖を妨害する原因になります。手作りご飯の場合は、栄養バランスへの配慮はもちろん使用する食材の鮮度にも気をつけなければいけません。

【犬の手作りご飯|量や配分など】

3、がんの犬を支える食事管理の注意点

がんの犬を支える食事管理に関してご説明しましたが、これらはあくまで基本的なことであり、がんの種類や状況、また犬の状態によって食事管理で優先させなければいけないポイントは変わります。

例えば食欲が低下している犬の場合、何より嗜好性の高まる食事で食欲を上げることが第一前提になることもありますし、がん以外に併発している病気があれば他の病気への配慮も必要。

消化管腫瘍がある犬の場合、脂肪分を減らした食事に切り替えることもありますし、腫瘍によって発熱している犬の場合は、食事で体の内部を温めないよう工夫した方が良いケースもあります。

食事管理をする上では、何より現状犬の体で何が起こっているのかを把握することが大切ですので、都度食事で重要視すべきことを獣医師に確認しながら工夫することが大切です。

4、食欲がない犬のための薬

少し前まではがんを中心に、病気によって食欲がない犬のための食欲改善効果が期待できる薬がなく、犬の食欲を改善したい場合、ステロイドを中心に何かしらの他の目的で使用する「薬の副作用」として食欲改善を見込むことしかできませんでした。

しかしながら、数年前にアメリカで食欲増進剤(ENTYCE/ エンタイス)が販売され、日本でも取り入れている動物病院があるようです。薬の使用に関しては獣医師の判断や飼い主の意向が大きく関わってきますが、犬の場合も末期になると食欲が完全になくなってしまうこともあるので、がんと闘う犬を支える飼い主の選択肢が一つ増えたと考えることができます。

【がんの緩和ケアの必要性や方法】

【がん|緩和ケアに使われる薬】

【犬のがん|愛犬のために飼い主ができること】


WRITER Profile

記事作成者:  望月 紗貴
犬たちの幸せ(=飼い主の意識の向上)を目的とし情報提供サイトを開設。老犬介護士、ペット看護師、犬の管理栄養士を中心に多数ペット資格を保有。他社の記事監修・作成も数多く請け負う。

記事監修者:  (獣医師)西原 克明

動物病院の院長を務めながら、様々なペット関連業界で活躍。腫瘍外科や椎間板ヘルニアを中心に「特殊外科」の執刀を得意とし、腸内細菌や口腔内細菌の研究を行い予防医療にも注力している。


犬のがんの緩和ケア|必要性や方法〔獣医師監修〕

目次:
1、がんの緩和ケアとは?
2、がんの緩和ケアの必要性
3、犬のがんにおける痛みの緩和ケア

手術や抗がん剤治療、放射線治療などの医療技術を使いながら愛犬のがんと闘っていても、緩和ケアに切り替えなければいけない状況下に置かれることがあります。また、これら治療を行いながらがんの緩和ケアが必要になることもあります。

1、がんの緩和ケアとは?

1-1、緩和ケアとホスピスケアの違い

獣医療においてもホスピスケアという言葉を耳にするようになりましたが、厳密にいうとホスピスケアに関しては、他に治療法がないような余命の短い犬(人)に提供されるのに対し、緩和ケアは抗がん剤など何かしらの他の治療を行いながら緩和治療を行う場合も含むのが特徴です。

いずれにせよ、薬による痛みの緩和(ペインコントロール)を中心に、愛犬のQOL(クオリティー・オブ・ライフ)改善のために用いられ、犬に極力苦痛のない余生を過ごさせてあげるためにはとても大切な治療です。

1-2、緩和ケアは獣医師と家族が協力する

緩和ケアにおいては、獣医師の薬の処方など西洋医学を中心に行いますが、家族(飼い主)が協力して行うことがとても大切です。個体差もありますが犬は痛みを感じていることを隠す傾向にあり、ましてや言葉を話さない動物ですので、日々愛犬と接する中で行動の変化(目で分かる変化)をしっかりと観察して獣医師に相談することが大切です。

感じている痛みの度合いはがんの進行度合いや発生部位などによってある程度は予測できます。しかしながら、ペインコントロールは飼い主が痛みの発生を中心に小さな変化に気づいてあげることがとても大切です。痛みの改善だけでなく予防として薬が処方されたり治療が行われたりすることもあるので、しっかりと獣医師と話し合って緩和治療について決めていきましょう。

【がん|緩和ケアに使われる薬】

1-3、痛みの緩和だけが緩和ケアではない

WHO(世界保健機関)による緩和ケアの定義を前提に考えた場合、緩和ケアはQOL向上のために身体的負担の軽減だけでなく、心理的、またはスピリチュアル的負担に対しての苦痛の予防・軽減が含まれます。

そのため、犬の体の負担軽減は獣医師の緩和治療が主になりますが、精神的負担の軽減も非常に重要。動物病院に連れていく回数が減るよう自宅でできるケアを飼い主自身が行ったり、生活する中で起こりうる犬の不都合などに対して対策を行ってあげることも緩和ケアの一環です。

2、がんの緩和ケアの必要性

2-1、体と心の痛みのケア

がんの種類によっては薬剤を利用して痛みを緩和できないものもありますが、それでも獣医療で緩和ケアが取り入れられるようになってから、がんを発症した犬たちが快適に余生を過ごすことができる可能性が随分広がりました。

一昔前では安楽死を迫られたケースであっても、現在ではがんに伴う体と心の痛みを和らげて動物病院でなく家族と共に自宅で穏やかに過ごすことができる犬も増えました。犬が家族の一員として大切にされる現代では、がんを発症している犬にとっては緩和ケアは無くてはならないものです。

【犬のがん|愛犬のために飼い主ができること】

2-2、家族の心のケア

がんに苦しむ愛犬の緩和ケアをすることは、家族(飼い主)の心のケアにも役立ちます。可愛い愛犬が苦しむ姿は誰だって見たくはありません。ただでさえ、がんという重い病気と闘う犬。極力痛みを取り除き、穏やかに過ごさせてあげることは家族の心のケア(喜び)にも繋がるのではないでしょうか。

2-3、愛犬の心のケア

がんを発症している犬の場合、痛みだけでなく発生部位によっては呼吸が苦しくなったり吐き気や食欲低下、身体のだるさなどのストレスによって精神的な負荷もかかることから、QOLが低下しやすい状況になります。身体のストレスは必ず心のストレスに繋がるので、少しでも体にかかる負荷を減らしてあげることで心も同時にケアしてあげましょう。

その他、体の緩和ケアと同時に、優しく撫でたり声掛けをするなど、愛犬とのコミュニケーション方法を見直すことも大切です。最近では針灸などの東洋医学、メディカルアロマなどの治療を取り入れている動物病院もあるので、犬に負担がかからないようであれば西洋医学と併用して活用してみるのも良いでしょう。

3、犬のがんにおける痛みの緩和ケア

3-1、痛みの緩和ケア(ペインコントロール)

がんの進行によって全ての犬に痛みが生じるわけでなく、神経が分布している場所にがんが入り込んでいるような場合、またはがんの組織が大きくなることで神経部分に圧迫が生じてしまっている場合などに痛みが生じます。その他、がんの発生部位・種類などにより緩和ケアの必要性、または方法は異なります。

がんが進行している犬の場合、大抵獣医師は犬に痛みがあること前提でペインコントロールを目的とした治療を行いますが、日々の生活で起こっている症状や犬の変化などを獣医師に詳しく説明して、必要に応じて検査でがんの進行状況を確認しながら痛みの緩和ケアを行う必要があります。

3-2、がんの痛みと痛みを生じやすいがんの種類

がんの痛みは、急性痛的な痛みと慢性痛的な痛みの性質の両方を持ち合わせているといわれており、いずれにせよがんの発生部位や種類などによっては、長時間強い痛みが続くことが往々にしてあります。

消炎鎮痛剤や麻薬系の薬が緩和ケアで処方されることがありますが、犬のがんの中でも骨肉腫は痛みの度合いが重度だといわれています。犬の場合は骨原発性腫瘍の中では骨肉腫が一番発生率が高いといわれていますが、中でも大型犬の場合は四肢に発生することが多く、断脚手術によって痛みを緩和させる方法が施されることが多いのが特徴です。

3-3、がんの痛みを緩和するための治療方法

がんの痛みを緩和するためには、先述でお話させていただいた通り鎮痛剤や麻薬性の薬が投与されるのが一般的ですが、放射線治療設備がある動物病院では放射線で痛みを和らげることもあります。薬に関しては、飲み薬や注射、座薬、貼るタイプのものなどがありますが、獣医師の説明をしっかりと聞いて愛犬の痛みの状況に合わせて緩和治療を行う必要があります。

【愛犬のがん闘病生活ブログ】

3-4、麻薬性鎮痛剤について

骨肉腫をはじめとし重度の痛みでモルヒネやフェンタニルが必要な場合は、別途獣医師が「麻薬使用者」として届け出が必要になることから、全ての動物病院で薬を扱っているわけではないので注意が必要です。麻薬性鎮痛剤に関しては、錠剤タイプのものや注射薬、パッチ状の経皮吸収されるタイプの薬があり、副作用の確認はもちろん取り扱いに注意しなければいけないものが多いため、都度獣医師の厳密な指示に従うことが大切です。


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記事作成者:  望月 紗貴
犬たちの幸せ(=飼い主の意識の向上)を目的とし情報提供サイトを開設。老犬介護士、ペット看護師、犬の管理栄養士を中心に多数ペット資格を保有。他社の記事監修・作成も数多く請け負う。

記事監修者:  (獣医師)西原 克明

動物病院の院長を務めながら、様々なペット関連業界で活躍。腫瘍外科や椎間板ヘルニアを中心に「特殊外科」の執刀を得意とし、腸内細菌や口腔内細菌の研究を行い予防医療にも注力している。


犬のがんの緩和ケア|薬や治療法など〔獣医師解説〕

1、犬のがんの緩和ケアに効果的な薬は?
2、犬のがんの緩和ケアに使用される薬のタイプは?
3、犬のがんの急性痛・慢性痛について
4、ペインコントロールに有効なその他の治療法

がんを発症した犬の場合、痛みを中心に緩和ケアにおける治療がとても大切になるケースがあります。今回は、犬の緩和ケアについて、薬を中心とした専門的内容を獣医師に幅広く解説していただきました。

1、犬のがんの緩和ケアに効果的な薬は?

1-1、がんの緩和ケアに使用される薬の概要

犬のがんの緩和ケア治療に使用される薬には鎮痛薬、抗炎症薬、局所麻酔薬などがあります。鎮痛薬は痛みを減らす効果があり、抗炎症薬は犬の痛みの原因となる炎症を抑えることで間接的に痛みを減らす効果があります。がんのペインコントロールに使用される薬としては鎮痛薬、抗炎症薬などが一般的で、局所麻酔薬は神経を麻酔することで痛みを感じなくさせるブロック麻酔という治療手法で用いられます。

1-2、がんの緩和ケア治療に有効な鎮痛薬

犬の鎮痛薬は麻薬性鎮痛薬、非麻薬性鎮痛薬、解熱鎮痛薬に分けられます。麻薬性鎮痛薬はモルヒネ、フェンタニルなどが代表的です。犬の麻薬性鎮痛薬は習慣性を伴う強力な鎮痛作用を持ち、脳や神経に作用。病巣から脳に向かう痛みの信号を止めます。

非麻薬性鎮痛薬はブトルファノール、トラマドールなどが代表的です。これらは習慣性を持ちませんが、麻薬性鎮痛薬と比較すると軽度の鎮痛効果を持つと報告されています。麻薬性鎮痛薬と同じ方法で痛みを減らす為、犬に投与する際、併用することでお互いの作用を弱くしてしまう場合があります。

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1-3、がんの緩和ケアで使用されるオピオイド

麻薬性鎮痛薬と非麻薬性鎮痛薬は、オピオイドと呼ばれる薬の種類です。オピオイドはがんの緩和治療における重要な薬ですが、人間においてオピオイドは重度の呼吸抑制、薬物耐性(長く使用することで作用が弱まること)があると言われています。

しかしながら、犬の場合はオピオイドに対する呼吸抑制の感受性が人ほど敏感ではなく、使用する期間も短い為、これらの副作用はあまり問題にはならないと報告されています。

1-4、がんの緩和ケアで使用される解熱性鎮痛薬

解熱性鎮痛薬は、NSAIDs(エヌセイド)と呼ばれる非ステロイド系抗炎症薬の中で鎮痛効果を持つものを指します。犬の解熱性鎮痛薬はケトプロフェン、アスピリンなどが代表的で、がんの痛みの原因物質が生成されることを防ぎます。

犬の解熱性鎮痛薬もオピオイドと同様にがんの緩和ケアに有効ですが、種類によっては胃潰瘍、血液凝固阻害(血が固まらない)などの副作用がでる場合があります。低頻度ですが腎臓に対する副作用を持つとする報告があるため、がん以外に腎疾患を持つ犬に投与する際には注意が必要です。

1-5、がんの緩和ケアで使用される抗炎症薬

抗炎症薬は、NSAIDs(非ステロイド系抗炎症薬)とステロイドに分けられます。NSAIDsは炎症の原因物質が生成されることを防ぎます。解熱性鎮痛薬と同様に胃潰瘍、血液凝固阻害、腎障害などの副作用があります。また、NSAIDsには抗腫瘍効果があり、骨肉腫、乳腺癌、口腔内メラノーマなどのcox-2と呼ばれる酵素を多く持つ様々な犬の腫瘍に効果的である可能性があると述べられています。

ステロイドはプレドニゾロン、デキサメタゾンなどが代表的であり、強力な抗炎症作用を持ちます。犬に投与した際、免疫抑制や医原性クッシング症候群などの重大な副作用を引き起こす場合があるので、獣医師に指示されている量を適切に与えることが重要。またNSAIDsとステロイドの併用は重大な副作用を引き起こす可能性が高く、併用は禁忌とされています。

2、犬のがんの緩和ケアに使用される薬のタイプは?

2-1、がんの緩和ケアの治療で使用される薬の投与方法

犬のがんの緩和ケアに用いられる薬にはいくつかの投与方法があります。薬を口から与える「経口投与」、皮ふから吸収させる「経皮投与」、注射などにより体内に投与する治療方法などがあります。

2-2、がんの緩和ケアにおける経口投与とパッチの使用方法

経口投与は薬が比較的早く、犬のがんの痛みに効果を現します。経皮投与には犬の皮膚に直接薬を塗布するほか、パッチと呼ばれるシールを皮膚に貼る方法もあります。

パッチによる経皮投与は薬剤が長期間作用する特徴があり、長期間薬を作用させるためパッチには多くの量の薬が含まれており適切な使用が重要になります。パッチを温めると薬剤の過剰投与につながり危険です。犬がパッチをつけた状態での入浴等も避けて下さい。

2-3、がんの緩和ケアにおける注射の種類

注射による投与には静脈内投与、筋肉内投与などがあります。どちらの投与も薬がすぐに効果を表しますが、注射による治療は動物病院において獣医師による処置として行われます。たとえ同一の薬であっても投与する方法が異なる場合、混同して使用することはできません。

がんの緩和ケアに使われる薬は強力な効果を持つものが多いのが特徴です。犬に投与する場合、必ず獣医師に指示された量を正しい時間に投与するようにして下さい。自己判断で量を増減すると大変危険ですので、獣医師の指示で薬を与えても犬が痛みを感じている、効果が感じられないような場合は再度獣医師に治療の相談をお願いします。

3、犬のがんの急性痛・慢性痛について

3-1、犬のがんの急性痛・慢性痛

がんによる痛みには急性痛と慢性痛の二種類があります。急性痛は腫瘍が急激に発生したとき、膵炎などの劇的な症状が出たとき、手術を行った直後の犬などに発生します。慢性通は術後の経過、がんが長期化したときなどに発生します。

痛みの評価方法として、急性痛ではレベル4を最大の痛みとして評価するペインスケールが、慢性通では痛みの判別のためのチェックポイントが報告されています(動物の痛み研究会)。これらの評価は飼い主さんでも簡単に行うことができ、獣医師に犬の痛みを正しく伝え適切な治療をするために効果的です。

3-2、急性痛のペインスケール(一例)

レベル1:ゲージから出ようとしない、尾が垂れている、患部を舐めたり噛んだりして気にする、などの行動が見られます。
レベル2:耳が垂れている、食欲の低下、自分から動かない、痛いところをかばう、などの行動が見られます。
レベル3:体が震えている、攻撃的になる、横にならない、間欠的に鳴く・唸る、体を触ると怒る、などの行動が見られます。
レベル4:食欲が完全になくなる、ずっと鳴く・唸る、なきわめく、眠らなくなる、全身が硬直するなどの行動が見られます。

3-3、慢性痛のチェックポイント(一例)

・散歩や遊び、ソファーなどの上り下りなどの運動を嫌がるようになった
・立ち上がるときにつらそうになった
・尾を下げている時間が増えた
・寝ている時間が増えた、減った
・足を引きずるようになった

3-4、犬のがんの痛みに関して(がんの痛みの評価)

犬のがんの痛みについては明らかにされていないことが多いのが特徴です。各腫瘍における痛みの程度については未だ十分な研究がなされていません。消化器、泌尿器、口腔・鼻腔、皮膚、乳腺、骨、中枢神経系における腫瘍においては痛みがあると言われており、がんの緩和ケアにおいて重要になるのは、犬が感じている痛みを評価することになります。

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実は動物病院では犬が我慢してしまうことから、痛みを正しく評価できない場合があります。獣医師は手術などの治療を中心に犬にとってひどいことをしますし、飼い主さんとも離ればなれになってしまいます。そんな恐怖心が強まる状況下では、犬は痛みを頑張って隠してしまうのです。犬にとって飼い主さんは信頼できるパートナーですので、家で飼い主さんと一緒にいるとき、犬は自分がどれくらい痛いのかをしぐさや声で表してくれるかもしれません。

犬の痛みを一番正しく評価できるのは飼い主さんですので、急性痛、慢性痛の評価方法で飼い主さんが痛みを評価することが大切。その情報から獣医師が適切な処置を行うことが痛みの緩和ケアに最も有効と言えるでしょう。

4、ペインコントロールに有効なその他の治療法

犬のがんの緩和ケアに有効な補助的な治療法には身体リハビリテーション、サプリメントなどが挙げられます。これらの補助療法は鎮痛薬、抗炎症薬などの治療法と併用することで、より効果的なものになります。また、腫瘍の種類によっては大変危険な状態になる補助療法の組み合わせもあります。
例えば、肥満細胞腫などは腫瘍部を物理的に刺激することで、犬に劇的な症状が発生します。補助療法を行う場合は必ず獣医師に相談の上行ってください。

・身体リハビリテーション|運動療法、物理療法などがあり、運動療法は運動により血流、リンパの流れを改善します。人の場合、NSAIDsと同等の鎮痛作用があると報告されています。物理療法には温熱療法、冷却療法などが含まれます。温熱療法は運動療法と同じく、犬の血流、リンパの流れを良くすることで鎮痛作用をもたらします。冷却療法は急性疼痛の緩和に有効だという報告があります。

・サプリメント|ω-3脂肪酸、グルコサミン・コンドロイチンなどが含まれます。ω-3脂肪酸のうち「エイコサペンタエン酸(EPA)」と「ドコサヘキサエン酸(DHA)」は穏やかな鎮痛作用を持ち、慢性痛の補助的治療に使用できると報告されています。その他のω-3脂肪酸には鎮痛作用はないため注意が必要です。グルコサミン・コンドロイチンも同様に穏やかな鎮痛作用を持ち、慢性痛の補助療法として使用できる可能性があります。しかし、これらの物質の軟骨に対する保護効果については科学的に十分な根拠はありません。


WRITER Profile

獣医師ライター:  若林 薫
子犬や子猫の治療、健康管理を得意分野とする。動物病院の獣医師と飼い主を繋ぐための専門的で分かりやすい記事を執筆。獣医師免許証保有。

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犬のがん|悪性度の高い組織球性肉腫〔獣医師解説〕

1、犬の組織球性肉腫とは?特徴や転移
2、犬の組織球性肉腫は何故できる?原因
3、犬に組織球性肉腫ができたら?症状
4、犬の組織球性肉腫の進行度合いや余命
5、犬の組織球性肉腫の予防・早期発見
6、犬の組織球性肉腫に効果を示す抗がん剤

バーニーズマウンテンドッグやフラットコーテッドレトリーバーなどが発症しやすい「組織球性肉腫」は、非常に悪性度が高い腫瘍だといわれています。今回は、そんな組織球肉腫について特徴や転移率、原因や抗がん剤などの専門的内容を獣医師に幅広く解説していただきました。

1、犬の組織球性肉腫とは?特徴や転移

1-1、組織球性肉腫とは?

犬の組織球性肉腫は、樹状細胞やマクロファージと呼ばれる組織球(免疫を担当する細胞)からできてしまう悪性腫瘍です。他の臓器に転移しやすく増殖も速いため、非常に悪性度の高い腫瘍と言えます。組織球と関連する病気として皮ふ組織球腫・反応性組織球症(全身性組織球症)などがありますが、皮ふ組織球腫は良性の腫瘍であり、反応性組織球症は腫瘍ではありません。組織球性肉腫では四肢と肺・肝臓・脾臓に腫瘍が発生することが多いのが特徴です。

1-2、組織球性肉腫を発症しやすい犬種

組織球性肉腫になりやすい犬種(好発犬種)があり、バーニーズマウンテンドック、フラットコーテッドレトリバー、ゴールデンレトリバーなどの大型犬、もしくは日本国内ではウェルシュコーギーペンブロークでの悪性腫瘍の発生が多く報告されています。バーニーズマウンテンドックとフラットコーテットレトリバーにおいては、死因の50~60%が組織球性肉腫を含む様々な悪性腫瘍によるものであり、また両犬種で1/7以上が組織球性肉腫で死亡しているとも言われています。

1-3、組織球性肉腫の種類

組織球性肉腫は一つの臓器から腫瘍が発生する「局所性組織球性肉腫」と、多くの臓器から腫瘍が発生する「播種性組織球性肉腫」、腫瘍細胞が正常な細胞を食べてしまう「血球貪食性組織球性肉腫」の3つのタイプがあります。播種性組織球性肉腫に比べると、局所性組織球性肉腫は悪性腫瘍の増殖が遅い傾向があります。しかし局所性組織球性肉腫は38~60%の高い転移率を持つため、発見されたときにはいくつもの臓器に悪性腫瘍が転移していることが多く、悪性度が高いのが特徴です。中でも血球貪食性組織球性肉腫は最も悪性度が高く、重度の貧血などの症状と共に急速に体調が悪化し死亡します。

2、犬の組織球性肉腫は何故できる?原因

2-1、遺伝子的変異が原因?

犬の組織球性肉腫の原因として、免疫を担当する細胞による異常なたんぱく質の分泌、遺伝子の変異などの仮説がありますが、まだ明らかにされていないことが多いのが特徴です。
いくつかある仮説の中で興味深いものをご紹介します。健康な状態でも遺伝子にはたえず変異が起きています。その変異の結果、がん細胞が発生したり、細胞が自死するアポトーシスという現象が起きたりします。組織球性肉腫を持つ犬の遺伝子には特定の変異がみられ、組織球性肉腫の好発犬種において他の犬種よりもその変異が多いという報告があります。組織球性肉腫の発生が遺伝と関係があると言い換えることが出来るでしょう。

2-2、免疫を低下させる働き

人間の免疫を担当する細胞の腫瘍で注目されている免疫チェックポイントというものがあります。免疫チェックポイントとは免疫を担当する細胞に存在する分子で、この中のCTLA-4、PD-1は多く存在することで腫瘍に対する免疫を低下させる働きがあります。犬の組織球性肉腫では、CTLA-4およびPD-1の量が健康な犬に比べて増加しているという報告があります。つまり犬の組織球性肉腫では腫瘍に対する免疫を低下させる働きが存在している可能性があるということです。

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3、犬に組織球性肉腫ができたら?症状

悪性腫瘍が発生している臓器により様々な症状がみられます。局所性組織球性肉腫では四肢に発生することが多く、歩行困難や関節の腫れなどの特徴的な症状がみられます。しかし、転移率が高く、多臓器が原因となる複合的な症状がみられる場合があります。

播種性組織球性肉腫では四肢の症状に加えて、咳、喀血、嘔吐、下痢、発熱などの他の病気でも起りうる症状がみられる場合があります。血球貪食性組織球性肉腫では、免疫を担当する細胞が異常な細胞を食べる能力を失わないままがん化します。そのため、正常な赤血球や血小板を癌細胞が食べてしまい重度な貧血や血小板減少症(血が止まらなくなる病気)を発症します。

4、犬の組織球性肉腫の進行度合いや余命

犬の組織球性肉腫は病気の進行が早いため、余命は短くなる傾向があります。
発見時の病気の進行度合いなどにより差が生じますが、局所性組織球性肉腫の余命は7~8か月程度、播種性組織球性肉腫では4か月程度と言われています。血球貪食性組織球性肉腫では最も余命が短く1~2か月程度という報告もあります。

5、犬の組織球性肉腫の予防・早期発見

残念ながら犬の組織球性肉腫を予防する方法は、現在のところ発見されていません。早期発見による治療が重要になります。特に局所性組織球性肉腫においては四肢に悪性腫瘍ができることが多く、転移する前に腫瘍を発見できれば外科的切除が可能なことがあります。外科的切除をした場合、抗がん剤のみの治療に比べて余命が長いという報告もあります。

早期発見のためには毎日の健康観察はもちろん、全身をなでで皮膚や足にシコリがないか確認してあげて下さい。なんらかの異常が見つかった場合はお家で経過観察をするよりも動物病院で獣医師の診察を受けた方が良いでしょう。悪性腫瘍の有無だけではなく、他の病気が見つかるかもしれません。年に何回かの定期的な健康診断を受診することも早期発見には重要です。

最近は人の健康診断のように犬の健康診断を実施している動物病院も増えてきました。健康診断の内容はコースによりさまざまですが、血液検査やエコー検査・X線検査などにより様々な病気の早期発見につながります。

6、犬の組織球性肉腫に効果を示す抗がん剤

犬の組織球性肉腫は局所性組織球性肉腫の場合、病巣を外科的に切除することが可能ではありますが、急速に増殖・転移をする悪性腫瘍の性質上、発見されたときにはすでに外科的切除が困難な場合が多くあります。

播種性組織球性肉腫と血球貪食性組織球性肉腫では外科的切除が極めて難しく、次の選択肢として抗がん剤療法や放射線療法などが挙げられます。長い間犬の組織球性肉腫に有効な抗がん剤は発見されてきませんでしたが、2003年にアメリカでロムスチンという抗がん剤が組織球性肉腫に有効であるという報告がなされました。近年の研究ではロムスチンとドキソルビシンという二つの抗がん剤を併用する療法による治療成績も報告されています。

しかしながら、犬の組織球性肉腫に対して長期間の余命・病気の完治をすることができる抗がん剤はいまだ発見されていません。現在、様々な種類の抗がん剤や分子標的薬と呼ばれる新しい種類の抗がん剤が組織球性肉腫の治療に使用できるか試験されています。

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獣医師ライター:  若林 薫
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がんの愛犬のために飼い主ができること

目次:
1、がんの犬のためにできること|精神
2、がんの犬のためにできること|医療
3、がんの犬のためにできること|健康
4、今を生きる愛犬に寄り添う生活

犬の「がん」の告知や余命宣告は、飼い主にとってあまりに辛く精神的に耐え難いものです。私も今は亡き愛犬バーニーズマウンテンドッグのがん告知や余命宣告を2度経験。生きている心地がしないような辛い時期もありました。しかし、たとえ残り僅かな時間だとしても、飼い主の意識の変え方次第で愛犬を幸せにできることは確かなことです。

今回は、愛犬のがんと向き合った約3年半で経験した体験談を踏まえ、がんの犬のために飼い主ができることについてご紹介致します。

1、がんの犬のためにできること|精神

1-1、飼い主の不幸は犬に伝染する

がん告知や余命宣告を受けると、当たり前のことですが飼い主は非常に落ち込みます。私なんかは、頭が真っ白になり獣医師の言葉が耳に入って来ず、立っていることさえできませんでした。

しかし、犬は人(特に大好きな飼い主)の感情を敏感に感じ取ります。飼い主が悲しい・辛い・苦しいなどのネガティブな感情を抱いていると、それらはほぼ全て繊細な心を持つ犬に伝染します。私たち飼い主が不幸だと犬も不幸になってしまうのです。

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1-2、愛犬の幸せのために自分が幸せになる

そこで大切なことは、飼い主が自身の精神的コントロールを心がけること。重く圧し掛かる余命宣告の言葉は無理にでも追い出さないと、どんどん頭の中で大きくなってしまいます。

私も泣き崩れたときもあり、このような状況下で前向きになるのは決して簡単なことではありません。しかし、せめて愛犬の傍にいるときは幸せでいなければいけない。残り僅かであっても傍にいること、傍にいてもらえることに感謝しなければいけない。たった今、目の前で必死に生きている愛犬を幸せにしなければいけません。だから、愛犬が幸せでいるためには、飼い主が幸せでいなければいけないということを頭の片隅に置いておいて欲しいのです。

2、がんの犬のためにできること|医療

2-1、医療の選択をするのは飼い主

愛犬ががんになっても、当たり前のことですが獣医師免許を持っていない飼い主には治療を施してあげることはできません。しかし、最終的に医療の選択をするのは飼い主です。外科手術で腫瘍を摘出するのか、抗がん剤治療(化学療法)や放射線療法を行うのか。緩和ケアにするのか・・。

私の場合は1度目の血管肉腫のときは摘出手術のみ選択。2度目の組織球肉腫のときは摘出手術後に抗がん剤を短期間利用したが、緩和ケアに移行。愛犬が病院嫌いなことから飲み薬の抗がん剤を使用したが、がんの転移状況と副作用の関係で獣医師に相談して短期間で断念しました(以下、愛犬の闘病ブログ)。

https://true-dog-lover.com/pet-dog-blog/fight-against-cancer/

医療の選択に関しては、飼い主に重く責任が圧し掛かるような気がしてしまいますが、「愛犬が幸せな余生を過ごすために考えた飼い主の選択」が一番です。どんな選択をしても多かれ少なかれ必ず残る後悔。ならば、愛犬が少しでも幸せな余生を過ごすためにはどんな選択ができるのかを考えれば答えがでるのではないでしょうか。

2-2、医療技術だけでなく相談できる獣医師

近年では、セカンドオピニオン外来を受け付けている動物病院も増えましたが、獣医師の選択は飼い主の自由です。獣医師を選ぶとき私が一番重要視したことは、医療技術もさることながら相談できる獣医師であるか否かでした。

私の場合、1度目に愛犬のがん告知を受けた動物病院で「がんですね。抗がん剤治療も考えた方が良いですね」と素っ気なく言われ、詳しい説明や今後の医療の選択に関しての説明がなかったのでセカンドオピニオン外来に行くことにしました。結果、動物先端医療を行っている病院で腫瘍科を専門とする相談できる獣医師に出会うことができました。愛犬のがんと向き合っていく中で、専門性もさることながら獣医師の人間性や言葉にどれほど救われたか分かりません。

獣医師はカウンセラーではないので、飼い主の心理的相談をするべきではありません。しかし、ただでさえ愛犬のがん告知や余命宣告で不安が多い中、専門的だけど分かりやすい医療説明をしてくれ、その犬の状況(がんの部位や種類、進行度合いなど)や性格に配慮した医療を提案してくれる獣医師は非常に心強いものです。獣医師からもらえる情報量が多ければ多いほど、抗がん剤1つにしてもなんにしても私たち飼い主の選択肢が広がります。

セカンドオピニオン外来は、なにも飼い主の身勝手で動物病院をころころと変えるためのものではありません。獣医師の人間性や医療方針、医療技術などを総合的に評価して自分と愛犬の状況に合った動物病院を選択することが大切です。

2-3、がんの情報を可能な限り入手する

がん告知や余命宣告はそれほど頻繁にされるものではありませんので、多くの飼い主はこのような状況下におかれたとき、自分がこれから愛犬のために何をすべきかが分かりません。私も精神的混乱とがん治療に関する知識のなさから、右も左も分からない状況に追い込まれました。そこで考えたのが、犬のがんについての情報入手をすることでした。自分に少しでもがんの知識があれば、愛犬の幸せな余生のために役立つかもしれないと考えたからです。

読みなれない専門書を愛犬が寝ている間に毎晩読んで、タイトルに「犬のがん」と表記があるものは片っ端から買いあさりました。心細くなったときは、SNSで愛犬ががんを発症した経験のある方のブログもたくさん拝見させていただきました。同じ経験をしている飼い主の存在は、とても大きいものです。

この時期には数えきれない本を読みましたが、医療系の本は獣医師の説明に対しての理解度を深めるためには役立ったが、実際に自分が治療できるわけでないのでそれ程は役に立たず・・。愛犬を支えるために必要な飼い主の意識の持ち方だとかやるべきこと、知っておくべきことなどが簡単に理解できる以下のような本が非常に役立ちました。

3、がんの犬のためにできること|健康

3-1、愛犬の精神的な健康維持をサポート

愛犬の精神的な健康を維持してあげるためには、QOLの向上が非常に大切です。先述でお話した通り、愛犬にストレスフリーの生活を提供してあげるためには、飼い主の精神的な安定は一番大切ですが、愛犬が好きなことで溢れる毎日にしてあげるように工夫することも大切です。

私の愛犬の場合は、とにかく人が好き。ドッグカフェを中心にお出かけも大好き。愛犬が3才半で血管肉腫になってから、亡くなる数日前まではお出かけをして人に会うことを生活の中心においていました。もちろん十分な睡眠をとらせて体に負担がかからないような方法で・・。

犬によって「好きなこと」は異なり、飼い主と終始家でまったりしているのが好きな犬もいれば、一人でのんびりと過ごす時間が必要な犬も。外で遊ぶのが好きな犬もいれば、外が苦手な犬も。おもちゃ1つとっても噛むものが好きな犬もいれば、頭を使う知育おもちゃが好きな犬もいます。

愛犬が好きなことに関しては飼い主さんが誰より詳しいので、些細なことでも良いので犬が好きなことで溢れる毎日にすることが大切。飼い主さんによって、仕事があったり金銭的な事情があったりと様々ですので、無理をせずにできる限りの工夫をしてあげれば良いのだと思います。

3-2、愛犬の肉体的な健康維持をサポート

がんという大きな病気と闘う愛犬のために、飼い主さんが手術を施したり抗がん剤治療を行うことはできません。しかし、毎日の食事管理や運動管理、睡眠時間の管理を中心に犬の肉体的健康維持をサポートすることはできます。

私の場合は幸い時間があったので、愛犬の1度目のがん告知から必死で看護学や管理栄養士の勉強をして、手作りご飯を中心にがんと闘うための体づくりをサポートしてきました。しかし、余命僅かであったり単純に時間がないとそうもいきません。

そんなときは、寝ている間だけでも愛犬が心地が良いよう寝床を工夫したり環境に配慮したりすることはできます。手作りご飯でなくても、ドッグフードに配慮したり免疫力応援に役立つサプリメントを追加するなど、食の改善もできますし、運動ができる状態であれば体に負担がかかりにくいよう工夫することもできます。どんな些細なことでも良いので、愛犬をよく観察しながらこうしたら愛犬の体に良いのではないかと考えながら生活環境を整えてあげることが大切です。

4、今を生きる愛犬に寄り添う生活

愛犬のがん告知や余命宣告は飼い主に重くのしかかり、精神的にも追い込まれます。しかし、愛犬の余生を幸せにできるのは飼い主さんだけなのではないでしょうか。愛犬に気づかれなければ何度だって泣いていい。ただ、犬が悲しまないよう一緒にいるときは自分が幸せでいること、愛犬の気持ちに寄り添って生活をすることがとても大切なのではないでしょうか。

私も愛犬のために、また自分が後悔しないよう愛情溢れる看護・介護をしてきたつもりですが、やはり思い返せば思い返すほど後悔が付きまといます。こうすれば良かった、ああすれば良かったなんて思うことは、今でも毎日のように・・。しかし、完璧にできなくても愛犬の心と体に寄り添って生活したという事実だけが、唯一の心の支えになっているのだと思います。

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