犬の手作りご飯|量や配分など〔管理栄養士監修〕

犬を家族の一員として大切にするようになった近年、犬にも「安心・安全で愛情のこもった食事を」と、手作りご飯を作る飼い主さんが増えました。

私もその一人で、愛犬が若くして悪性腫瘍を発症したことから手作りご飯を始め、何年もの間栄養学を勉強しながら、ほぼ毎日手作りご飯を作ってきました。しかし、基本を知らずに犬に手作りご飯を作るのは危険です。

今回は、愛犬に手作りご飯を作りたいと考えている飼い主さんに知っておいてほしい手作りご飯の基本についてご紹介致します。

犬の手作りご飯は危険?

最近ではインターネット上に、犬の手作りご飯初心者の方々のレシピが非常に多く出回っており、偏った栄養バランスを中心に大変危険であると感じております。

おやつ感覚で与える手作りご飯・少量ドライフードにトッピングするための手作りご飯であればそれほど問題ありませんが、愛犬の健康維持・病気の進行制御などを目的として、総合栄養食ドッグフードのように継続して犬に与える目的で作るのであれば、栄養バランスの偏ったレシピを参考にするのは危険です。

せっかく愛犬のために時間をかけて作る手作りご飯ですので、犬の健康に悪影響を及ぼさないよう、手作りご飯の基本について知っておきましょう。

犬の手作りご飯の基本|5大栄養素

犬の体に必要な5大栄養素とは、タンパク質・脂質・炭水化物・ビタミン・ミネラルです。水を含めて6大栄養素と呼ぶこともありますが、ここでは5大栄養素としてご紹介致します。

体の主な構成成分「タンパク質」

タンパク質は犬の体の約20%程度、またはそれ以上の構成成分(人間の場合は約14~19%程度)であるため、犬の体に一番多く必要な栄養素であると考えられます。ご飯で摂取したタンパク質は犬の体内に入って、アミノ酸として消化・吸収されますが、後に体の中で再度動物特有のタンパク質に合成されます。

タンパク質は大きく分けて(※1)動物性タンパク質と(※2)植物性タンパク質の2つに分けられますが、犬の体は動物性タンパク質の消化を得意とするため、消化吸収性の良い動物性タンパク質を主原料として手作りご飯を作るのが基本です。

(※1)動物性タンパク質|肉や魚などに含まれるタンパク質
(※2)植物性タンパク質|米類・トウモロコシ・小麦などの植物に含まれるタンパク質

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犬のエネルギー源となる「脂質」

脂質は、タンパク質や糖質と比較すると、1g換算で2倍以上のエネルギーを補うことのできる栄養素です。

特に、運動量が低下傾向にある老犬や肥満気味の犬などの手作りご飯では食事量の調整が必要ですが、発育中の犬や運動量の多い犬などには積極的に与えたい栄養素です。

また、脂肪は手作りご飯の香りが強まり犬の嗜好性が高まりやすいので、愛犬の食欲低下で悩んでいる飼い主さんは量を調整してみるのも良いでしょう。

犬の体にはそれほど必要ない?「炭水化物」

炭水化物は、糖質と食物繊維で構成されている栄養素で、犬の手作りご飯には不必要だと考える方もいます。専門科によっても炭水化物の必要性に関しては意見が分かれますが、個人的には必要度合いは低いものの、やはり犬の手作りご飯には必要であると考えています。

過剰な炭水化物を与えると犬の消化器官に負担をかけたり太りやすくなるだけでなく、生理学的異常や病気の原因になることがあるため避けなければいけません。しかしながら、アミノ酸(タンパク質)から犬の体に必要なグルコースを作り出すためには最低限の量が必要です。

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欠乏症と過剰症に要注意!「ビタミン」

ビタミンは犬の体の代謝過程や生態機能維持のために必要不可欠な栄養素ですが、種類によって欠乏症・過剰症に十分な注意が必要です。

ビタミンの種類は大きく分けて(※3)水溶性ビタミンと(※4)脂溶性ビタミンの2種類で、水溶性ビタミンは手作りご飯で不足しないよう注意が必要。脂溶性ビタミンに関しては過剰に与えないよう注意が必要です。

(※3)水溶性ビタミン|ビタミンB1・B2・B3・B6・B12・C・パントテン酸・ビオチン・葉酸・コリン 特徴:体に蓄積しにくく多く与えても体外に排出されやすいが、その反面欠乏症に要注意
(※4)脂溶性ビタミン|ビタミンA・D・E・K 特徴:体で蓄積されやすいため、多く与えると過剰症になりやすいので要注意

犬に必要な「主要ミネラル」と「微量ミネラル」

ミネラルは40種類ありますが、犬の体に必要不可欠なミネラルは(※5)主要ミネラル7種類と(※6)微量ミネラル11種類です。ミネラルは種類によって体への働きが異なり、体の組織・体液・器官などの構成要素となるものが数多くあるので、バランスよく手作りご飯に取り入れる必要があります。

なお、犬の手作りご飯においてはビタミンとミネラル類のバランスが崩れやすいので、極力トッピングご飯にすることをおすすめします。

(※5)犬に必要不可欠な主要ミネラル|カルシウム・マグネシウム・リン・カリウム・ナトリウム・イオウ・塩素 
(※6)犬に必要不可欠な微量ミネラル|鉄・亜鉛・銅・ヨウ素・セレン・ホウ素・フッ素・クロム・コバルト・モリブデン・マンガン

手作りご飯の基本|量

計算式を活用して目安量を計算する

犬の手作りご飯を作るとき、ご飯の量に迷うことはありませんか?

初めは大抵の方が迷いますが、量に関しては犬によっての個体差が大きいので計算式によって目安量を計算して、愛犬の様子を定期的に見ながら調整していきます。手作りご飯の目安量を計算する場合は、1日にその犬に必要なエネルギー量を計算します。

面倒な手順ではありますが、1度計算してしまえば運動量や年齢を中心に犬に変化がない限りは再度計算する必要がないので、是非計算してみてください。インターネット上に愛犬の情報(年齢や体重、運動量など)を入力して自動計算できるシステムもあるようですので、活用するのも良いでしょう。

犬の手作りご飯の量の計算方法

手作りご飯の目安量を計算する場合は、①犬の安静時のエネルギー量を計算して、②1日に必要なエネルギー量を計算します。

①犬の安静時のエネルギー量を計算
計算式|愛犬の体重 x 体重 x 体重=√√ x 70

10kgの犬(例)|10 x 10 x 10=√√ x 70 =393.63(安静時のエネルギー量= 394)

②1日に必要なエネルギー要求量を計算
計算式|①の結果 x 係数(下記)

10kgの去勢・避妊手術をしている犬(例)|394 x (係数)1.6 = 630.4(1日に必要なエネルギー要求量= 630.4)

< 係数 >
   子犬|年齢4か月前3.0 
   子犬|5~9か月程度2.0 
   成犬|未去勢・未避妊1.8 
   成犬|去勢・避妊済1.6 
   老犬|運動量が低下傾向1.4 
   老犬|成犬時と比較して運動量が変わらない1.6 
   体重が多い犬|肥満気味1.4 
   体重が多い犬|確実な肥満1.0 
   全年齢|運動量が多い4.0 
   全年齢・スポーツドッグなど|運動量が非常に多い5.0~7.0

手作りご飯を与え始めたら、定期的にBCSを確認

手作りご飯に切り替えたら、愛犬の(※7)BCSを定期的に確認することをおすすめします。

(※7)BCS=Body Condition Score|犬の体を見る・触ることで判断する肥満度の基準。通常は5段階評価

私の場合は、愛犬に手作りご飯を与えているときはBCS確認はもちろんですが、動物病院、または往診で体重測定と定期的な血液検査も行っていました。手作りご飯を与える場合は、獣医師に健康状態を確認してもらいながら食事内容を考えることが大切です。

BCSの確認方法

BCS 1(痩せ)|肋骨や背骨、腰骨が見てすぐ確認でき、犬を横から見たときに前肢から後肢に向かって胸部~腹部が極端に上がっている状態。触ったときに肋骨周辺の皮下脂肪が確認できないくらい痩せている。

BCS 2(やや痩せ)|犬を上から見たときに極端に腰のくびれが目立つが、肋骨や背骨、腰骨は見ただけでは極端に出ていない状態。犬を横から見たときに前肢から後ろ肢に向かって胸部~腹部が明らかに上がっている状態で、肋骨が触ってすぐに確認できる。

BCS 3(理想的)|犬を上から見たとき、やや腰のくびれが確認でき、横から見たときに前肢から後ろ肢に向かって胸部~腹部が少し上がっている状態で、触って肋骨がある程度確認できるが皮下脂肪も確認できる。

BCS 4(やや肥満)|犬を上から見たとき、腰のくびれが目立たず、横から見たときに前肢から後ろ肢に向かって胸部~腹部が微妙に上がっている状態で、しっかりと触れば多少は肋骨が確認できる。

BCS 5(肥満)|犬を上から見たとき、腰のくびれが確認できず、横から見たときに前肢から後ろ肢に向かって胸部~腹部がつりあがっていない(平坦、または胸部より腹部が下がっている)状態で、しっかりと触れても肋骨が確認できない。

手作りご飯の基本|配分

犬の手作りご飯の配分目安は、以下を確認してください。なお、手作りご飯の配分に関しては専門家などによって大きく見解が異なります。配分を考えるときに何より大切なことは、犬の年齢や健康状態に合わせて調整したり、便の状態を見ながら調整することです。

見た目の分量で考える場合|
肉(1):野菜(1):炭水化物(0.3~0.5)

肉に関しては、肉の種類別の脂質の含有量に注意が必要。脂質の多すぎる肉を常用せずに鹿肉や馬肉などを取り入れるなど、様々な食材を使用することをおすすめします。

野菜に関しては、インターネット上のレシピを見ていると人参やトマトをたくさん使用しているものを見かけますが、先述の通り脂溶性ビタミン(A・D・E・K)の過剰摂取に注意し、様々な種類の野菜を取り入れましょう。

基本的には動物性タンパク質を主原料とし、様々な野菜をバランスよく摂取できる配分が理想です。野菜は水分量が多いため、見た目の配分では「肉(1):野菜(1)」となっていますが、犬の手作りご飯は、肉(時々魚類)を主体として、野菜は種類を豊富に使用しましょう。

ちなみに私の場合、1日2食で1食の緑黄色野菜が3種類以上、淡色野菜が2種類前後、キノコ類1種類、その他の野菜を配分目安として作っていました。緑黄色野菜は必ず入れるようにして、淡色野菜やキノコ類なども取り入れると良いでしょう。

AAFCO基準と手作りご飯を比較してみよう!

時間がかかり非常に計算が複雑なため毎食分比較する必要はありませんが、しっかりと愛犬の健康について考えて手作りご飯を作りたい飼い主さんは、一度AAFCO基準と自分が作った手作りご飯の栄養素を比較してみると良いでしょう。

私自身も、実は愛犬の手作りご飯は数える程度(配合設計の仕事を除いて)しか分析したことはありませんが、自分では気づきにくいものの、様々な食材を使用しているつもりであっても人によって頻繁に使用する食材や手作りご飯の特徴などがあり、AAFCO基準と比較すると自分の作った手作りご飯の栄養バランスの乱れがよく分かります。

特にビタミン&ミネラル類に関しては、手作りご飯でバランスを整えるのが非常に難しいため、手作りご飯を犬に与える場合はトッピングご飯がおすすめです。

(※8)AAFCO=米国飼料検査官協会|ペットフードの栄養基準・ラベル表示などについての基準を定めているアメリカの団体で、日本国内の「総合栄養食」表記があるドッグフードに関してもこの基準に従っている

比較する方法は、食材のグラム数を測り、文部科学省の食品成分データベースで食材に含まれる成分をエクセルなどに記録します。

(※9)食品成分データベース(文部科学省)|https://fooddb.mext.go.jp/

その数値をAAFCOの栄養基準と比較する(乾物量基準ではなく、エネルギー当たりの表を参考にすると分かりやすい)ことで、自分の作った手作りご飯を分析します。AAFCOの栄養基準に関しては、以下をご確認ください。

犬の手作りご飯の基本を知ろう!


犬の手作りご飯の基礎について簡単にご紹介致しましたが、手作りご飯の基本を勉強した上で作れば、手作りご飯は愛犬の健康維持に役立ちます。

私の場合、愛犬の悪性腫瘍発症を機に手作りご飯を始め、血管肉腫は抗がん剤なしで完治(摘出手術のみ実施)。悪性度が非常に高いといわれている組織球肉腫が1年9ヶ月抗がん剤なしで転移せずに済みました。

愛犬の生命力や運も関わっていたかとは思いますが、組織球肉腫については摘出手術後に抗がん剤治療を行っても半年以内に転移する確率の高い悪性腫瘍ですので、食が良い方向に影響してくれたのでは?と思っています。

その他、手作りご飯に切り替えてから子犬期から悩んでいた頻繁な下痢体質も改善されるなど、「食」がもつ可能性というものは想像以上だと感じております。ただし、栄養バランスが崩れないよう、「基本的なことを勉強したうえで手作りご飯を作る」ということが大前提ですので、愛犬の健康のために最低限の手作りご飯の基本は知っておきましょう。

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記事作成者:  望月 紗貴

犬たちの幸せ(=飼い主の意識の向上)を目的とし、BOWWOW Info.情報配信サイトを開設。犬の管理栄養士、救命士、介護士など、多数資格を保有。様々な企業のドッグフード開発コンサルティングや配合設計などを行う。

©️犬の情報配信サービス BOWWOW Info.